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崩壊

そうして俺は恐る恐る学園長室の扉を開けて・・・。

「えっと。面として話すのは初めてかな。一応、自己紹介をしよう。ご存知の通り、私の名前は扇動せんどう たき。この学園の長だ。一応聞いてやろう。お前さんの名はなんだ?」

「えっと、夢叶大和です」

「大和か。・・・・・・さて、本題に入り、今回、お前さんが呼び出された理由は承知しておるか?」「・・・・・・えぇ。まぁ」

「あの噂は本当なのかね?」

「・・・・・・紛れもない嘘ですよ。恐らく、学園長もご存知の通り、俺は世界でも有名な未覚醒の異能力すら持たない”無能力者”ですよ。・・・・・・そんな奴が、異能力を引き出すなんて・・・・・・馬鹿な話だと思いませんか?」

「私も、お前さんの事は十分知っているつもりだ。だから、この噂はデマなんじゃないか。と、そう疑ったのだが・・・・・・生憎目撃情報もあると、そっちも否定しがたいんじゃ」

「なるほど・・・」

俺も、確実に能力を使っていない。と証明できるような証拠は生憎持ち合わせていないから、弁解のしようがないのだが・・・・・・。でもやはり、平穏な生活を送る為には、どうにかして弁解しておきたいのだ。「とにかく、本人の会見としては、絶対に異能力は使用してない。と、それしか言えないですね」

「まぁ、誰であろうと皆そう言うだろう。一応、今は教師全員で噂の真相を調査している。・・・・・・真実が解明されるまでは、申し訳ないが、停学処分という扱いになってしまう。本当にすまない。私は、お前さんがそんなことをするような奴とは思っていないから、なんとかして無実を証明してやる。・・・・・・それまでは、申し訳ないが自宅待機としてくれ」

「わかりました」

あぁ。俺の平穏な日々が遠さがっていく・・・・・・。自宅待機。か・・・。この世界のせいで家族が失われたというのに、家に一人で何をしろというのだ。はぁ。面倒な日々が続きそうだ。と、俺はまた気分を落ち込ませるのだった。

 そうして異能力を使用したという濡れ衣を着せられたせいで、俺は自宅待機となってしまった。本当に、やることがない。俺は無能力者なので、娯楽になるようなものを何も買えていない。唯一買えたのが、能力に関する本くらいだ。でも、その本は全部読み尽くした。ちなみに、忘れている人もいるかもしれないが、この世界というのは、少なくとも異能力者の方が立場が上になる。例え冤罪でも、立場が下の人間が上の人間に危害を与えたり、または死亡させてしまうと、罪に問われたり、最悪処刑の場合もある。もし俺が、有罪判決を受けたら・・・・・・。そんな事、考えたくもなかった。

「あーもう。とにかく暇だ」

別に、外を出歩くくらいなら大丈夫だよな???俺の、唯一の暇潰しといえば、散歩だ。行き慣れた道を歩くのは、流石に飽きてしまうが、それでもないよりはマシだ。別に、歩くくらいなら、いいよな?とにかく、気分晴らしのために、外を出歩くとしよう。

 やはり散歩はいいものだった。特に、今は朝だ。快晴なこともあり、瞬く間に俺の気分は晴れていった。とにかく今日は、色々な場所を歩き回ろう。と、そう考えていた。そうして、のんびりしながら外を歩いていると・・・。

「おい。少年」

と、見知らぬ声が響き渡るのだった。その声がする方へ視線を飛ばすと・・・。

「お前、そこらじゃ有名な無能力者だろ?」

「俺の事を存じ上げてるんですね」

「あぁ。よく耳にするからな。・・・・・・それで、学校はどうした?」

「・・・」

「無能力者なら・・・・・・あの学園に通っていることだろう。しかし、何故そこへ行っていない?サボったのか?それとも・・・」

そして、その男は全てを見透かしているようにそう言った。

「能力があることが、ばれたか?」

まさに、俺の核心をつく言葉だった。

「いや、そんなはずがないだろ?噂通り、俺は無能力者だ。それに嘘偽りもないだろ?」

「なわけねぇだろ。俺な・・・・・・異能力者にもいない特殊能力を持っているんだよ」

「それがなんだっていうんだよ」

「俺は、誰が異能力を持っているか、見抜くことができる」

「そんなはずがない。だって、だって・・・・・・・俺には・・・・・・!!」

「そうやって、”また”自分に言い聞かせるつもりか?」

初めて会った人物なのに、何故か俺の事を全て見透かされているような気がした。

「素直になれ。少年よ。お前は、異能力を解放させた。・・・・・・違うか?」

「いや、俺は、俺は・・・そんなはずがない!!」

「いい加減に、素直になれって言ってんだよ」

その瞬間、軽い痛みが俺の頬へと伝わる。速すぎて視認することができなかったが、恐らく俺はこの男にビンタを食らった。

「なに、するんだよ・・・急に」

「お前は、そうやって逃げ続けるだけでいいのか?自分を偽り続けて・・・・・・。そんなんじゃ、守りたいものだって守れねぇぞ?」

「何も分からないくせに・・・・・・分かったような口を利くなよ!!」

「・・・」

「なんだよ。急に。話しかけてきたと思ったら、説教か!?俺の事、何も分からないくせに、知ったような口をするな!!」

「・・・・・・そうか」

「なんだよ。まだなにかあるってのか?」

「あぁ。あるさ。嘘をついて、何になる?」

「え?」

「嘘をついて、何か変わるのか?」

「・・・・・・」

「素直になった方がいいと思うぞ。自分でも、分かっているんだろ?」

本当は、見向きもしたくなんて無かった。俺は、この世界を変えたいとは何度も思った。そのために能力者になって、いずれはこんな犠牲を増やさないようにしようって・・・・・・何度だって考えた。ただ、それと同時に、異能力なんか持たないで、平穏に過ごしたいと思っている自分もいた。そうだ。俺の生活を破壊したのは、周りなんかじゃない。紛れもなく『俺なんだ』

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