もしもーー
刹那、俺はその言葉を聞いて、動悸が激しくなる感覚を覚える。昔、異能力の本を読んだときに、目にしたことがある。それは、『魔術展開』について。前例がない、もう一つの幻の異能力。いや、厳密には”異能力ではない”。魔術展開、とは、異能力(魔法)を術つ『魔術』という部類のもの。その魔術展開には、様々な種類がある。異能力の威力を弱めたり、特定の異能力を一時的に無効化したり、そして、それの上位互換。一時的に、対象が所持する全ての異能力を、一時的に無効化する。といった魔術がある。そして、一番やばいのは、『異能力』の核を封印すること。一時的、とかいうものではなく、封印を解く魔法を架けるまで。もし、この男がそのようなやばいタイプの魔術展開を発動するなら、この戦いは確実に勝つことが出来ない。異能力を封じられてしまったら、倒す術がない。しかし、何故だ?魔術展開は、現実世界で使われたことのない異能力のはず。とある本にかかれた、架空の魔術が、世界に広まったはず。だというのに、何故、この男は魔術展開を使用できる?考えられるなかでは二つ、可能性のある根拠がある。それは、バグ。なんかしらのバグによって生まれた、イレギュラーの異能力者。しかし、その考えは、正式な理由を述べようとすると、辻褄が逢わない。だから、一番可能性が低いといっていいだろう。そして、次に高い可能性としては、”実験によって生まれた、異変の存在”。結構前に、説明をしたことがあるだろう。この世界には、異能力を主義とする、世界異能力政府軍。それに対して、異能力主義の世界に反対する、反世界異能力政府軍。もしかしたら、この男は、世界異能力政府軍が行った実験によって生まれた、イレギュラーの存在なのではないだろうか。その可能性は、大いにあり得る。でも、結局は、
「っ・・・」
こいつの戦いかたによる。どんな魔術展開を発動するのだろうか。
「発動」
刹那、体に異変が生じる。そんなことはどうだっていい。異能力の効果が弱まったことを願って、全力で倒しにいかなければ・・・!!そうして、俺は異能力を発動する。・・・した、はずなのだが。
「っ!!発動が、できない!!」
次に最悪な展開に持ち込まれてしまった!!異能力を封じ込められてしまったら、対抗する術を失くしてしまう。鍛え上げた身体能力はあるが、それもそれほど凄いというわけではない。
「っ・・・。どうしたら」
どうしたら、この状況を抜け出せる?異能力を封じられて、どうしたら勝てる?そんな疑問が、脳内を駆け巡る。しかし、考えても、考えても、その答えには辿り着かなかった。ここで、負けてしまうのだろうか?いいところまできた、というのに。そんなところで、負けてしまうのか?・・・・・・。
「いや」
諦めては、いけない。そうだ。俺は何度も窮地から脱出することが、できたんだろう。なら、今回だって、この状況を打開してやろうではないか。今、俺にある選択肢は二つ。降参するか、逃げ続けるか。しかし、そんな選択肢はどうだっていい。なら、俺がやるべきことは、”第三の選択肢を、自ら作り上げる”。なら、早速、行動に移すとしよう。そうして、俺はその言霊を発する。
「ーーもし、バグを引き起こせるのならーー」
やがて、俺は力が漲ったような感覚を覚える。あぁ、これが、強くなった証拠だ。そうして、俺は、体に宿った、それを発動させる。
「うわぁぁ!!!!」
その攻撃は、その男の腹に直撃する。そうして数メートル飛ばされて、壁に激突する。
「っ・・・」
さらに、追い討ちをかけないと!!発動させて、発動させて・・・また、発動させる。
「うがぁっ!!」
再度、その男から涙が溢れ出る。つまり、相当痛い攻撃を受けているんだろう。見ると、段々悲しくなってくるが、そんなのは、今は気にしてられない。勝つためなら、戦闘不能にしないといけない!!
「お、おれだって・・・負けられねぇんだよ!!」
その瞬間、
「!?!?!??!?!?」
途徹もない突風が吹き荒れる。やばい。風が強すぎる!!周りには、しがみつけるものがない!!
「うわぁぁぁぁ!!」
「ってぇ・・・」
なんとか、受け身を取ることはできたが、
「流石に厳しいな」
漲る何かを発動させることはできるが、それ以外の異能力は引き出せない。それに、体力ももうそろそろ限界をあげる頃だ。既に、体は悲鳴を上げている。はやいうちに、終わらせないと。少ない体力で、再度俺は発動させる。ここまできたら、攻撃戦だ。とにかく、相手にダメージを与えないといけない。
「・・・ハァ。ハァ・・・」
相手も、息を切らしている。だったら、この一撃で終わらせよう。余った体力を駆使して、この一撃で・・・。
「終わらせてやるよ」
そうして、俺は再びそれを発動させる。
「強化」
腕に力を込め、拳を固めて・・・そして。
「終わらせてやる。歯食いしばれよ?」
死なない程度に、フルパワーでそれをぶつける!!
「がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
大きく悲鳴を上げたその男は、地面に強く激突しながら、そして・・・。やがて、眠りにつくのであった。
「今度こそ・・・倒せたか?」
もう、体力は残っていなかった。これ以上異能力を発動してしまえば、燃料切れでシャットダウンだ。だから、戦闘不能になったことを祈る。そして、結果は。
「重傷を負ったとして、戦闘不能と見なす。よって、大和の勝利」
やった・・・・・・。
「やった・・・!!勝てた!!」
未知の、Jクラスを、倒すことができた。やった!!と、内心喜んでいるが・・・。
「あっ」
限界を見誤っていたのか。おれの視界は急激に暗闇へと染まり行くのであった。




