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『無能』と言われてきた俺が”隻眼”になってしまった。  作者: 柴田優生


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その瞬間、俺は絶望のどん底へ突き落とされる。そりゃそうだ。放送で発表された相手は、Sクラス。最低辺VS最強。周りの生徒は、一瞬で勝負の予想が一致したと同時に、心配の声も上がる。

「まずいことになった」

勝つ気でいたこの勝負、流石に諦めがついても仕方がない。いや、諦めたらだめなんだろう。けど、相手はSクラス。最弱の俺が、どうやったら勝てるっていうんだ。とにかく、闘技場に向かわなければいけない。そうして、震える足を一歩ずつ進ませながら、闘技場へ向かうのであった。

中へ入り、観客席を見渡す。そこは、満席だった。恐らく、最弱VS最強の試合で、最弱が負ける姿を嘲笑いたいんだろう。まったく、性格の悪い奴らが集う学園だ。だったら、勝ってやるよ。

「無理な希望は抱かない方がいい」

突然、目の前の男がそう告げる。

「なんだよ」

「君もわかっているだろう?この勝負の、結末は。普通に考えたらパッと答えが出せる戦いだ。最弱VS最強。誰に聞いても、それは最強が勝つと口を揃えて答えるだろう」

まるで、確実に自分が勝つような口ぶりをしていた。

「なぁ。諦めてくれよ。俺のためにも、そして、お前のためにも・・・。お前だって、その方が楽だろう?だって、今すぐ降参をすれば、傷つくことなく試合を終わらせることが出来る。そうじゃないか?」

「試合は終わっても、俺は損しかしないんだよ。なんのために、学園に入ったと思っているんだ」

「結局、最弱の願いなんか儚いものでしかないんだ。だったら、最強の願いの方が価値があると思わないか?」

「人の願いに、勝ちの有無はない」

段々と、こいつと会話をしていると苛立ってくる。まさに、この世界に染まりきった人間だ。弱者に人権がないと思っているような、そんな人間だ。

「俺は、お前みたいなやつが大っ嫌いだ」

「なんだよ。突然。負け犬の遠吠えか?」

「お前みたいな人間が、一番嫌いなんだよ。強者こそが正しいと思っているような、そんな実力主義の人間が」

「だってそうだろう?弱者は華がない。弱者は、強者に抗えない。でも、強者は違う。弱者と違って、華がある。弱者よりも上で、強い権力を握っている。だから、なにも持たない弱者は、虐げられたって当然じゃないか。結局のところ、実力がないのが悪いんだから」

そこで、俺の怒りの沸点は頂点に達する。

「もう、いい。お前とは話したくもない」

打つ手だって無い。圧勝できるような力も持っていない。けど、俺はこいつを倒すまで、死に物狂いで戦い続ける。

「そう。だったら・・・やるか?」

「もう、だまれ」

そうして、俺は動き出す。まずは、様子見だ。その拳を固め、やがてその男へと向かわせる。

「はっ。俺がそんな攻撃に直撃するわけがないだろう」

勢いのまま、突進する。その拳は、難なく避けられた。やはり、そんな簡単には攻撃できないか。だったら、どうすれば・・・。

「わかったよ。そこまでやるなら、最弱と最強の実力差を見してあげる」

刹那、その場の空気の重さがガラリと変わる。

「!?!?!?」

あまりの気圧に、俺は押し潰される。

「もう、へばっているじゃねぇか」

必死に抵抗するが、段々と俺の体は押し潰されていく。まずい、息が・・・。できなくなってきた。

「もうこの際、どうだっていい。俺は、この世界の権力を使用する」

刹那、更になにかが俺の体を押し潰す。このままだと、『死んでしまう』つまり、そういうことだ。このトーナメントのルールは、殺しを行わないこと。しかし、この世界の法律としては、強者が弱者を殺害しても、罪には問われない。この男は、ルールを破って、俺を殺しに来た。まずい。なにか、どうにかしないと・・・・・・!!


俺の異能力によって、そいつは目を閉じ、やがて意識を失った。俺は、こいつを殺害した。法律上、強者が弱者を殺しても、罪とはならない。トーナメントのルールでは、殺害はなしだが、権力を使用すれば、退学とはならないだろう。そのうちに、段々と彼の体は暖気を失っていく。脈も薄くなり、やがて。”完全に、死んだ”

「おい。まて。無能は、どうなった!?」

「なにをしたんだ。あの男」

騒ぎ立てる観客に、俺は大きく声をあげて宣言する。

「対戦相手、夢叶大和は、俺の異能力により死亡した!!よって、この戦いは、俺の圧勝!!」

そう俺は、民衆がもっと騒ぎ立てるように、大きく腕を広げ、喜びを表現したが・・・。何故か。その観客席は静まり返ってしまった。

「ど、どうしてだ・・・?」

すると。

「あり得ない」

「殺しをするなんて・・・」

「ルールを破ってまで、そこまでするかよ」

「えっ。えっ・・・?」

観客席から、次に湧いた言葉は、そんなブーイングの嵐だ。たしかに、ルールは破った。けど、それほどに圧倒的な差があることを見せつけたじゃないか。

「お前さんよ」

すると、学園長が姿を表した。

「学園長!!どうなされましたか?」

「お前、このトーナメントのルールは、理解しているのか?」

「もちろん」

「じゃあなんで」

そして、俺は初めて学園長のその表情を目にしたのだった。

「殺しなんか、行った!!」

その怒号が、闘技場全体に響き渡る。

「こいつは、わしが唯一期待をかけていた無能じゃ。そんな無能を、理不尽な理由で殺しよって・・・!!お前さんは、ルール違反と見なして・・・」

そして、絶望が俺を押し寄せる。

「勝ちも負けもなく、退学じゃ」

と。

「そ、そんな・・・。この世界のルールでは、強者が弱者を殺しても、罪にならないでしょう!?だったら、なんで・・・」

「それはあくまで、この世界の法律じゃ。トーナメントでのルールとは別物じゃ」

「そ、そんな・・・」

「そんなことはどうでもいい。さっさとこの場から去れ!!殺人鬼が!!」

そう声を荒げると、その場から、もう一つの声が上がった。

「勝手に、殺すな」

と・・・・・・

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