またもや・・・
それから、日は進み順調にバッジの数を維持したまま最終日を迎えた。未だに、俺の居場所はバレていない。タイムリミットは、9時間。そのまま気配を殺して、やり過ごそうとした。・・・・・・そして、数時間経った時、僅かながら気配を感じた。と言っても、入口付近からだ。ここは、そう簡単にバレるような隠れ家ではない。きっと、そのまま通りすぎるだろう。と、そう考えていたが、その気配は、段々と強くなっていった。同時に、押し潰されるようなオーラが・・・。
「みーつけたっ」
そんな言葉が聞こえる。何故だ。まぐれか?まぐれでこの場所を見つけたなら、納得が出来る。それと、なんだ?このオーラは。只者じゃないような・・・そんなオーラを纏っている。
「どうした。全然動き出さないじゃないか」
どれだけ立ち上がろうとしても、その圧に押し潰されて、体が拘束状態になっている。
「ほら。どうした?頑張って集めたバッジが奪われるぞ?」
「そ、そんなの、わかって」
「はぁ。なら・・・」
そう言った刹那、急に体が軽くなって、やがて立ち上がれるようになった。
「ど、どういうことだ?」
「それすらもわからないか?」
分かるわけがない。だって、初めてだったから。ラズに出会った時ですらも、圧に押し潰されて動けなくなることはなかった。だとしたら、この人物はラズ以上の強敵の可能性がある。
「な、なにをしにきたんだよ」
「いや。この試験は、バッジを回収しないと不合格になるんでしょ?それで、僕はまだバッジを1個しか持っちゃいないんだ。だから、貰いにきたんだよ」
「な、なんで1個しか持っていないんだよ」
「いやぁ。皆強くてね。中々奪うことが出来なかったんだ」
そんなはずがない。流石の俺でも分かる。こいつは、とんでもない強者のはずだ。買い被りすぎなのかもしれない。が、彼からはそれほどのオーラを感じている。
「なぁ。たしか君って、無能って言われてる子だったよね」
「やっぱり、目的は決まってるんじゃないか」
「当たり前だろう。じゃなかったらわざわざ君の元へなんか来てないよ」
「いかにも場所が分かっていたような言い方だけど。俺だって、負けるわけにはいかないんだよ」
「ほう。それはどうして」
「俺には・・・目的があるんだよ」
「いいじゃないか。少しお喋りをしようじゃないか。その目的を聞かせてくれないか?」
「おれは、この世界が嫌いなんだよ。異能力に染まりきった世界が・・・」
「それは、君が無能のせいで虐げられたからか?」
「いや、違う。腐ったこの世界のせいで、俺の大切な人たちはみんな奪われた。そんな世界を、許すことが出来るか?」
「あぁ。確かに出来ないな」
「だから、もう二度と同じ悲しみを繰り返さないよう、この学園で異能力を学ぶんだ。そして、世界を変えたんだ」
そう。あの時、真愛と約束したように____。
「君は、良いやつなんだね」
突然、そいつはそんなことを言ってくる。
「良い子って?」
「確かに、世界を変えたいだろう。二度と、同じ悲しみをしないように。けど、それは、自分のためだけじゃないんでしょ?きっと、君は他の人も同じ悲しみをしないように、世界を変えたいんでしょ?」
恐らく、そうなんだろう。自分だって、よく理解している。このような悲しみを味わっているのは、少なくとも自分以外にもいる。と。いつか、誰もが笑って過ごせる日を願って、そんな願いを抱いているのかもしれない。
「言ってしまえば、俺は偽善者なのかもしれないな。本当は自分さえよければ良いと思っているのに、世界中の人々のために世界を変えようなんて」
「君が偽善者なら、僕だって偽善者になるだろう。まぁ、そんなことはどうでも良いんだよ。立派な目的じゃないか」
「だから、不合格になるわけにはいかないんだよ」
「なるほど。それはたしかな理由だ。けど、僕もなんの目的もなくこの学園に居続けているわけではない。だから・・・」
そう言って。その場の雰囲気が一瞬にして重くなる。
「やりあおうか。無能力者さん」
そう言い放った刹那、目の前から姿を消して・・・・・・!?
「・・・ぐっ!!」
その拳は、俺の腹にめり込んだ。見えなかった。いや、見えるはずもない。姿が、映らなかった。
「な、何が起きて・・・」
「君は、本当に最弱なんだ。正直、最弱なんて思ってもいなかったよ。だって、無能力者が異能力を解放させるなんて、そんな事例なんか無いから」
「みんな、俺を買い被りすぎなんだよ。確かに、事例はないかもしれない。けど、結局は異能力を解放させただけの、無能。そんな異能力を解放させただけで、最強になったりはしねぇよ」
「はははっ。君は面白いことを言うねぇ。確かにそうだね。所詮は異能力を解放させただけ。だね。けど僕は、異能力を解放させた無能力者君に期待をしていたんだよ」
強者は、変わり者が多い。なんで異能力を解放させただけの無能にそんな期待を抱くのか。
「そんなことはどうだっていいんだよ。ねぇ。君の攻撃も見せてよ」
「言っても弱いぞ?」
「そんなの、見ないと分からないじゃん?」
「わかったよ。笑うなよ?」
そうして、俺もこいつと同じように強く地面を蹴って・・・。




