最弱
流石に、俺はあの男が入学試験に不合格する姿は、見たくなかった。本来、この試験には手を貸すつもりはなかった。何故なら、手を貸さずとも、決着はすぐ着くと思っていたから。だというのに・・・
「あの少年は・・・・・・」
流石に負けてしまうと俺の計画が全て狂ってしまうので、今回は仕方なく降霊術を利用して、少年を助けることにした。
刹那、彼の雰囲気が一気に変わる。
「え・・・」
感じたことのない。威圧感。いくら弱い私でもわかってしまう。きっと、今彼に憑依した魂は・・・・・・私じゃ勝てるわけがない。それほどの、強者の予感がしていた。
「少女よ。動かなくていいのか?」
「あ?え、いや・・・」
思わず、腰が抜ける。そりゃそうだ。とんでもない威圧感に襲われているんだから。次第に、倒れ込んでしまう。必死に起き上がろうと抵抗をしても、体はびくともしない。
「一体・・・・・・なんだっていうの・・・・・・!?」
「少なくとも、今のお前が知る必要はない」
ゆっくりと、その男は歩き出して・・・・・・
「烈火」
「歯食いしばれよ・・・・・・?」
防御能力を展開しなきゃ・・・・・・!!この攻撃を真に受けたら、確実に、死んでしまう・・・・・・!!
彼女は、怪我を追わない程度に意識を失った。
「こいつのためにならなかったか・・・」
実際そうだ。今俺がここでこの少年に憑依したところで、この少年の成長には何も繋がらなかった。
「本当ですよ」
「しかし・・・・・・ここでこいつが負けるわけにはいかないんだ」
「何故貴方は、こんな無能力者に希望を懸けているんですか?」
「その理由を、まだお前が知る必要はない」
しかし、俺がこの少年に賭けを寄せた理由は、しっかりとある。・・・・・・まぁ、それはまた後日に明かすとしよう。
「とにかく、事実上はこの少年が勝負に勝った。それでいいか?」
「え、えぇ・・・。でも、貴方が・・・・・・」
「文句あるか?」
「・・・いえ。ありません」
「それじゃあ、入学手続きを」
気がつくと、俺は体育館のど真ん中で、立ち尽くしていた。そして、辺りを見渡すとそこには、俺と戦っていたはずの対戦相手が、地面に倒れていた。つまり・・・・・・勝ったということか?
「おめでとうございます。貴方は決闘の末、彼女に勝利をしました。よって、この学園への入学が正式に認められました」
「・・・・・・え?」
俺が、倒したっていうのか?こいつを・・・?たしかに、確実に倒してないとは断言できない。何故なら、記憶がないから。何者かの声が聞こえたところまでは覚えている。ただそこから・・・記憶が途絶えていた。
「すまんが、いまいち状況が理解できていない」
「まぁそうでしょう。でも、貴方が勝利したことは変わりありません」
「そ、そうですか・・・」
と、突然の状況に理解が追い付いてない中、放送が入る。
「入学おめでとう。夢叶大和君。貴方は晴れて、この学園の生徒となりました。さて、少し話があるので、学園長室までお越しください」
「とのことです。早速行ってらっしゃい。大和様」
「は、はい」
その放送を聞き、俺は学園長室まで足を運ぶのだった。
「失礼します」
「いらっしゃい。大和よ」
「は、はい」
「そんな固くならなくともいい。・・・・・・さて、改めて祝福しよう。おめでとう。夢叶大和」
「ありがとうございます。・・・・・・それで、どういうご用件ですか?」
「そうだ。放送でもいった通り、お前は学園の生徒となる。そして、ご存知だと思うのだが・・・・・・この学園にはクラスが存在するんだ」
「よく知っています」
「過去の功績と試験で得た異能力の評価から・・・・・・お前さんはFクラスとさせてもらう」
まぁ、それが妥当な評価だろう。こんな異能力を覚醒したての生徒がもしFクラス以上のクラスへと配属されたら、生徒は不満を隠せないだろう。なんでこんな最弱がFクラスじゃないんだ。と・・・・・・。
「今日は色々手続きがあるから、一度かえってもらうが、明日からFクラスに登校するように。・・・・・・いいな?」
「わかりました」
「話はそれだけだ。帰ってもらって構わない」
そう言われたので、俺は学園長室を出て、家へと帰るのだった。
そういえば、俺の昔について語っていなかったな。俺の昔を語るとしよう。約15年前、俺は生まれた。俺には、2個下の弟と4個下の妹がいた。長男だった。それは、毎日大変だった。世界が変わる前は、まだ俺が小学生の頃だ。学校に行きながら、弟たちの面倒を見て。幼馴染の真愛に構ってはの生活を繰り返していた。今ほどに比べては悪くない生活だったが、当時の俺は嫌気がさしていた。真愛は好きな人だったし遊んでいるのは楽しかったが、弟たちの世話は面倒で仕方がなかった。・・・・・・というのも、俺の家は母子家庭だ。俺が生まれたときから、父親を目にしたことはなかった。どうやって弟たちを生んだのかは未だ不明だが、とにかく、俺が生きている間で父親は俺の目の前には現れなかった。そのため、母親は夜遅くまで仕事へ向かい、俺は弟たちの世話をする・・・・・・。その生活が、嫌だった。俺だって甘えたいのに、甘えられない。そんな生活。実は、俺も甘えたがりな性格である。時には真愛が助けてくれることもあったが・・・・・・それでも甘えることはできなかった。
「今頃、元気にしているかねぇ・・・」
やはり、恋しい。みんなも、きっと体験してみたらわかる。大好きだった人が、殺された気持ちを。いつまで経っても、忘れられないのだ。
「まだまだ約束は果たせそうにねぇな」
異能力を覚醒させることはできたが、まだ塵のようなものだ。・・・・・・そんな状態で、俺が彼女との約束を果たせるときはいつになるのだろうか。そのときの俺は、まだ知る由もなかった・・・・・・




