初めての学校
8月1日。
ルシダリア国首都ノワール。
首都に入ると車が長蛇の列を作っていた。今日から新学期というので無理もない。
この首都にあるのはセント・ルミニス・アカデミー。
この国1番の名門校であり、数多の界隈で名を馳せている家の子供が通っているからだ。
6歳から18歳の子供が通っているのでこの車の量も納得だ。入学試験も国内最難関と言われておりこの学校に入学すれば将来安泰はほぼ確定と言ってもいいだろう。
私はとある任務の為にこの学校に編入するのだ。
校舎の中に入り車を降りる。保護者変わりのライラックと一緒に案内人に案内されながら校舎の中を進んでいく。
「学園長ライラックです。」
豪華な扉だなと思ったら学園長室だったらしい。ライラックに手招きされ一緒に部屋に入る。
扉の豪華さに比べて中の部屋は案外質素だった。
「アザレア、この方が学園長のアルヴィス先生だよ。今日からは僕と連絡取るのも難しくなるから何か起きたらこの方に相談しなさい。」
学園長のアルヴィス先生は白髪でずいぶん歳を召していたが、すごく優しそうな顔をしている。
アルヴィス、アルヴィス……………。
頭の中に入っているデータを探して遡る。
リアム・アルヴィス(75歳)
家族構成 妻 長男 長女 次女
35歳で学園長に就任 逮捕履歴なし
この人が私の任務の支障になることはないだろう。ライラックがしたう理由がわかる気がした。
「ライラックから聞いて会えるのをとても楽しみにしていました!これからよろしくお願いします!!」
「はい。私のために受け入れを許可していただいたことを感謝します。」
「そんなに畏まらなくても良いんですが……。始業まで時間があるからこの学校について説明しておきましょう。こちらに座って下さい。」
学園長の話によると、この学園では一学年SからDクラスに分けられていて、Sから順に成績がいい順番に並べられているらしい。私が編入するのは落ちこぼれのDクラスだ。Dクラスの生徒を卒業まで導くのが私の任務だ。
「事前に生徒の資料は見たのですがDクラスの方たちがどのような問題を起こしたのかは書かれてませんでした。具体的にどんな問題があったのですか?」
「そうでした!資料を取ってくるので少し待って下さい。」
重たそうな腰を上げ、紙がたくさん敷き詰まった棚から資料を引っ張り出していた。紙の雪崩が起きそうだったがどうやらそんな災害は免れたらしい。
差し出された資料を見てみる。
シラン 誕生日5月17日 11歳
7年前協会に捨てられたため教会で育つ 元Sクラス
授業態度に問題がありD降格
ルドベキア・エーデル 誕生日7月21日 13歳
エーデル財閥の末の娘 元Sクラス
クラスメイトとの喧嘩によりD降格
カトレア・ヘンドラー 誕生日11月24日 12歳
商家の娘 元Aクラス
成績不良によりD降格
ラナンキュラス・クラマー 誕生日1月29日 12歳
商家の次男 言動に問題あり
元Aクラス 暴力行為によりD降格
シオン・ボルジア 誕生日9月9日 12歳
教皇の一人息子 元Sクラス
多数の女子とのトラブルによりD降格
なるほど、見事な問題児である。
多数の女子とのトラブルとか本当に12歳児でありえる問題なのだろうか。大人びすぎてないか?
何か問題を抱えているのか、元Aクラスなのに成績不良によりD降格も気になる。
「なかなかにクセがありますね。」
「そうなんです!!!クセがありすぎるのです!!天下のルミナス生プライドの高さは世界一!喧嘩がないことの方が珍しいです。この前も保護者から苦情が来ました……。こんなに頑張ってるのに!!!」
どうやら学園長も相当苦労してきたらしい。
一限目5分前のチャイムがちょうど鳴る。このクセの強いクラスメイトとご対面する時間がきた。
なかなか難しい任務になるだろうが私にはやり遂げるしか道がない。