シバとアキト
「なんでもワイバーンに乗っているところを襲われたみたいだよ。で、魔法と剣で応戦しながら俺たちがいる浮遊島に逃げ込んできたんだって」
「そこにたまたまクロード達が居たって事か……」
シバはやっと話が見えたという風に軽く何度もうなずいた。
「そう言う事……で、俺が代わりにワイバーンに乗って戦ったんだよ」
「確かにお前は竜騎士のスキル持ちだからな。ワイバーンには乗り慣れているしな。良い選択だ」
とシドは納得したように何度か頷いた。
「でしょう? でも一人ではやっぱりきつかったよ。だからあれは助かったよ」
とクロードは安堵の表情を浮かべた。
「流石にクロードでも一人で炎龍相手は厳しいか……」
シバは笑いながら言った。
クロードは頭を掻きながら
「当たり前だよ。人を何だと思っているんだ。でも本当にいいタイミングで来てくれたよ。でないとあと何時間もあの炎竜と戦っていたかもしれない」
と笑った。
「そうだな……サブキャラはああいうタイミングでやって来るって決まっているんだよ」
と笑いながらシバは言った。
「何それ?」
とクロードは首をかしげながら笑った。
「なんでもない……クロードももう少し修行を積んだら炎龍位、速攻で倒せるようになるさ。それはそうと後で皇女殿下にも挨拶に行かないとな」
「そうだよ。今は食堂でアイリスが相手になってくれていると思う。艇長なんだから後で挨拶くらいはしてよ」
「なんだ? 貴賓室へ案内しなかったのか?」
とシバは意外そうに聞いた。この飛空艇は要人警護も引き受ける事もあるため、それなりの客室も用意されていた。王女様が乗艦されたのであれば、勿論その部屋へ案内されるべきであった。
「うん。案内する前に流れで食堂に行ってしまった」
と言って舌を出した。
「お前達らしいな」
「そういうこと」
とクロードは笑った。
「判った。一段落したら行こう」
とシバが言うと
「じゃあ、俺も食堂で待っているよ」
そういうとクロードは立ち上がった。
「ああ。分かった」
シバは椅子に座ったまま応えた。
クロードはそのままシバの部屋から出て行った。ドアが静かに閉まった。
その後しばらくして、今度は隣の部屋に続くドアがゆっくり開いた。
部屋に入ってきたのは副長のアキトだった。
「俺の勝ちだな」
とシバは勝ち誇ったように言った。
「ち、今回は皇女様だったかぁ」
とアキトは悔しそうに呟いた。
「そう言う事だ。ところで今の話を聞いたか?……」
シバは表情を改めるとアキトに視線だけを向けて聞いた。
「ああ、聞いた」
アキトはそう答えると、さっきまでクロードが座っていた椅子に腰を下ろした。
「どう思う?」
背もたれから身体を起こしてシバが聞いた。
「まさかモルタリア王国の皇女殿下だったとは……お前は分かっていたのか?」
とアキトは何とも言えない表情を浮かべ眉間に軽く皺を寄せた。
「いや、流石にそこまでは分からなかった。単なる偶然だ」
とシバは首を振って否定した。
「そっかぁ……そうだよな」
とアキトもシバの言葉に納得したようだった。
「という事は……。しかし……お約束の展開は間違いないんだが……」
アキトはそう言って黙った。
「……普通ならな」
とシバは表情も変えずにアキトを見た。
「そうなんだよなぁ……」
アキトは何か気になる事でもあるようだった。
「言ってみろよ」
シバは話の続きを促した。
「う~ん」
アキトは考え込んだ。
二人の間に沈黙の時が流れた。




