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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第4章 要人警護

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米の酒

 シルフがカーゴドアを開け


「お荷物をお届けに参りましたぁ!」

と声を張り上げながら飛空艇から飛び降りた。


 その後をトニーとアラスが二人がかりで、梱包された宝箱を芝生の上にゆっくりと降ろした。

そして二人の後に降りて来たアキトの背後に回って控えた。


「荷物の確認をお願いします」

と荷物と一緒に降りて来たアキトが口を開いた。


 衛兵を従えて如何にも貴族然とした初老の男が荷物を一瞥して


「うむ。開けろ」

と衛兵たちに命令を下した。


 衛兵たちは素早く荷物の梱包を解くと、木箱から宝箱を二つ取り出した。

思った以上にそれは大きく、衛兵が二人がかりで一つずつ取り出した。


宝箱を両方開けるとその中に『煌聖竜ヴァルハイト』の『角』と『牙』の龍石と呼ばれるお宝が各々入っていた。


「よろしいですかな? 総監殿」

とアキトに声を掛けられたその初老の男はカクセール伯爵ウィリアム・ハントリ―であった。彼はブリアイル連合王国国王の信頼も厚く、このウェイビー城の総監の地位にもあった。見た目は髭を豊かに蓄えた恰幅の良い偉丈夫であったが、その見た目通りの武功も過去に多く挙げていた。この王国連合の軍事を司る要職の地位にあった。どうやらアキトは彼と面識があるようだ。


「うむ。問題ない。ご苦労であった」

と満足げにカクセール伯は頷いた。


「それではこちらにサインを」

とアキトはバインダーに挟まれた書類を差し出し署名を求めた。


「うむ」

と頷いてカクセール伯はそれを受け取ると慣れたように署名を終えた。そしてそれをアキトに手渡した。


 アキトはそれを一瞥して確認すると


「では、私共はこれにて失礼いたします」

とアキトは(うやうや)しく頭を垂れて後ろに下がった。


「待て、待て。シバはどうした?」

唐突にカクセール伯爵はアキトに問いただすように聞いた。


「乗っておりますが……それが?」


「それなら顔くらい見せないか!」

と伯爵は声を少し荒げて言った。挨拶もなく去ろうとしたシバに憤っているようだった。


「はぁ……という訳だ……シバ」

とアキトが観念したようにカーゴドアに振り返り声を掛けた。


「なんですかぁ? 提督」

と頭を掻きながらシバがカーゴドアから顔を出し地上に降りた。どうやら彼はカーゴドアの後ろに隠れていたようだった。


「シバよ。素通りとは他人行儀極まりないではないか?」

と伯爵は眉間に皺を寄せ、詰め寄るように言った。


「そうですかねぇ……」

と仏頂面でシバは答えた。彼の本音としてはこのまま会わずに帰りたかったようだ。しかしこの様子からシバとこの伯爵とは少なからず因縁がありそうだった。


「それよりも今日は珍しい酒が入ったんだがのぉ……」

と伯爵はシバの耳元で囁くように言った。


「珍しい酒?」

シバが聞き返した。珍しい酒と聞いて興味が少し湧いた。


「そうだ。米の酒だ。知っておるか?」


――米の酒? それってもしかして日本酒じゃぁ?――


と一瞬でシバの心は躍った。この異世界に来て滅多に手に入らないのが米の酒。東方にあるトウイと言う国でしか飲めない酒だった。味はまさに日本酒。シバとアキトがこよなく愛する酒でもあり、滅多に飲めない酒でもあった。


「ど、どこでそんな酒を手に入れたんですか?」

心の動揺を隠しながらシバは聞いた。でも全然隠しきれていなかった。


「それは飲みながら話すとしようか? どうだ?」

と伯爵はさっきまでの表情と打って変わって愉快そうに笑って言った。


「はぁ……判りましたよ。提督。アキトも来い」


「そうだな。米の酒と聞いては『米の酒鑑定士』と呼ばれた俺が行かないわけにはいくまい。残念だがついて行くことにしよう」

という言葉とは裏腹に、既にアキトはこのままついて行くつもりだったようだ。


「誰が『米の酒鑑定士』だ! そんなスキルは聞いた事が無いぞ」

とシバは笑いながらアキトと二人、カクセール伯爵の後をいそいそとついて行った。さっきまでの不機嫌さはどこへ行ったのか? 二人とも今は単なる酒飲みと化していた。

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