突入
そしておもむろに右腕を軽く頭上にかざすと、手のひらに魔法の杖を顕現させた。
その杖を掲げ魔力を溜めると
「ふん!」
と一気に気合を入れて杖を振り下ろした。彼女は基本的には無詠唱で魔法を行使する。
二階から『ドタ』と人が倒れ込むような音が三つ聞こえた。
「よし、行くぞ」
とダミアンが先頭で階段を音を立てないように駆け上がった。
ある扉の前で男が三人倒れていた。
「カタリーナ様の部屋は、ちょうどあの人たちが倒れているところです」
とソフィアが言った。
「そうか」
ダミアンはそう言うと他のメンバーを押しとどめてブラウンと二人で扉の前に立った。
男たちが完全に気を失っている事を確認してから、指先で合図を送って他のメンバーも呼んだ。
全員が揃ってからダミアンは、軽くノックしてからゆっくりと扉を押し開いた。
ブラウンとコーネルが最初に部屋の中へと入って行った。それに続いてソフィアとマリアが続き、周りと廊下に注意をしながら最後にダミアンが部屋の中へと入って行った。
「お迎えに上がりましたわ。カタリーナ様」
と笑顔でソフィアが挨拶をした。
その時、カタリーナは丸テーブルの前の椅子に座って本を読んでいた。
「おや? ソフィア。あなたが迎えに来てくれたの?」
と少し驚いたような表情でカタリーナはソフィアの顔を見つめた。
「はい。父上からお迎えに伺う様に言われましたので」
とソフィアはいたずらっ子のような笑顔を見せた。
「まさかあなたが迎えに来てくれるとは思ってもいなかったわ。ありがとう。心強いわ」
とカタリーナも笑顔を見せた。
「それでは早速ですが時間もありませんので、このままここを後にしますがよろしいですか?」
とダミアンがカタリーナの前に跪いて声を掛けた。
「あなたは?」
「はい。シバの配下の者です」
とダミアンはあえて名前を名乗らずに答えた。もっともこの場合名乗ったところで、カタリーナが覚えているとは思えなかった。
「やはりシバが動いてくれましたか。それはご苦労。もう用意は出来ています。荷物もそこにあるだけです」
とカタリーナは言って扉の片隅に置いてあったスーツケースに目をやった。
「カタリーナ様。この三つでよろしいか?」
と確認したのはコーネルだった。
「それでよろしい。おや? そなたはコーネルか?」
とカタリーナは声を掛けた。
「はい。マリアもここにおります」
と言うとマリアが前に進み出て
「おひさしぶりでございます、陛下」
と膝を曲げ首を垂れた。マリアはソフィアの侍女であるが、出身はソフィアの遠い親戚の伯爵家の娘であった。
「おお、マリア。そなたも来てくれたのか? もう陛下ではありませんよ。それにしてもソフィアそなたの父上の計らいに感謝いたします。よろしく伝えておいてね」
とカタリーナは満面の笑みでソフィアに感謝の気持ちを伝えた。どうやらこの三人とは古くから面識があったようだ。
「はい。判りました」
とソフィアも笑みで返した。
「それではまいりますか」
とその場をまとめるようにダミアンが促した。
全員が無言でうなずいた。
カタリーナは部屋の前で倒れている護衛を見下ろすと
「この者たちは?」
と安否を聞いた。
「大丈夫です。寝ているだけです」
「それは重畳」
とカタリーナは安心したように笑顔を見せた。
「それでは参ります」
とコーネルがカタリーナを促した。




