地下ドック
飛空艇は山中のトンネルを抜けると大きな広間のようなドッグに出た。
そこで飛空艇は向きを変えて、大ドックの一番奥まった場所にある船着き場のようなデッキに、艦首を入口へ向け、左舷を横付けにして着地した。しばらくすると艇内の振動と動力音が静かになった。
「それでは下艦しましょうか?」
とアキトがソフィアに声を掛けた。
「はい」
と少しドキドキしながらソフィアは応えた。
カーゴドアが滑るように開くと、そこには数人の男女が出迎えてくれた。
「おかえりなさい。艇長」
と声を掛けたのはその中でも一番の年長者に見えた女性だった。
「おぅ。ただいま。メリッサ。何か変わった事は無かったか?」
「無いよ。それよりもまた新しいメンバーを連れて帰ってきたようだね」
とメリッサは目ざとく新しく冒険者のパーティに入った三人に気が付いていた。
「ああ、フェリーの娘とその愉快な仲間たちだ」
とシバは笑いながら教えた。
「ほへ? もしかして皇女殿下け?」
とメリッサは間の抜けた声を上げた。
「そうだ」
「この艇のクルーにしたのか?」
とメリッサは怪訝な表情で尋ねた。
「いや、クロードたちと冒険がしたいようだ」
とシバは笑って答えた。
「へぇ……冒険者かぁ……よくあのフェリーが許したな」
とメリッサは意外そうに呟いた。まだ少し信じられないようだった。
「本当にな。娘には逆らえんみたいだ」
「なる程……フェリーらしいわ」
とメリッサは呆れたように納得した。
「よろしくお願いします」
と目ざとくシバとメリッサの会話に気が付いたソフィアと愉快な仲間たち三人は、メリッサに挨拶をした。
「ほい。こちらこそよろしくね。皇女殿下さま」
と言って最後に笑いながら片目を瞑った。
「彼女はこのベース基地の責任者だよ。フェリーとも一緒に旅をした仲間さ」
とシバはソフィアに簡単にメリッサの紹介をした。
「そうなんですね。機会があればその当時の父の話も聞かせてください」
と笑顔でソフィアは応えた。
「うんうん。流石にフェリーとマギーの娘ちゃんだねぇ……素直そうで可愛い」
とメリッサもソフィアを一目見て気に入ったようだった。
丁度その時、整備長のドアーフのドヴァリンがシバに声を掛けた。
「大将、ドラゴン退治やったのか?」
と飛空艇の機体に目をやりながら言った。
「やったよ。よく分かったな」
「そんなものは、見れば分る」
ドワーフの目から見ればほんの僅かな機体の歪みも察知できるようだった。
「この機体はミスリルやオリハルコンで出来ているから大丈夫だろう?」
とシバは軽く返した。
「そういう問題じゃねえんだよ。飛空艇って言うもんはデリケートに出来ているんでぇ。特にこいつはそう言う代物だ。いつもいつも同じ事を言わせんじゃねえ」
とドヴァリンはしゃがれた声で怒鳴った。
「へいへい。親方、よろしくお願いします」
とシバは頭を下げるとそそくさとその場を離れた。毎回この会話が繰り返されているようで、誰も二人の会話を気にも留めていなかった。
シバの背後でドヴァリンがオージーに
「おめぇーが付いていながらどういうことだ!」
と怒鳴る声が聞こえた。
「お前だって一緒に乗っている時は『やれ~!』とか『行け~!』とかノリノリだったじゃねえか!」
とオージーの言い返す声が聞こえたが、どうやらこれもいつものお約束らしかった。




