同行者
「そう言う事だ。それと今回はうちのクルーも同伴させる」
「え? 誰が?」
とクロードは驚いたように顔を上げて聞き返した。
「ダミアンだ」
「え? ダミーですか?」
とクロードは意外そうな声を上げたが、安堵した様な表情も見せていた。
「そうだよ。俺だよ」
と部屋の奥にある応接セットの長いすから身を起こして、甲板長のダミアンが背もたれから顔を覗かせた。
「なんだ。おじさん、そんなところに居たのか?」
とクロードが苦笑いしながら言った。
「おじさん言うな! で、俺がここに居たら悪いか?」
「いや、そんなことはない。大歓迎だ」
とクロードは明るい声で言った。
「ま、そういうことで今回もよろしく頼むよ」
とぼさぼさの頭を掻きながらダミアンは立ち上がった。年の頃は三十を超えたばかりの男だった。この艇ではオージーに次ぐ古株で、飛行艇の操縦から砲撃も含めてこの艇の業務はシバ並みにほとんどこなす事が出来た。なのでアキトに陰で『豆シバ』と呼ばれていたりした。
「ソフィア様はダミアンとは初めてでしたっけ?」
とシバがソフィアに確認すると
「いえ……皆さんとは全てご挨拶はさせてもらっていますので、この前宮廷での宴会でお話しさせていただきました」
「そうでしたか」
「それよりも……あの……」
とソフィアは何かを言いたげにシバを見つめた。
「どうかしましたか?」
意を決したようにソフィアはシバを見つめて
「あの私だけに敬語を使うのを止めて下さい。なんだか私だけ、よそ者のような気がしてなりません」
と訴えた。
「はぁ……」
とシバは腑抜けた返事を返した。
シバはソフィアが転生者と分かってからも、それを知らないクーロード達の前ではそれなりに言葉遣いをわざわざ変えていた。
「シバ艇長は皇帝である私の父上にも敬語など使いませんよね」
ソフィアもシバが態度を変える理由を分かっていたので、敢えてクロード達の前でシバにお願いする形で訴えた。
「そりゃまぁ……あんなや……いや冒険者仲間でしたからね」
とシバは慌てたような口調で言った。
それを聞いて
――いま『あんな奴』と言いかけたな――
とアキトは心の中で笑っていた。
「私はその『あんな奴』の娘です。遠慮は要りません。クロード達と同じようにソフィアと呼び捨てしてください」
とソフィアにはシバが言いかけて飲み込んだ言葉がちゃんと届いていた。
――あ、ばれてた……それにしても律儀な皇女様だな……と言うか周りの状況がちゃんと見えて気が付く子だな――
と少し呆れながらもシバは感心していた。
「判りました。今からうちのメンバーと同じ扱いにします。後で『あんな奴』から不敬罪で処罰されないようにお願いします」
とシバは笑いながら言った。
「それは大丈夫です。クロードもお願いね。ソフィアと呼び捨てにしてね」
とソフィアはクロード達に向き直り言った。
「判ったよ。仲間だもんね」
とクロード達は笑顔で応えた。
――若いって良いなぁ――
とその姿を羨まし気に見て居たコーネルはシバと目が合った。
意味深に笑うシバ。心の中を見透かされているような気がしてコーネルは、慌てて視線を逸らして俯いた。
「今回は力業も必要になるかもしれないのでダミーも参加させる。クロード達もダミアンとは何度か経験あるだろう?」
「うん。勿論。でもダミーが入るって事は、大っぴらに迎えに行けないって事だよね?」
とクロードが尋ねた。




