帰還
その途端
「ソフィア様! ご無事でしたか!!」
と叫びながら侍女がソフィアの前に跪いた。
そして
「本当に申し訳ございませんでした」
と更に頭を下げた。
「マリア。気にしなくていいのです。あの時の炎竜は私にしか対応できませんでした。あれが最善だったのですよ。それよりもあの場にいた者に何の被害もなく終わったようで私も安堵しています」
とソフィアはマリアの手を取って声を掛けた。
そうやって侍女を安心させた後
「それよりも」
と振り返って侍従長に声を掛けた。
「はい。ソフィア様」
「あの炎竜から私を救ってくれたのは、この冒険者のクロード達です。かの者たちのお陰で私は無事にここに帰ってくる事が出来ました」
「左様でございましたか」
そう言うと侍従長は視線をクロードに向け頭を下げた。
「皇女殿下をお救い頂き、誠にありがとうございます」
「いえいえ。たまたまです」
とクロードは少し照れながら侍従長に応えた。
「それじゃあ、皇女殿下様も無事にお届けできましたので行きますか」
とシバがクロードに声を掛けると
「このまま黙って帰るとは冷たすぎはしないか?」
と唐突に声がした。
その場にいた一同がその声の元へ目をやると、そこに皇帝フレデリック三世がお供の者を数人従えて立っていた。
その姿を認めたシバたちクル―は一斉に跪いた。一瞬あっけに取られていたクロード達冒険者もそれに倣って慌てて跪いた。
「シバよ。そんな堅苦しい挨拶は良い。面を上げよ」
と皇帝はうんざりした様な表情を見せて言った。
シバは顔を上げて皇帝の顔を見た。それから周囲に視線を移すと侍従長と目が合った。
侍従長はにこやかに笑った。
「はぁ……やっぱり出て来たか……暇なんか?」
とシドは脱力したように立ち上がり、これから起きる事の全てを悟ったように呟いた。
「この艇が見えたからな……娘が炎竜と消えたと聞いて、その後にこの艇がここにやって来たという事はそういう事なんだろうと想像はつく」
「流石ですな」
と今度はシドがうんざりした様な表情を見せて応えた。
クロードは状況が飲み込めず視線が彷徨っていた。
「まあ、良い。アキトも一緒に来い。久しぶりに色々話もしたい」
と皇帝は飛空艇のカーゴドアの陰に隠れていたアキトにも声を掛けた。
「じゃあ、行きますか……」
とシバは飛空艇から顔を出したアキトに声を掛けると歩き出した。
アキトも下船しシバに続いた。
侍従長はクロード達に
「あなた方もどうぞ」
声を掛け、三人を促した。
シバたち五人が通された部屋は、宮殿の居間であった。
入り口から入って正面の窓際には暖炉があり、天井からはシャンデリアがぶら下がっていた。ここは皇帝が近親者と私的な集まりで使う部屋だった。
クロード達冒険者は初めて見るその豪華な装飾の部屋に、挙動不審な落ち着きのなさをさらけ出していた。
シバとアキトは勝手知ったる他人家のごとくその部屋のリビングで、手近にあった椅子に腰を下ろしてくつろぎだした。
「まあ、突っ立てないで座れよ」
とシバがクロード達に声を掛けた。
「居心地が悪そうだな」
とアキトはからかう様に言った。
「こんなところに来たのは初めてだからね。どうしていいか分からない」
とクロードは素直に応えた。それを聞いて他の二人も何度も頷いた。
ちょうどその時ノックの音と共に先ほどシバたちを出迎えた侍従長が入室し、
「帝が参ります」
と告げると同時に、皇帝フレデリック三世が部屋へと入って来た。




