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虫っ娘。  作者: みる
2/2

「弟」

日本国内某所の某アパート。


ここの一室に暮らす平凡な24歳男性・北田いつきは、先日Periplaneta japonicaの少女・ひめこを仕方なく自室に住まわせることになった。


というのが前回のあらすじ。今回は何が起きるのだろうか。



「北田ぁ」


あまり掃除の行き届いていない床に寝そべって、ひめこは言う。


「何」

「マシュマロが食いてぇ」

「そんなもん家にはない」

「じゃあ買ってきてくだせぇな」

「お前が行けよな……」

「ひめ、種族が種族ゆえヒトの世界は恐ろしいのでおま」

「はいはい買ってきますってば」


北田は面倒そうに立ち上がり、玄関へ向かう。


ちょうどその時、インターホンが鳴った。


「こんな時に誰だよ……はーい」


北田がドアを開けて玄関前を見渡すも、そこには誰もいなかった。


「こんなオンボロアパートにわざわざピンポンダッシュしに来るとか、相当な暇人もいたもんだ……なァッ!?」


突然悲鳴をあげる北田。


それもそのはず、また「ヤツ」が出たのだ。おそらく外から入ってきたのだろう。


こんなところでまた繁殖されては困ると思った北田は、大慌てで殺虫剤を取りに行く。


「北田~? どうかしまし……おっ」


ひめこは他人事のようにしていたが、その後何やら顔見知りでも来たかのような反応をとる。


北田が殺虫剤を持って居間に戻ると、そこに「ヤツ」はおらず。


その代わりなのか、また見知らぬ人がいた。


今回は北田より少し年下くらいの青年だ。ひめことは知り合いのようで、仲良さげに会話をしている。


ひめこの数少なそうな友達との会話を邪魔してはいけないと、なかなか「ヤツ」の居場所を訊ねられない北田。


すると、青年が北田の存在に気付いたようで。


「君が北田いつき君だね」

「は、え? おいひめこ、俺のこと話したのか?」

「話しましたよ」

「どうして友達に俺の存在言いふらしちゃうんだよ!」

「んぇー……」

「……『友達』? 北田いつき君。今、君は僕のことを『友達』と云ったね」

「え、違うんですか?」

「僕を『友達』等と舐め腐ってもらっては困る。僕の名前はサナヲ。ひめこの弟だよ」

「あー、弟……弟!?」


出会って間もないので無理もないが、北田はひめこから彼女にきょうだいがいるとは聞いていない。


ひめこの弟──サナヲは、北田のことをキッと睨んで言った。


「北田いつき君。僕は君に話が有るんだ。あのね──」

「ねー、サナくん」

「サナくん!?」


唐突なひめこのブラコンムーブに、思わず素っ頓狂な声をあげる北田。


「もー、そんなに驚かなくたっていいですよぅ。それでサナくん、どうしてひめのこといつもみたいに『姉や』って呼ばねえんでげすか?」

「姉や!?」


サナヲもサナヲでシスコンの節があるらしく、またもや素っ頓狂な声をあげてしまう。


「北田うるさい。んで、どうして?」

「……知らない人の前では、男らしく在りたいんだ」

「あのねぇ、性別らしーとか、そうゆうの時代錯誤ってゆうんですよ。サナくんはサナくんでいーの」

「……解った。ごめんよ、ひめこ姉や」

「わかればよろしゅう」


姉弟そろって癖が強い、ひめことサナヲ。


そんな二人のペースに置いてけぼりにされる北田なのであった。


そして、結局サナヲが自分に何を話したかったのか、知ることもできなかった。

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