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15.それからの日々

傍から見たら二人は結構バカップルの部類なのでは……?

と思いはじめました(;´∀`)

まあ、婚約者だし他のことに手を抜くわけでもないのでそれでも良いかー。



いつも読んでいただきありがとうございます。

嬉しさに暑さも吹っ飛びます!

 

 カティーニ公爵邸に到着すると、モルディアスやセレスティアもレイモンドたちの帰りを待っていた。


「お帰りなさい、オリー」

「ただいま戻りました」


 レイモンドとの婚約後、幾度となく公爵邸を訪れているオリヴィアはすっかりこの屋敷に馴染んでいる。

 公爵夫妻や使用人たちがお帰りと言って自分を出迎えてくれることに、オリヴィアは喜びを感じていた。

 その後ともに夕食を摂り、ガーデンパーティーであったことや王女殿下から招待状をもらったことを話した。


「――そういうわけで正式な抗議文を送りたいと考えているのですが、父上はどう思われますか?」

「それが良いだろう。その娘たちのせいで互いの関係が悪くなることは、私もそれぞれの侯爵家も望まない。娘たちの言動を把握していないようなら知らせることで貸しにもなるし、万が一知った上で放置しているのなら、こちらにも考えがあるという忠告にもなるだろう」

「それに王女殿下と個人的な繋がりがあるかもしれないオリーを侮辱したんですもの。普通の貴族ならその言動の危うさにすぐさま気づいて謝罪を寄こすはず。テルトン侯爵も、スチュアート侯爵もそこまで愚かじゃないはずよ。女癖は悪いけれどね」


 にっこり笑ってそう言い放ったセレスティアを見て、オリヴィアはなぜか背筋に冷たいものを感じた。


(へ、へえ。侯爵様たち、女癖悪いのね……)


 きっとその方たちと何かあったのだろうと思うが、好奇心を優先して聞いてはいけないことだろうとオリヴィアは思った。

 触らぬ神に祟りなし、きっと今はそういう状況だろう。

 やはり目の前にいるセレスティナや、普段自分をお茶会に招待してくれるご婦人方と比べると、アトリスやソフィアたちは可愛いものだったなとオリヴィアは思うのだった。


 そうしたことがあった数日後、早速コリンズ伯爵家に謝罪の手紙が届いた。

 しかもそれぞれの家の当主直々にである。

 てっきり形だけでもご令嬢からの謝罪の手紙が届くと思っていたオリヴィアは少し頬が引き攣る思いだった。


(まさかご当主様からのお手紙なんて……)


 当主以外にもご令嬢本人からの謝罪文も入っている家もあったが、テルトン侯爵家とスチュアート侯爵家はそれが無かった。

 その代わり当主の手紙には今シーズンではこれ以上社交の場に出さず謹慎させるという旨が書かれていた。

 特別大きな害を受けたわけでもないので少し手厳しい感じもしたが、今シーズンは残すところあと3分の1ほどなので、妥当といえば妥当だろう。


 そう思いはしたが、本人からの謝罪もない上にレイモンドとの縁が無くなった今、当主が謹慎を命じたということはアトリスとソフィアはまだ事の重大さがわかっていないのかもしれない。


(本格的に問題を起こす前に閉じ込めて教育し直そうということね、きっと。お二人とも甘やかされていそうだから大変でしょうね)


 それでも問題を起こして醜聞になるよりは良いだろう。

 二人とも結婚適齢期のご令嬢なのだ。

 公爵家とその婚約者――王族と関わりのある令嬢を侮辱した令嬢として噂が広まれば、いくら侯爵家のご令嬢といっても嫁ぎ先を探すのは難しくなる。

 きっと今ならまだ多くの家から縁談の申し込みが来ているはずだ。

 彼女たちがこの現状をしっかり理解できるかどうかはわからないが、まあ普通は少し考えればわかることなので、懇切丁寧に説明されれば大丈夫だろう。

 それでも理解できないようなら表舞台には出ない方が身のためだ。


 ふうと溜息を一つ吐き読み終えた手紙を仕舞っていると、オリヴィアが座っていた長椅子の後ろから弟のアスランがひょこっと顔を出した。


「姉上、お手紙読み終わりました?」

「ええ」


 オリヴィア宛にそれぞれの家から手紙が届いた際、いったい何ごとかと聞いてきた家族にことのあらましを説明した。

 オリヴィアが王女殿下からの招待状をもらったことに感心し、オリヴィアが受けた侮辱に対して憤慨した。

 特に父親のジョナサンは『我が家からも抗議文を出す。紙を持って来い』と静かな怒りを見せたがそれはオリヴィアが全力で止めた。

 いくら公爵家に嫁ぐ身とはいえ、オリヴィアはまだ伯爵令嬢だ。

 格上の侯爵家に対して文句を言うには弱い出来事だというのがオリヴィアの見解だった。

 渋々抗議文を送ることを諦めたジョナサンだったが、オリヴィアは父親の自分を想うその気持ちが嬉しかったので、あの出来事に関して悲しく思うこともなかった。



「それで?それで?何が書いてあったのですか?きちんと謝っていましたか?」

「アスラン。手紙というものは内容をそう簡単にべらべらと話すものではないわ。まあでもおおむね満足とでも言っておきましょうか」


 オリヴィアはそう言って手紙をまとめた。


「そのお手紙はどうするのですか?」

「もちろんしっかり保管しておくわよ?」

「わざわざ?そんなに気持ちの良いお手紙ではないでしょう?」


 アスランが不思議そうにオリヴィアに尋ねた。

 彼なりに姉を心配しての言葉だということはオリヴィアにもわかった。


「そうね。でも侯爵家の当主様からのお手紙なんてなかなかいただく機会もないし、ましてや謝罪のお手紙だもの。ただの貴族の娘に対して全面的に自分たちが悪かったと言っているのよ?何かの時の良い交渉材料になるかもしれないでしょう?」

「――あ!なるほど。さすが姉上です」

「ちゃんと理解できて偉いわね」


 褒めるように頭を撫でれば、アスランはへへっと嬉しそうに笑った、




 それからは大した嫌がらせを受けることもなく穏やかな日々だった。

 レイモンドのエスコートで夜会に参加したり、セレスティナや継母のエレナとともにお茶会に参加したり、頻繁にカティーニ公爵家に招かれ公爵夫人としての心構えやなすべきことをセレスティナから教わった。

 同世代の社交界のトップが二人揃っていなくなったものだから、これを機にオリヴィアにすり寄ろうとする者や、純粋にレイモンドとの馴れ初めを聞きたがる者など様々ではあったが、オリヴィアは問題なく立ち回った。

 もちろん王女殿下のお茶会にもレイモンドと二人で参加した。

 王女殿下は気高いながらも気安くオリヴィアに話しかけ、レイモンドのせいでオリヴィアを傍に置くことができなかったと大層残念がった。

 そしてもしレイモンドに愛想をつかした時はいつでも待っているとオリヴィアに言った。

 もちろんそれを聞いたレイモンドは冷笑を浮かべ、ともすれば不敬とも取れかねない発言をし、王女殿下とレイモンドは互いに笑顔で言い合いのような言葉の応酬が続いた。


「そのような心配は無用です」

「あらぁ?未来のことは誰にもわからないのではなくて?」

「それは人生経験値が低いからでしょうね。一般的に妻を愛する良い夫であれば愛想をつかされることなどありません」

「まあ、レイモンドったら。貴方愛する婚約者をその他大勢の者たちと同じように考えているの?」

「今はそういう話ではないでしょう。勝てないとわかるとすぐに話をすり替えようとする癖は今も変わらないのですね」


 大人げない。

 言葉使いこそ丁寧だがまるで子供のケンカを見ているようだ。

 オリヴィアが止める術もなくおろおろしていると、側妃はくすくすと笑いながら「ずいぶんと幼い頃に戻ったようねぇ。懐かしいわ」とのんびりとした口調で言った。

 その言葉に落ち着きを取り戻したオリヴィアは改めてレイモンドに目を向けた。


(レイ様のまた新しい一面を拝見できたわ。いつも落ち着いているのにこうしてみると新鮮ね。なんだか可愛らしい。でもさすがにこのままでは駄目ね)


 オリヴィアは隣に座るレイモンドの服の裾をついと引っ張ると「レイモンド様」と声を掛けた。


「大丈夫です。レイモンド様が私に出て行けと言わない限りずっとお傍にいますわ」

「言うわけないだろう、そんなこと。それにレイと」


 王族の前だからと愛称で呼ばなかったことにしっかりと訂正が入る。

 そしてあっさりと王女殿下との会話を切り上げてオリヴィアを優しく見つめた。


「……呆れた。貴方本当にレイモンド?」

「何を。私が本物のレイモンド・カティーニでなければ、ここの警備態勢は緩すぎるということになる」

「オリヴィア、こんな面倒くさい男で良いの?オリヴィアならもっと良い相手も探せると思うのだけれど」

「王女殿下、それ以上言ったらいくら私でも怒りますよ」


 また先ほどと同じような言い合いが始まりそうになり、オリヴィアはつい笑ってしまった。


「ふふっ、王女殿下。私にとってレイ様以上の方はいません。面倒だと感じたこともございませんが、もしそうだったとしてもそれも含めてレイ様ですのでこの気持ちは変わりませんわ。それに私も結構面倒な性格ですので」

「リヴィは面倒などではない」

「……うわぁ、案外似た者同士なのかしら……」


 そう呟いた王女殿下に側妃は「あらあら、言葉遣いが乱れていてよ?」とまたのんびりとした口調で注意した。


 ちなみに、この時の茶会はデルタ語でと言っていたはずがほとんど使用せず終わった。

 その代わり、その後もたびたび招かれてはデルタ語で話したり、歌を歌ったりすることになり、今ではレイモンド抜きでオリヴィアだけが招待されることも多い。

 その度にレイモンドはぶつぶつと文句を言ってはいるが、本気でないことはオリヴィアもわかっているので、一緒にいたいと思ってもらえて嬉しいと感じるだけだ。


 そうした有意義な日々を過ごし、忙しい中でも結婚式の準備も着々と進み、待ち望んだその日が近づいて来ていたのだった。


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