黒い鳥
鴉を見て思いついた短編小説です。1003文字とかなり少ないですが、気軽に読んで下さい。
『昔、暴虐な王がいた。その王は来る日も来る日も領民を虐げては殺したりするなど残虐非道な生活を送っていた。領民達は悲しくも生きた。そんな領民を哀れに思ったのか一匹の黒い鳥、鴉が現われて暴虐な王を羽根で殺した。以来、領民が虐げられる時に必ず鴉が現われて助けてくれると・・・・・・・・・』
そんな昔話があった。
しかし、今では忘れ去られている。
ヨーロッパのとある街。
寂びれたバーで一人の客が酒を煽っていた。
全身を真っ黒の衣装に身を包み髪も黒かった。
まるで鴉の羽根のような艶やかだ。
年齢は25歳くらいで手の色が病気的なまでに白くこの世の者とは思えない妖艶さを放っている。
性別は女。
髪と同じく黒の瞳を持った女性は一人で酒を煽る。
煽っている酒はブラッディ・マリー。
血まみれマリーと仇名された16世紀、イングランド王妃メアリー・チューダが元とされている。
色は真っ赤な血を思わせる赤い色だ。
女性はブラッディ・メアリーを飲み終えると金を払い出て行った。
夜の街へと出た女性の左肩に一匹の鴉が止まった。
「カー、カー」
鴉は何やら女性の耳元で鳴いた。
「・・・・・そう。奴らはホテルで女を抱いているの」
女性は鴉に聞く。
鴉は頷いた。
「・・・今夜は良い月ね」
夜空には丸い満月が出ていた。
『月が出る時、夜空を飛び闇の世界から鴉が現われ黒い羽を刃に変えて悪を撃ち滅ぼす』
その夜、夜空を黒い物体が飛んだ。
飛行機でもヘリコプターでもなく翼を羽ばたかせて飛んでいる。
その姿を一人の老婆が見た。
「・・・・やっぱり言い伝えは本当だった」
老婆は皺で隠れた瞳から一粒の涙を流した。
その日、地元マフィアのボスと幹部が惨殺されるという事件が起きた。
全員が爪のような鋭い物でズタズタに切り裂かれて殺されていて現場には鴉の羽根が何枚も落ちていた。
それと同時に一人の名も無き老婆が死んだ。
老婆の家族は地元マフィアによって殺されていた。
新聞では伝説の鴉が老婆の願いを聞き入れてマフィア達を呪い殺したと大題的に載せられた。
惨殺事件から一月が経った満月が昇る夜。
再び惨殺事件が起きた。
今度の相手は警察署長で前々から賄賂などを受け取って無実の人を貶めるなどの暴虐をしていた事で有名だった。
やはり一月前と同じく死体は爪のような物で惨殺されて鴉の羽根が落ちていた。
昔話の鴉が現代に蘇えったと言っているが本当に伝説の鴉なのか、または伝説を真似て犯罪を犯す変質者なのかは誰も知らない。
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