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ハロウィン
むかしむかし。
とある村に、人を脅かすのがたいそう好きな男がおりました。
物陰から急に飛び出て奇声をあげるのは当たり前。
村にはいつからか、男に膝カックンをされたことがない者がいなくなりました。
そういった心労が祟ったのでありましょうか。
ある日男が目覚めると、母親が横で冷たくなっておりました。
男は目に見えて落ち込みました。
村人は思いました。これで男も落ち着くだろう、と。
ですが村人の期待は、早々に裏切られたのです。
男は葬儀の翌日には白いシーツを頭から被り、オールドタイプのゴースト気取り。
家々を廻っては母親の声真似をし、香典をねだって歩きました。
その喪中とは名ばかりのトリック・オア・トリートに、村人はほとほと困り果てました。
神様は怒りました。
「お前のおかんなら俺の隣で寝てるよ」
神様の怒りは親不孝な白面の男に降り注ぎ、男は粘着性のある白い物体になってしまいました。
悲しんだ村人が泣きながらそれを杖で打ったのが、餅つきの始まりとされています。