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「綾兄ー朝だよー」
いつも通りの時間にいつも通りの声が聞こてくる。我が愛しのマイシスターの可愛らしい声。高めだが、耳に優しい柔らかい声。この声を聞かないと朝起きたという気がしないって訳ですよ
うーん。きもい
我ながらキモすぎる脳内に一区切り付け、朝の身支度を始める。パジャマ代わりのほぼ肌着のTシャツと中学生時代のジャージを雑に脱ぎ捨てベッドの上に放り投げた後、シワ1つなく綺麗にハンガーに掛けてある制服を手に取り、ズボンとカッターシャツに袖を通しただけで着替えたと言えるか怪しい格好だが、一先ずリビングへと降りる
「おはよう。沙優」
リビングに着くとそこには既に身支度を済ませ、朝食のパンにイチゴジャムを塗りたくっている妹の姿があった
彼女の名前は渕崎沙優。黒く透き通った髪を頭頂に近い部分で左右に少しだけ括った、所謂ツーサイドアップと言われる髪型は、年相応の見た目だが、燃えるように赤い瞳とツンと上がった目尻は、中身の勝気な部分を表しているように見える
俺が来た事に気付いた沙優は「ん。」と会釈をしながら塗り終わったイチゴジャムをこちらに渡してきたあと、リビングのテレビを付けつつその小さな口をめいいっぱい開けイチゴまみれの食パンにかぶりつく