第二話 バカ天使
神殿に声俺の声がこだましていた。俺が生きてきた中で最も大きい声を出した気がする...
あ、俺死んでいたはそういえば。と、ろくでもないことを考えていると、
神からの伝言なのか手紙のようなものがひらりとシスティーの前に落ちてきた。
それを拾うと、システィーは手紙を見て、そしてまるで女神のような微笑をたたえ
「実さんの希望しっかりと受け取りました。それでは今から実さんが行く転生場所について
説明します。まず男らしくなりたいということで、強いモンスターのいる森に
ナイフを持った状態で転生されます。特に特殊な能力のあるナイフではなく最初に入手できるナイフです。
ここで強力なモンスターと戦って強靭な肉体を作ってください。
そこからは実さんの判断で生きてもらいます。」
いや強靭な肉体を作ってあとは任せるのかよ。勇者として魔王を倒す使命に
従ってもらいますとかそういうのはないのかよ。
「あと特に実さんが期待しているようなチートスキルはないですよ。そんなものがあったら
私がほしいくらいです。転生先が魔王軍と戦っている剣と魔法の世界であるとか
そういう情報は一切与えることができません。転生先がどんな世界かは自分で確かめてください。
理由は神様がおっしゃるには、
どんな世界かわからない方がドキドキしておもしろいでしょ、だそうです。」
「どんな世界かわからない方が面白いというが、降りた先にナイフで強力なモンスターと
戦うという恐ろしいことは分かったけどな。」
そんな不安を抱えて異世界転生をすることになった俺が質問をしようと、
「おい、システィー質問があるけど...」
「以上で説明は終わりです。はー疲れた。とりあえず転生しますね。
私の仕事は、転生の説明と転生することで、質問に答えることは仕事外なので
実さんには早く転生してもらい、私の休憩時間に貢献してもらいましょう。」
とそんなおかしなことを言い終えると同時に俺の体が光のベールに包まれた。
「おい、ちょっと待て、このバカ天使!質問を受け付けないとかおかしいだろう!
俺は恐ろしいことが待っているという不安だけでなく、自分が聞きたいことの
回答を得られないまま転生するのか!?」
俺が怒りをあらわにしてシスティーに言うと、
「またそんなに怒っちゃって、だから美少女が怒っても怖いというより可愛いですよ実ちゃん。
仕方ないですねー、この高貴な天使システィー様だから特別に
転生されるまでなら質問に答えますよ、暖かい飲み物を飲みながら。」
そういいながら天使と書かれたコップに入っている暖かい飲み物を飲みながら言ってきた。
なんだこいつ、本気でうざいぞ。
「お前は人の癇に障ることを的確に狙うのがうまいなバカ天使!
あと俺は男だって何回言えば理解するんだバカ天使!
まあいい、転生まで時間はなさそうだし一つだけ質問してもいいか?」
目の前で椅子に座って暖かいのみものをすすりお菓子を食べているシスティーに尋ねた。
また会う時があったら、痛い目に合わせてやるこのバカ天使...
「どうぞー。あとそんなにバカバカ言われると
本当にバカになりそうなのでやめてくれませんか実ちゃん。」
「お前のバカに構っていると話が進まんから質問するぞ、ちゃんと俺は男として
男の顔つき体付きで転生されるよな?」
男の容姿で転生されることは俺にとって最も重要だった。
「何言っているのですか実ちゃん?そのままの容姿で転生に決まっていますよ。」
は?おいこのバカ天使は何言っているの?
「それはマジですか?バカ天使さん?」「マジマジですよ、実ちゃん。」
俺はそれを聞いた途端抑えていた怒りを爆発させて言った、
「おい!今すぐ転生をやめろ!!俺は男の容姿で男として転生するんだよ、このバカ天使!!」
「えー、だって実ちゃん男の容姿になりたいなんて一言も言ってないですよね?」
う、痛いとこを突かれた。でも真の男になりたいって言ったら普通男らしい見た目にしないか?
と後悔を覚えながらも俺は言った、
「まあいい、とりあえず一回転生を止めてくれ。俺の希望を変えて普通に生きていくことにするよ。」
「え?無理ですよ、一回転生先決まって転生しようとしたら止められません。
あ、そろそろ転生されますよ。準備はいいですか?」
いやよくないよ?何言ってるのこいつ?
すると俺の足が光の粒となって消え始めた。
「それを最初から言えよ、バカ天使!お前自分の休憩時間のためにそんな重要なことも言わず
勝手に転生させようとしたのか!転生を取り消せ!」
俺は華麗なチョップをシスティーの頭に決めた。
「いた!何するのですか実ちゃん!この高貴な天使に手を出すなんて天罰が食らいますよ。
それに決まったことは決まったことですから諦めて下さい。
人間諦めが肝心っていうじゃないですか。」
俺の首から下までが光の粒となって消えていた。
「おいおいマジかよこれ。俺はこの容姿で転生したくないぞ!」
「諦めてください実ちゃん。最後にですが私は実ちゃんのサポート役なので転生先のどこかに
別の姿でいます。もし困ったら私を見つけて泣きついてください。
また会えることを楽しみにしていますよ。」
「こっちは二度と会いたくないはバカ天使!」
そう言い残して俺の体は完全に光の中へと消えていった。