第一章 モンスターとともに 第十話 なわばりの長
クマの獣人族が吹き飛ばされたことに赤い体の蜥蜴人と筋肉量が尋常なドワーフ族は
唖然としていた。
「そんな、リーダーが一瞬でやられるなんで。お前は化け物か!?」
ドワーフ族が驚きと恐怖なのか後ずさりしながら言った。
「すごい...ミノルってこんなに強かったんだ。」
「かっこいいミノル!あんな強そうな敵を一瞬で倒すなんて!」
リンはまるで化け物を見るよな目で俺を見て驚き、レイシアは今までにないくらい
はしゃぎながら飛び跳ねていた。
「思ったよりも大したことなかったな。もっと強いやつかと思ったが。」
俺は獣人を殴った腕をさすりながら言った。
「さて後二人だな、お前達は戦うのか?」
俺はおびえているドワーフ族と蜥蜴族に迫るように言った。
三対二なら俺達のほうが有利だな、俺がそんなことを考えていると。
「すいませんでした!命だけは助けてください!」
ドワーフ族と蜥蜴族は地面に頭がつくほど下げながら俺たちに言ってきた。
「どうする?」
俺はこいつらの処分をどうするかリンたち二人に尋ねた。
「まあ、無理に殺さなくてもいいと思うよ。多分こいつらまだダークゾーンに来たばっかりだし。」
「僕も賛成!」
リンとレイシアはこの二人を 生かすことに賛成のようだ。
まあ二人が言うんだし、俺も正直殺したくはないからな。
「わかった別に殺しはしないからあっちにいる獣人を早く手当てしなよ。」
俺が二人のことを許すというとすぐに二人は獣人のもとに行った。
「あ、そういえばお前らここに来たばっかなのか?」
俺は疑問に思って獣人に手当てを施している二人に聞いた。
「はいそうです。ここら辺は一番なわばりの長の中で弱い獣人アビダルの領域ですから、
俺らでも戦えると思いまして少し前に来ました。」
「なわばりの長ってなんだ?」
「なわばりの長は周囲一帯を自分のテリトリーにしているリーダーのですよ。
リーダーですから俺たちのような弱いやつらが到底手出しできません。」
初めて聞いたぞそんなこと。どうやらここはアビダルという獣人族のテリトリーのようだ。
質問し終えると同時手当てが終わったのか、三人は見逃してくださりありがとうございますと、
お礼を言い獣人族に肩を貸して森の中へ消えていった。
「あっけなかったな、はじめての戦いなのに。」
「本当だよ。私が最初に攻撃しておけばよかったなー。」
リンが耳を垂らしながらうなだれていた。
「まあ勝ったんだからいいじゃないか。次はリンに任せて俺は援護に回るよ。
そういえばリンはアビダルっていう獣人族は知ってるのか?」
リンのうなだれていた耳がアビダルという言葉に反応してぴんと立った。
「うーん。正直言いたくなかったんだけど一回挑んで負けたんだよね。」
「実は僕もその時一緒に戦ったんだ。」
どうやら二人はアビダルと戦ったことがあるようだ。
「そういうことは言ってくれよ!リンとレイシア二人で負けるっていうことは結構な
手練れなんだろうな。」
「正直全然歯が立たなかったよ。あいつのパンチを防ごうと思って刀で受けたけど
大きく後ろに飛ばされたよ。さっきのクマの獣人のように。」
「あの時は危なかったよね。僕が影移動を使って何とか逃げれたけど。」
そんなになわばりの長は強いのか。
俺はどうやってそんな奴と渡り合うのか考えていると、
「でも今の私やレイシアはアビダルと戦った時と比べてだいぶ強くなったからね。
前のように簡単にはやられないよ。それにミノルもいるから。」
自信満々に尻尾を揺らしながらリンが言った。
どうやら俺たちがまず目指すべき敵は獣人族アビダルのようだ。
俺たち三人は新たな敵を求めて森を進むことにした。