第一章 モンスターとともに 第九話 初めての戦い
俺たち三人は武器屋を出た後、村の周囲の戦いが禁止されている
エリアから出るために進んでいた。
戦いが禁止されたエリアから出るとそこからは命をかけた戦いとなる。
正直俺はいつ死んでもおかしくない場所へ向かうことから緊張していた。
「楽しみだねリン!僕たちがダークゾーン最強になって、僕の恩人をかっこよく救えるようになるんだよ!」
「そうだなレイシア。私も、もっと強くなることが楽しみだよ!」
なんでこの二人はこんなに自信があるんだろう。
レイシアに至っては目をキラキラさせて楽しそうにしてるし。
俺が二人のことを不思議に思っていると、
「みんな止まって!誰かこの先にいるよ。」
「何?もしかして初めての敵?」
リンが獣人族の特徴である耳をぴくぴくしながら警戒を促していたが、
レイシアは楽しそうにリンが言った方を見ていた。
「レイシア緊張感なさすぎだろ!もしかしたら俺達よりも格上の敵かもしれないんだぞ!」
「だってだって初めての戦いだよ!楽しみに決まってるじゃん!」
俺とレイシアが言い合っていると、我慢ができなくなったのかリンが眉間にしわを寄せながら、
「ちょっと二人とも黙ろうよ!敵がいるんだって!」
俺とレイシアよりもはるかに大きい声でリンが叫んだ。
リンの声はまだ遠くにいた敵に聞こえるほどの大きな声だった。
そしてその声に反応したのか遠くから三人の影が見えてきた。
「誰だ!ダークゾーンで叫んでいる命知らずは!」
巨大な体をしたクマのような獣人族の男が俺たちに向けて言った。
「いやー、こんなバカにも会えるんですねダークエリアは。」
体全身がうろこでおおわれまるで爬虫類のように細い目をした蜥蜴人が笑っていた。
「こんな奴らと戦っても無駄だろう。」
体は小さいが誰が見てもわかるほどの尋常ではない筋肉を持ったドワーフ族がため息をついていた。
「おいリン、お前が大きな声を出すからこいつらに気づかれただろう!」
「そうだよリン!しかも戦う前にバカにされてるよ!」
「なんで!確かに気づかれたのは私のせいかもしれないけどうるさかったのはそっちだよ!」
リンに俺とレイシアが責任を押し付けあう喧嘩をしていると、
クマの獣人族が腕をボキボキ鳴らすと同時に、
俺たち三人の目の前まで来て回し蹴りをしてきた。その威力はすさまじい風圧で
避けることに成功していたはずの俺たちは後方へ飛ばされた。
「お前らここがどこか知ってて入ったんだよな?ここはな最強になりたい猛者だけが来る場所なんだよ。
お前らみたいに女子同士楽しい会話をするために来てるんじゃねえよ!」
その時俺の中でスイッチが入った。奴は言ってはいけないことを言ってしまったようだ。
あ、これはやばい。リンとレイシアは俺の雰囲気を感じ取ったのか少し後ずさりしていた。
俺はショートカットに登録してある身体強化レベル1を使った。
俺はスキルを使うと同時に足に力を入れ風のごとくその場から姿を消した。
は?戸惑っているクマの獣人は何が起きているのかわからない様子だ。
するとクマの獣人族の真後ろに音もなく人影が現れた。
クマの獣人は自分の背後の気配に全く気づくことができなかった。
そのまま俺は力を貯めるように手を振りかぶり、
やっと俺の気配に気づいたのか振り返ろうとしているクマの獣人の腹に向けて、
「俺は男だー!!」
そう叫びながら渾身のストレートを食らわせた。
俺の最大威力のパンチを食らったクマの獣人はそのまま後方数メートル飛ばされ、
木々をいくつか折りながら飛ばされていった。
残った場所には銀色の長い髪をして、女子のように整った顔をした少年が、
普段は黒色の目をしていたはずが赤色の目をしてまるで獲物を借るオオカミのような形相で、
目の前のえぐられた土と折れている木々を見ていた。