別れ
シエナ討伐作戦……。
「了解です、私にも手伝わせてください。」
「おい、意味分かって言ってるんだろうな?」
間を開けずに即答した事で、額に冷や汗を浮かべながらライは聞いてくる。
意味が分かっているかって?
「分かっているに決まっているでしょう。殺すのよね?」
顔色一つ変えずに言ったけれど、私の心はざわついていた。
それでも、例え昔の親友だとしても、外側が同じだとしても、中身は全く違うのだ。
「もう、柚は死んだ。マリナも死んだ。私達の敵は、マリナの皮を被った悪魔よ。殺人鬼の私なら、確実に息を止められる……いいえ、刺し違いになっても止める。」
「駄目だ。」
「何故? ライ、あんたはコントラスト王国王位継承権第一位でしょう。シエナを殺さなければならないって分かっているでしょう。でも、ライには自分の片割れを殺せるの? 陛下は我が子だったシエナを殺せるの? お父様、お母様にも無理でしょう。ソレアにもサリーさんにも無理でしょう……?」
こうやって話している間にも、敵はこの場所に迫ってきている。
シエナを殺す前に、避難が終わるまでのしんがりも必要だろう。
「戦える人はここに残って、兵隊を迎え撃つ。戦えないのなら避難を急ごう。私は残るわ。」
「女の子を残すなんて無理だ。」
「ライ!!」
こいつは、なんでこう面倒なんだ?
しかも、昔とは違った面倒さだ。
「そんな傷を負って、今まで……幸福とは言い難い人生を送ってきたお前に、どうしてまだ傷を負わせることが出来る!? 双子として、俺があいつを止める。俺が……殺すからっ!!」
涙と鼻水で顔がぐしょぐしょになった王子様。
きっと、まだマリナを愛しているはずなのに、私を気遣ってくれる王子様。
大勢の足音が近づいてきているのに、足を震わせながらも逃げないなんて……成長するものだね。
「分かったわ、ライ。ただし、私と一緒に戦うの。あんただけを置いていくだなんて、心配過ぎて胃が痛くなるわ。」
「ズノー……。」
「あっ、あたしも残るからね!!」
ソレアはハンカチをライに差し出しつつ、震えた拳を握り締めた。
私はその拳を両手で包み。
「了解。」
すると、ソレアの目が点になる。
「……いや、もっとこうなんかないの?」
「なんかって?」
「ほら……ライ様みたいに、なんか色々よ。」
「特にないわ。だって、ソレアの事は頼りにしてるから。華奢な体だけど、強いんでしょう?」
「弱くはないわね……って、こんな話をしている場合ではありませんので、陛下達は早くお逃げください。」
ソレアが始めた話だけど、ここで言うと時間をとるので置いておこう。
そして、王はこう言うと思う。
「「私も戦う。」」
王の声と私の声はハモり、予想が的中した。
「……っていうのは駄目です。今の国民には王が必要、死んでもらっては困るの。残りの国民がどうなったかも聞かなければならないし、私の為にも息子の為にも死なないで頂戴。事が済んだら迎えに行くから……どうせ、逃げた先にも隠れ家があるんだろうし。」
「スノー……。」
お母様は涙をこらえながら、目の前に来て。
「……無事に、帰ってきてくださいね。」
……私を抱きしめた。
てっきり反対されると思ったから、それが逆に怖く感じる。
ああ、これは死亡フラグだね。
「大丈夫、帰るから。」
「スノー、約束だぞ。」
「ええ、お父様。しっかりとした話し合いがまだですから、絶対に帰ってきます。」
私が両親との別れを済ませた時には、ライもソレアも家族との会話を済ませていた。
「また、会おう。」
「ええ、また会いましょう。」
この会話を合図に、私とライとソレアは地下道へ走り出し、王と両親とサリー婆は脱出口へ全速力で走り出す。
「二人とも、走りながら作戦を考えるよ!!」
「うんっ!」
「おうっ!」
……きっと母さんは気づいていた。
私が『無事に』帰ると約束していない事に。
「……で、どう?」
「「賛成!!」」
私の考えた作戦は、盤上一致で実行決定。
地下道の土の道は意外と走りやすく、進む度に聞こえる足音は大きくなっていった。




