ターンチェンジ、スノー
「約束っていうのは……シエナと交わしたモノなの。」
「今の娘と……か?」
「いいえ、一つ前のシエナとの約束……『天寿を全うする』って。」
私は記憶をたどりながら話す。
「『天寿を全う』って、シエナと約束したんなら、随分と渋い約束だな。幼い子供同士で、普通する約束じゃないぜ。」
ライの言う通り『幼い子供同士』でする約束ではないだろう。
「でもね、私もシエナも中身は……幼い子供じゃなかったんだよ。」
「……あたし、全然意味分かんないんだけど。」
そりゃあ、ここまでの話で分かったら私が驚くよ。
ここからは、緊張度がグッと増す。
「あのさ、この中に『転生』って分かる人……いる?」
……この質問に反応したのは二人。
王とサリーさんだ。
「私が持つ歴史書に、極稀に前世の記憶を持つ者がいると書いてある……今回娘に起きた事だろう?サリー婆も読んだ事がなかったか?」
「ああ、遠い昔に読んだ記憶がある。先祖に転生をした者……転生者が存在したと、ワシの祖母に聞いた事もあった。シエナ様以外で転生者に会った事は、100年生きてきて一度もないが。」
「……私とシエナはね、その『転生者』なの。転生前の世界で、親友だったんだ。」
「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」」」」」」
「……驚くのはそれぐらいにして。」
少しみんなが落ち着くまで待つと、最初に質問してきたのは王だ。
「つまり、スノーの前世と今のシエナの前前世は、同じ時代で親友だった……と?」
半信半疑どころか、壱信九疑って顔をしている。
「シエナの方は当たってるけど、私がシエナの前前世と親友だったのは、前世じゃなくて前前前世です。」
「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」」」」」
「……もう驚くのやめない?つまりは、私とシエナは最初の人生で親友だったの。」
「スノー、転生というのは、生まれた時からの記憶があるのですか?」
「最初の人生は流石に無いけど、お母様から生まれたのは覚えてるよ。小さい頃から頭が良かったのは、今回が四度目の人生だから。最初と三番目の人生だと、この世界よりも科学が発達してたしね。」
今度は驚かないでもらえた。
その代わりに、唖然としているけれど。
「……どうして、今まで話してくれなかったんだ? 父として力になれる事は、無かったのか……?」
お父様が答えにくい質問をしてくる。
だけど、話すと決めたのは私だ。
「お父様にもお母様にも、育ててくれた事にとても感謝している。だけど、私が転生者だって話せば、厄介事に巻き込まれる気がして……話せなかった。シエナと約束してからは、約束を守るために余計に話せなくなったわ。」
「……『天寿を全うする』というのは、そこまでの理由なのか?再会できたから、楽しく過ごす……とかでは、ダメだったのか?」
……その約束も悪くはない。
だけど、私とシエナのこれまでの人生は、楽しく過ごす……楽しく過ごし続けられなかったから。
シエナに会う前からも、美代時代に『天寿を全うする』が夢でもあり目標でもあった。
しかし今は、重みが更に重くされている感じ。
「私もシエナも、これまで幸せな死に方をしなかった。」
「幸せな死に方……どういう事なんだ?スノーも妹も……今までに何があったんだ?」
「シエナは、最初の人生……『柚』という名前だった時は、23歳で食中毒となり死んだ。次は7歳の時に石化病で……って、これは皆知ってるか。」
「23歳……王妃が亡くなったのも、23歳だったな……。」
そうか……王妃様もそんなに早く、亡くなられていたんだ。
「スノーよ、シエナが『ユズ』であった時の事を教えて欲しい。そして、スノーの事も……。」
王は私の質問に答えた、私も王の質問に答えると約束した。
「いいけれど……シエナの人生と同じ位、私の人生は辛い話になるわ。」
「……スノー、無理をしなくてもいいのよ……。」
お母様が心配してくれるのは嬉しい。
そして、こんなに優しい人に5年間も心配をかけ続けさせた自分が、とても憎くてたまらない。
20歳で私を産んだお母様……35歳というのは、考え方を変えると私よりも年下という事にもなる。
お父様も37歳……私よりも、30年以上生きていないんだ。
……だけど、若い頃をやり続ける私とは違い、親を体験しているだけあって、かけてくれる言葉には強い愛情を感じる。
この人達には、誤魔化しは聞かないし、誤魔化してはいけないのだ。
「私の最初の人生は……『美咲』という名の少女だった。」




