救出
「だ、誰!?」
「……あんたこそ誰よ! 私は王様達を助けに……あっ、もしかして敵ね!!」
いやいやいや、それはないよ。
「そんな事ありません! 私の娘になんて事を言うのですか!?」
あ……そんな風に言ってくれるなんて。
私みたいな親不孝者に……。
「娘……ああ、ノア様の娘といえば、国を捨てた裏切り者じゃないですか。」
少女はそう言うと、私を見下すように睨む。
身長は私の方が高いが、心臓を掴まれた気持ちだ。
それよりも、国を捨てたってどういう事?
「まてまて、その事については後で話す。そなたの格好は、反乱軍のものであろう?」
「はい、陛下。ご無事で何よりです。ライ王子とイルア公爵とノア様も、今まで待たせて申し訳ございません。」
私の時とうって変わって、深々と頭を下げている。別に頭を下げて欲しいワケじゃないけれど『国を捨てた裏切り者』なんて。
確かに家出はしたし、コントラストに戻るつもりは無かったけれど、少女の言い方では一方的に私が悪いみたい。
けど、長年培ってきた経験上、この少女の様なタイプの人間には、安易に言い返さない方が穏やかに事が終わるケースが多かった。
「反乱軍とかいう事情は良く分からないけれど、取り敢えず味方なんですよね?」
……ので、無難な質問を王にして、一旦少女の流れを切る。
「ああ、スノー。シエナに反乱する者達は、皆右手の中指に銀の指輪をはめているのだよ。」
そう言う王の指にも、指輪がはめられている。
「陛下、そんな事説明している場合ではありません。私が牢屋の鉄格子をダイヤモンド配合ヤスリで、切り落としますから!」
いやいやいや、私はただ味方かどうか気になっただけ……って。
「あのさ、ヤスリで切ってたら、時間がかかる気が……。」
「じゃああんたは、どうやってここを開けるっていうの!?」
そんなに、いちいちガン飛ばさなくてもいいのに。
「風魔法で手の上に小さな強風を出せば、かなり鋭利だから鉄も切れる……。」
「じゃあ、あんたがやれば!?」
「我の手の上に、鉄をも切れる風を起こせ。」
……私が言うと、イメージ通りの風を作り出せた。
「よし、それじゃあ鉄格子から、なるべく遠ざかって。」
「お前本当に大丈夫か?」
「ライは一回黙れ、集中してるんだから。」
「王子に向かってなんて事を!!」
この少女は無視だ。
私が風を鉄格子に当てると、少し鉄の削りカスが出るだけで、スイスイ切れていく。
約1分程で、全ての鉄格子を切る事が出来た。
……最後に両親の牢だったのだが、人が通れるだけ切ると、すぐに私に抱きついてきた。
「ああ、こんな姿になってしまって。あの日……お前を城に連れて行かなければ良かった……!」
スノーの父さん……いや、お父様。
「スノー、顔を良く見せて頂戴。」
お母様……。
「私は元気ですよ、片目が無いしボロボロのローブの下に甲冑なんて着ているけれど、家を出てから一度も風邪はひいてませんから。」
「スノー、愛しいわが娘……耳も無くしてしまって……。」
「心配しないで下さい、お父様。ちょっと上部が欠けただけですよ。」
こうして急がなければいけない状況の中、久しぶりに三人で話した。
スノーにとっては、転生後初めてちゃんと『親子』として、話したかもしれない。




