表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/53

12歳

パチパチパチ……


目の前では、木が音をたてながら、踊るように燃えている。


パチパチパチッ


今度はすぐ横から、私に向けての拍手が送られる。


「12歳の誕生日、おめでとうございます!」


アーサーが、毛皮の中に入ったまま私を祝ってくれる。


「ありがとう……なんか、ホントごめんね……。」


私も毛皮の中に入ったまま答える。

実は……今日は私の誕生日、すなわち1月20日だ。

こんな日なのに、今……洞窟で焚き火をしながら、朝を迎えてしまった。

洞窟は入り口が狭くて、奥に行くほど広い……寝泊まりするには最適だ。

しかし、急な崩落があったり、奥に危険な野性動物が潜んでいる可能性が、十分にある。

快適ではあるが、それ相応のリスクを負わなければならないのが、洞窟内で野宿する時のお約束。

ちなみにこんな事になったのは、全部私のせいだ。


「しっかり地図を見なかったから、雪山で遭難しちゃうなんて……。吹雪だから、ほうきで飛べないし。」


外では轟音と共に、暴風雪雷が絶え間なく続いている。


「いいえ、幸い昨日スノーが、魔害獣の皮で寝袋を作ってくれたので、僕もミシュリーも暖かく過ごせました!」


「ニャー、ニャオーニャ。」


ああ、二人(一人と一匹)にフォローされるなんて……。

だけど、確かに昨日洞窟を見つけたら、ホワイトアウトしているのに後ろから魔害獣が襲ってきて……ある意味運が良かったのかも。

熊が突然変異したタイプだったから、肉とか内臓は取って食べれる部位は食べて、残った部位は雪の下に埋めて冷凍をし、山を降りたら麓町にでも売れば良い。

毛皮は……まあ、色々作業をして寝袋代わりに。

大きな魔害獣だったから、二人で1つを使う事が出来た。

ミシュリーも入れたので、誰一人凍える言葉だ無く一晩を越せた。


「この寝袋、思ったよりも暖かいから、ペンダントに入れておこうか。」


私が毛皮を触りながら提案する。


「それは名案ですね!お金に困ったら、売ればいいですし……ってあれ?」


ギクッ


「旅はもうすぐ丸二年になるというのに、働かないで……おまけとタダ飯はあるとして……よく、お金無くらないですね。」


ギクギクッ


「もしかして……。」


ギクギクギクッ


「僕に内緒で、内職をしてるんじゃ!」


……セーフ!


「いや、ただ……公爵令嬢ともなれば、今までに貯めていたお小遣いの額が、半端ないだけよ。」


「なーんだ、だけど……これからは、少し働かないとダメですね。貯蓄はあっても困りませんから!」


真面目少年アーサー(後10日で13歳)は、私の言う事を全く疑わない。

本当は酒場の掲示板に貼られている、懸賞金の高い魔害獣狩りを夜中にしたり(この際は自分で洗濯)。

ある時は、夜中にギャンブル(合法的な)で儲けたり。


あ、ちなみに、レイが天井裏からギャンブルをするターゲットを監視していたおかげで、これまで一度も負けなしね!!

それと、シエドーはお金さえ持っていれば、何歳でもギャンブルが出来る(コントラストじゃ考えられない)。


何故こんな事をしているかと言うと、旅に出た時のお小遣いは、意外と早く無くなっちゃったんだよ。

よく考えてみれば、お小遣い関係なく、欲しいものはいつでも買ってもらえたからな~。

貯金箱には500レン硬貨と100レン硬貨と10レン硬貨ばかり入ってて、1000レン札1枚無かった。

……元気にしてるかな、スノーの両親。

今頃何しているのかな……と、思っていたらアーサーが小声で話しかけてきた。


「スノー、大変です。」


どうしたのかな……少し震えている様だけど。


「ど、洞窟の奥に……。」


そう言われて見てみれば、あらビックリ。


「ガルルルルル……。」


魔力が強くて突然変異した、魔害獣犬の群が威嚇してきていた。

その中の一匹と目が合ってしまい、もう顔をそらす事は出来なくなった。

群の今まで気配を感じなかった事から、この洞窟がよほど奥まで続いている……もしくは、奥の方に別の出入口があるかだ。


「アーサー、今すぐ毛皮を出て。ミシュリーと入口側に移動して」


私は目が合った一匹と睨み合いながら指示を出す。


「ですが……僕だって戦えま……。」

「私の言うことを聞きなさい。」


アーサーだって、戦える事は分かっている。

しかし、私が魔法を教えてきたからか、そもそも才能があったのか……アーサーはメキメキと魔力を上げている。

その分、コントロール力が足りないから、まだ実戦に出すワケにはいかない。


背中側がモゾモゾと動き始めて、少し経つと側から人の温もりが消えた。

……その瞬間、私は毛皮から一気に出て群との戦闘体制に入る。


「ガルルッ!」


「我の前に、氷の壁を作り出せ!」


私の考えた作戦は、群とこちら側の間合いの真ん中に、洞窟の端から天井までを氷の壁で塞いでしまうというもの。

洞窟内はかなり広いから、魔力の消費量は憑依魔法と同等……壁を厚くすればもっと必要かもしれない。


「バウッ!」


「壁よ、厚くなり天井に届くまで伸び続け!」


ゴゴゴゴゴ……ガシーンッ


氷の壁をほとんど厚さが均等のまま、私の前に作り出す事には成功した。

しかし、高さがまだ十分ではなかった時に、一頭が壁を飛び越えてきた。

大きさや柄からいって、私と目が合った奴だ。

そして、助走無しでかなりのスピードを出し、襲いかかってきた。


「ガウゥッ!」



……ズシャッ



私の手には、枕元に置いておいた剣……2年前にアーサーから貰った剣が握られている。


「……ごめんね。」


魔害獣犬は、他の生物に感染する菌を保有している可能性が高い。

感染してしまえば待つのは『死』……出会ったら、逃げるか殺すかだ。

こいつが生まれてきた事に罪は無い……が、今回はどちらかが必ず死ぬ戦いだ。

私もこいつも、死ねないからこそ殺し合う。

噛みつこうと飛びかかって来た所を……やむを得ず返り討ちにしたのだ。

せめて一瞬で逝ける様に、首を瞬時に切り落とした……それだけが、今の私に出来る事。


この様子を壁の反対側から見ていた群は、尾を足の間に挟みながらさっていった。


「……こいつ、埋めてあげたいんだけどいいかな?」


「勿論です、スノー……ほら……雪が少しおさまってきましたよ。」


「ニャー。」


ああ、本当だ。


空からは少しだけ日が指し始め、風が止み、雷が轟くのを止め、雪はただしんしんと積もるだけ。

雪に日光が反射して、キラキラと輝いている。

たった今……1つの命を奪ったというのに、皮肉な程綺麗だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ