表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/53

一人目の仲間

『約束するよ。』


夕日が沈んでゆく帰り道だ。


『……楽しみにしてるわ。』


約束なんて、どうせ口だけ。

最後は裏切られて、文字通り斬り捨てられた。

これは私の遠い昔の記憶……。




「ん……。」


「あっ、目が覚めましたか!?」


誰かに話しかけられている。

ゆっくり目を開けてみると、目の前に少年の顔とミシュリーの顔があった。


「ここ……は?」


「僕の家です、昨日噴水脇で目を覚ましたら、貴女が横で血だらけのまま倒れていて……。」


ああ、私……あそこで気を失ったんだった。

それにしても、頭がぼーっとする。

今が何時かは分からないけれど、いったん起きてしっかり目を覚まさなきゃ……。


「まだ起き上がらないで下さいね。」


私が起きようとしたところ、丁度良いタイミングで制された。


「どうして起きちゃ駄目なの? 頭をスッキリさせたいんだけど……。」


すると少年は、仰向けで寝たままの私の顔に手を伸ばしてきた。


「な、何するの……?」


少し警戒して聞いてみると、


「タオルを変えようと思ったんです。治療魔法でも使えたらいいけれど、この集落には炎魔法・水魔法・風魔法の3つ以外を使える人はいないから……。」


少年に言われて気づいたけれど、私の額の上にはタオルが乗せられていた。

寝かされているベッド横には、水の入った木の桶が置かれているし、どうやら私は熱を上げていた様だ。

道理で頭がぼーっとするよ。


「少年、ここには誰が運んできてくれたの?」


「僕です……大人達は怪我をした貴女を怖がって、火事を止めて山賊を倒したというのに助けもしなかった……すみません。」


申し訳なさそうに頭を下げる少年は、どこかこの集落には似つかない気がする。

でも、私とそう体格が変わらないのに、運んでくれたのはとてもありがたい。


「どうもありがとう、看病までしてくれて。」


「いえ……これ位しか出来ませんから。」


もう少し自分に自信を持っても良い気がするけど……不思議な事だ。

質素な部屋の小さな窓から入る日差しは、明るさと高さ……外の空気からいって朝日だろう。

初めて片目で迎えた朝というのは、まるで別の世界にいる様な錯覚を起こさせる。


「私……一晩も眠っていたのね。」


「はい、ただ……時折うなされていて心配でした。」


それはきっと、見たくもない夢を見ていたからだろう。


「あと、着ていた甲冑は勝手ながら脱がして……磨いておきました。」


少年が部屋の隅に指をさすので、上半身をゆっくりと起こして見てみる。

……そこには、血だらけだったとは思えない程綺麗な甲冑があった。

ピカピカに磨かれていて、血の匂いもしなさそうだ。

私の右耳と右目は包帯で巻かれており、額の上には冷たいタオルが乗っていて。

少年は夜通し看病していてくれたと、指をさした際に気づいた酷い手の荒れが語っているも同然。


「本当にありがとう、私はもう……大丈夫よ。」


「あっ、まだ起きないで……。」


私はベッドから降りてみる……どうやら、一晩寝た事で魔力が戻ってきているみたい。

それなら話は簡単だ、額に右手を当てて、


「我の負った傷と熱を……持つ魔力全てで治したまえ。」


私が言うと、体が強く光った。

魔法を使う際は体が光るが、今回の光具合からしてかなり魔力を消費しそうだ。

だがそれも、全ては私の傷と……ついでに少年の手を治すため。

10秒程経つと、光は収まり熱も引いていくのが分かる。


「手が治ってる……これは魔法ですか?」


「ええ、そうよ。熱は下がったわ……タオル、ありがとうね。」


私は起き上がり、包帯を外す。


「傷……ふさがってる?」


「はい……でも……。」


少年は何か言いにくそうにしている。

両手で自分の顔を触ってみると、耳は欠けていて、右目があった場所には、海賊のような傷が出来ているっぽい。

これにはコメントも困るよね。


「人の命を救えたなら、この位大丈夫よ。」


私はなるべく少年に心配させない様に、明るく言った。

我流の治療魔法ではなくて、高度な医療魔法なら傷を再生できるかもしれないけれど、そんなところに行ったら一発で『スノー』だとバレてしまうだろう。

もう痛くは無いから、甲冑を着て次の集落に……。


「もう行ってしまうのですか?」


少年は私を見て言った。

甲冑の元には替えの包帯が置いてあったので、右目に巻きながら私は話す。


「だって、ここにいる理由はもうないもの。少年も昨日の事は忘れて、ここで穏やかに過ごして頂戴。」


素っ気なく言うと、少年は足を少し震わせながら、私を見つめてきて。


「それなら……僕も連れて行って下さい!!」


……は?

土下座までして頼み込まれても……。


「それは無理だよ、君には別の人生がある。私なんかといて、幸せになれない。」


本当の事だ、ワケ有り公爵令嬢だなんて、一緒に居て面倒な人物五本に入るんじゃないの?


「でも……ここの人達の事分かりますよね?」


……うーん。


「閉ざされた場所にいるから、片寄った考え方しかしないんです。」


まあ、そんな感じではあったね。

私が気を失っている間、誰も少年を助けなかったみたいだし。


「僕は広い世界を見たいんです。そして、貴女に恩返しをさせて下さい!」


そんなに言われても……だけど、親がいない状態でこんな集落に置いていくのも心配だし。

どうしたものか……。


「お願いします!」


……あぁぁ~。


「……私と来るとなったら、ほうきに乗れなきゃ駄目だよ?」


「乗れます! 少しの魔法なら使えます!」


「いつ死ぬか、どんな目に遭うか分からないよ?」


「一度死にかけた命なので、今更って感じです!」


うーん……。

そんなに綺麗な瞳でみられたら……。


「しょうがないかぁ。ついて来てもいいよ。」


「あ、ありがとうございます! 遅くなりましたが、僕の名前はアーサーです!」


なんだか、立派な名前だな……。


「それじゃあ、アーサー……宜しくね!」


「はい!」


と、いう事でアーサーも共に旅に出る事になった。

この時に握手を交わしたのだが、何故か少々の懐かしさを感じた。それと同時に、ほんの少し……忘れかけていた、気持ちも感じた気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ