表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/53

少年の話

……仇?


「それって、そのままの意味で……?」


私が恐る恐る聞いてみると、少年は涙をいっぱいにためた顔になっていて。


「はい……僕の家族は……山賊に殺されたんです!」


殺された……少年の言っている事が本当だとすれば、私はコントラストの平和な面しか見ていなかった事になる。

仮にも貴族の娘だというのに、国の事を何も分かっていなかったのだ。

平和な国だと思っていた……幸せに飲み込まれて、世の中には『裏』がある事を忘れていたのかもしれない。


「少年、詳しい話を聞かせてくれる?」


「……分かりました。」



少年は時折涙を流しながら、話をしてくれた。

話によると、一週間程前に家へ山賊が押し入って来て、父母を短刀で斬りつけて金品を奪って行ったと。

少年は父母が殺されるのを影から見てしまった後、床下の収納庫に隠れていたので山賊に見つからずに済んだらしい。

だけど、上から音が聞こえなくなった頃、収納庫から出てみると荒らされた形跡と血痕だけが残っていて、両親がいなくなっていた。

集落に警察はいないが、山の麓町には駐在しているので、山賊達は通報されても捕まらない様に、自分の事を見た人間を殺してさらうケースもあるようだ。

これまで何度も警察に相談したが、山賊を探しても見つけられなかったので、今はもう放置状態になっているみたい。


「話してくれてありがとう。」


私はなるべく穏やかな声で言った。

少年は気づいてないけれど、近くにいたミシュリーは私から遠ざかっている。

本能なんだろうか……判断としては間違っていない。


「もし分かれば、山賊の特徴を教えてくれる?」


「……山賊は三人いて、二人は短刀を……一人は長刀を持っていました。」


この質問は、少年にとって最悪の思い出を蘇らせる事になるが、聞いておかなければならなかった。


「了解、教えてくれてありがとう。」


私が剣を受け取って、山に入ろうとすると……


「ちょっと待って下さい!」


少年は私を呼び止めた。


「……僕は……両親が息絶える所を見てないんです。だからもしかしたら……。」


ああ、言いたい事は分かった。


「両親の特徴は?」


「母は右手の甲にあざがあって……父は僕とそっくりな色の瞳をしていました。よそから嫁いできた母が、海みたいで綺麗……って海を見た事のない僕に話してくれてて……。」


確かにこの少年……今は光を失っているけれど、心の底から笑えば輝きそうな瞳を持ってる。


「お母さんもお父さんも、連れてこられる様に頑張るわ。」


たとえそれが、限りなく低い可能性だとしても。


「……この集落のために動いてくれて、ありがとうございます。」


集落のため……。


「少年、私は食べ物を粗末に扱う人が嫌いなの。私は、少年と自分のために山賊狩りをするのよ。」


少年の瞳が、少しだけ輝いた。


「……ありがとうございます! なんてお優しい方なんだ……。」


優しい……か。


「全然……優しくなんてないわ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ