まさかの展開
朝は父に怒られて、一日テンションが下がり気味だった今日。
今は夜なのだが、私はまた、城に来ている。
大広間に集まった人々に見られながら、甲冑を着た状態で玉座の前にひざまずいている。
どうしてかというと話が長くなるので、要点だけをまとめよう。
・朝怒られる。
・テンションが下がったまま大学に行く。
・炎魔法の授業中に、ライが調子に乗ったので、憑依魔法を見せる。
・その憑依魔法は、朝にやったモノではなくて、オリジナルだった。
・通常は炎が纏わりつく剣だが、オリジナルは微妙に赤く発光していて、剣を振る事により炎が飛ぶというモノ。
・これを見た教授が消える。
……今!!!
え、いや本当になんでこんな事に??
今から少し前の事なら、パッと思い出せるんだけど……。
確か、イザベラと一緒にペガサス車で家に帰って……。
「「おかえりなさいませ。」」
と、2人のメイドがいつもの様に出迎えてくれて。
帰ったら自分の部屋に直行するんだけど、両親の寝室の前を通ったら、バタバタと大きな足音が聞こえて、心配で開けてみると、
「ああ、スノー帰って来たか! ずいぶん遅かったじゃないか!」
なんだか、いつもよりも豪華な服に着替えた父が部屋の中に立っていた。
「お父様、ただいま戻りました。少々サークルというものに興味がありまして、イザベラに案内してもらって……。」
「あら、スノー帰って来たの!」
お母様は、ウォークインクローゼットから顔を出す。
私の部屋にもウォークインクローゼットはあるけれど、母の方が倍位大きい。
「スノー、早く着替えなきゃだめよ。私も今服を選んでいるから……。」
なんで着替えないといけないのかな?
まだ、シャワーも浴びてないのに(ちなみにシャワーは、水魔法の応用で手からぬるま湯を出す事を指す。ぬるま湯が出せなかったりする人は、ただの水を温めてかぶる……この様な時は水道が恋しくなる)。
「スノーはこのレギンスに、茶色いワンピースを着て来てね。」
おしゃれ好きの母から渡されたのは、生地は良いものの……地味すぎる服装だった。
今着ているのは、ブルーのひざ丈ドレス。
どこかに出かけるのなら、ドレスの方が良いと思うんだけど……親に言われたことだし、仕方がないよね。
……で、その後ペガサス車で城に連れてこられた。
そっから無理やり甲冑を着せられて……玉座の間に入場(入間?)させられたんだけど。
やっぱり、急展開過ぎて話の意図も何もかも読めてこない!
「スノー、お前に勇者の聖剣を授ける。」
王は私にセイケンとやらを渡してきた。
この状態で渡されたら、ノリで、
「ははぁ、ありがたく。」
……って言っちゃったよ。
いや、違うから!
「陛下、これは何!? 私…はあっ!? いや、ホント。意味が……ねぇ、ちょっと!」
状況が呑み込めなさ過ぎて、発する言葉がちぐはぐだ。
すると王は、私にしか聞こえない声で言った。
「とりあえず、聖剣を受け取ってくれ。説明は後だ。」
王は必死そうな顔……おでこに冷や汗までかいているし……。
「……分かりました。」
私は断れずに、受け取ってしまった。
何か盛大なドッキリかもしれないし、私に事情を話さないで、両親も王もマイナスになる事はしないと思ったのだ。
結論から言うと、スノーの人生はここで失敗した。
大広間にいたのは、国の要人達で……私はその人達の前で『ユウシャノセイケン』という物を受け取ってしまった。
受け取った後、言われた言葉は。
「ここに今、新たな勇者が誕生した! その名は、スノー・ホワイト!!」
玉座の間は拍手喝采。
だけど私は、何も理解していなかった。




