初めての世界
学校から家に帰ると即座部屋着に着替えそのままベッドにダイブした。
「はぁ~~~明日から夏休みだぁ~!!」
私の名前は朝水ひかり、小さい頃は外で遊ぶ事しか知らず友達とはよく公園などでかくれんぼ、鬼ごっこ、夏になれば海やキャンプ、冬は雪合戦をやった後はかまくらを作るなどお人形遊びや絵本を見るといった家の中での遊び事は知らないまま育った超アウトドアな少女だった。
外にいる時間が多かったためテレビはあまり見ずアニメ、ゲームといった物は興味がない、というよりそのもの自体知る機会がなかった。
高校に入学すると様々なところから通ってくる子がいるため小中学で仲が良かった友達も行きたい高校に行き私が通っている高校には知ってる友達がほとんどいなかった。
しかし、時が経つにつれ、クラスメイト達と仲良くなっていった。そしてある時話題でゲームの話がでた。
今まで外遊びしかしなかったので、ゲーム機を持っていないと言うと物珍しそうに驚かれた。
「うそ!?朝水さんゲーム1つも持ってないの?」
「うん、今まで欲しいって思った事がなかったからね」
「今の時代でゲームやった事ない人がいるなんて初めて聞いた」
このゲーム、アニメがオススメだよ!と色んなことが情報を教えてくれた。
昔こそは全く興味がなかったが、最近の私はそうでもない。
あれは学校が休みの日たまにはと何となくテレビを見ていたら、とあるCMに釘付けになった。それはアクション系のゲームだった、個性豊かなキャラクターは勿論、1番釘付けになったのはキャラクター達がそれぞれの武器を使って戦う場面だった。
「かっこいい…」
戦っている姿に一目惚れし、私は今までにない位興味を示した、その事もありゲームの他、アニメにも徐々に興味を覚えてきたのだ。
その話をクラスメイトに話すとすでに持ってるらしく、どんなものなのか遊んでみたいという事をお願いするとそのゲームは携帯型のゲーム機なため持ち運びがしやすく明日の終業式持ってきてくれる事になった。
乙女ゲームもあるけど、どうかな?と聞かれたがそれは遠慮しておいた。ゲームには興味を持ち始めたが、恋愛もの自体は無関心だった。今私が心引かれるのはアクション系のものだ。
そして終業式を終えた今、家に帰ろうと思ってたが部活は通常通りあり帰ったのはいつもと変わらず夕方頃になってしまった。
夏の暑さもあってヘトヘトになり、家に帰ってベッドにダイブして、現在の状況である。
「やっと終わった~、あぁ…早速ゲームしたいけど疲れた…ちょっと休憩しよ……」
横になってほんの少し休むつもりが、そのまま眠りについてしまった。
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目を開けたらそこには知らない中年男性が座っていた。この人誰だっけ?と記憶をたどっていくも覚えがない、一度も会ったこともない人だ、真剣な表情で私をずっと見てくる…
すごいこっち見てくるけど、この人誰なのかわからない、知っている人だったらどうしよう…
暫く考えていると別の事に疑問が浮かんだ。
あれ?私ベッドで寝てたのに何で立ってるの?
服も違うし……何で…?
すると目の前の男性が
「離れてしまうのは寂しいけどいい人を見つけてくるんだよ」
いきなり喋り出したので少し驚いてしまった。これは私に言っているのかな?
だとするなら全く意味がわからない、目の前の中年男性の言った事もだが、まわりをよく見回したら自分の服以外に部屋の家具が違うのは一目瞭然だ。気づくのが遅すぎでしょ!
部屋の中央にテーブルのが置かれ可愛らしいピンク色の花が飾ってあり、パン、スープ、何の肉かはわからないけどとても美味しそうでよく焼けた骨付き肉などの料理もテーブル上に用意されていた。そして壁際に暖炉がある…こんな洒落た部屋もといお家は私の記憶にない!
ここはどこなの!?
色々と考えていると男性が
「……あぁ、ご飯食べながら話そうかせっかくオリビアが作ってくれたんだから」
そう言うと料理を用意されてる席についた。
お腹が空いてたのかな…それとも私が空いていると思われたのか?
相手が席に座ったので私もずっと立ちっぱなしでいるわけにはいかず、私も料理を置いている席へ座った。
この料理、オリビアって人が作ったんだ…私だとあんなに美味しそうには作れない、無理。
料理を作ったオリビアという人がどんな人物か確認しようと辺りを見たら誰もいない、今この場にいるのは私と男性だけだ。
「オリビア、どうしたの?」
男性が私のほうを見て、オリビアと言ってきた。
「………えっ?私?私に話してるの……です…か」
まさか私に話しかけてるとは思わず、おかしな声や敬語になってしまった、恥ずかしい…
「そうだよ、他に誰がいるんだ」
少し可笑しそうに言ってくる男性。
「いや、あの、私オリビアじゃありません…多分というか絶対人違いかと…」
「なにおかしな冗談を言ってるの」
「本当に私はオリビアって人じゃないです!」
「じゃないって…その冗談はお父さん傷つくなぁ、ただでさえ大事な一人娘が明日この村から出るっていうのに」
「お父さん!??」
なに言ってるの!私のお父さんは黒色の髪と瞳、少しお腹がでている人だよ!あなたみたいな髪と瞳が茶色で体型がスマートで少しダンディーでよく見るとカッコいい人がお父さんな訳ない!
自分の娘なら一目ですぐにわかるでしょ!何で私が娘なの……
あぁ、もしかしてこれは夢かも、夢ならおかしな事があっても納得はいく。それにしてもこんなに意識がはっきりあるもんなのねー。
夢と決めつけても疑問に思う事はあり、ここが何処なのか私自身が『オリビア』という子なのか、どの疑問から聞いていこうと考えたが1番気になったのは「明日、村から出る」という言葉だった。
「明日って何かあるの…ですか?」
自称お父さんと言ってくるが、あぁそうですか。とすぐ納得するわけもなく敬語のままで話す。
「明日はオリビアが旅に出る日じゃないか」
「旅!?えっと…私が?」
オリビアではないです。って言うと話が進まなさそうだから一応私がオリビア、ということにしておいて
旅に出るって何で私なの、服装からしてゲームに出てくるなら市民Aがピッタリな恰好してるのに
まるで勇者のような扱いに
「オリビアは今18歳で恋人はいないだろう、だから旅に出るんじゃないか」
18歳で恋人がいないから旅に出すって、罰ゲームが酷過ぎませんか?
この男性の発言や自分がどういった状況なのか全く理解できない、夢の中でも頭痛くなってきた…
少しの間落ち着けるとこ、一人になれる場所へ…
「あの、すみませんが少し気分が悪いので休ませてもらえないでしょうか…?」
「いいけど、大丈夫かい?どのへんが悪い?」
「頭だったり心だったり色々とですね…」
「そうか…なら部屋でゆっくり休んできなさい」
「はい、ありがとうございます」
許しをもらえ胸をなでおろすしたが、ふっ、と思った。
私の部屋ってどこだろ…
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どうにか自分の部屋…?にたどり着いた。
部屋に入り私はすぐにベッドに向かい倒れこんだ。
何もしてないのに疲れた…夢だとしても訳のわからない事を言われて頭がついていけない。頭の中がグルグル回ってショート寸前だよ…
オリビアって…私の名前ひかりなんだけど…
そんなおしゃれな名前縁が無いし、第一私日本人だし。
考えていても疲れるだけ、考えるのを止めようと、ぼーっとしていたら次第に今いる部屋のインテリアに興味が向きは始めた。
この部屋もオリビアって人の部屋なんだろうなぁ、キレイに片付けて机の上に小さめな花瓶に花を生けてある。
ここにも花がある、花が大好きなのかな。
他にも家具が置かれてるなか、部屋の隅にある本棚に視界に入りベッドから起き上がり近くまで行ってみた。その大きさは図書館に設置してる本棚と同じ位の大きさだ。気になった本をいくつか手に取ってパラパラっとめくってみたり、背表紙を見ていると並んでる本ほとんどが童話や恋愛ものだった。
沢山の本が並んでるけど、もしかしてこれ全部読んだのかな…
上から下まで眺めていると一冊の本に視線が止まった。
「ライゼ村の歴史…?」
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「……そういう事だったのか…」
ほとんどが童話と恋愛小説で並んでた本のなかに唯一ジャンルの違う「ライゼ村の歴史」という本に興味を抱き、手に取り再びベッドに戻って横になりながら何となく読んでいたら先程の男性、自称父親が言っていた「村から出て旅に出る」という謎の発言とこの本の内容が結び付き、発言の意味がようやく理解できた。
内容によると
昔、ライゼ村では生まれてくる赤ん坊のほとんどが男の子よりも女の子のほうが多い時期が長い事続いてた。成長し結婚する年になる頃には男女の数に偏りがあるのでどうしても女性が残ってしまう、という事態が起こっていた。
事態を見かねた当時の村長により18歳までに恋人もしくは結婚相手がいない人は半ば強制的に旅に出させて相手を見つけてこい。という投げやりな風習を作ったそうだ。いざ、実施すると最初の頃は誰からも選ばれず余った人という晒し者状態で恥ずかしい思いをする事になり皆残るのを嫌がっていたが、そんな中まさかの事が起きたのだ。
それは旅に出た村の女性がどこかの国の王子と結婚したという事。
突然村にそぐわない豪華な馬車がやって来たと思えば中から馬車から王子様が降りてきて、村の人達が驚いてるなか、更に旅に出た村の女性が王子様にエスコートされながら降りたもので何事かとその場は人だかりができていた。
そんな人だかりには気にも留めず、女性が暮らしていた家へと向かい久々に両親に顔見せするや否や、王子様から「こちらの女性と結婚し、共に暮らしていきたい。ご両親も一緒に暮らさないか?」と挨拶のために、はるばる訪ねに来たらしく女性の両親は断る理由もなく喜んで結婚を承諾し、娘と一緒に王子様の国へと暮らしに行った。……というシンデレラストーリーが巻き起こったのだ。
そんな逆転劇を目の前にした村の人達、特に若い娘達は晒し者というイメージが払拭し旅に出たら王子様と結ばれる事があるかもしれない、と希望が生まれるようになり、それ以来敢えて恋人は作らず喜んで自ら旅に出る娘達が増えたそう。
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当時の出来事を細かく本に載せてくれたおかげで頭の中が少しだけ整理できたわ…ホントに少しだけ…
今わかる情報を整理すると、この夢の中では、私の名前はオリビア、このライゼ村で育ちあの男性は私のお父さんで明日村を出て旅立ち恋人もしくは結婚相手を見つけに出る、っていう事はわかった。
本にライゼ村って名前があったけど、この村の事かな?あの男の人の会話でも村って単語が出てきたし…何よりこんな変な風習ほかにある訳がない!
多分この村はライゼ村だろう、うん、そうしよう!
さっきまで頭の要領がいっぱいだったけど、だいぶ落ち着いてきた。落ち着き初めて急に眠くなってきた…
考えるの疲れたから少し寝よ……