表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2  作者: gaction9969
最終章:ダメ息の花だけ束ねた風景
90/176

#090:周到かっ(あるいは、這いTX!シマ子さん)


<9……8……>


 カウントダウンが始まると、ぐるり円を描いて対峙する対局者たちは申し合わせたように、めいめいにスピードスケート選手が取るようなスタート姿勢を取り始めた。左腕を胸の前に水平に構え、右手はチョップをかましますよ的な中空で固定、そして軽く腰を落とし、脚をがに股に開いたスタイルで。いや何で。


 思わずその珍妙な光景に目を奪われ、素立ちの真顔で立ち尽くしてしまうけど、そんな私を彼方に置き去りにするかのように、時間は進み続けるわけで。


<3……2……1、スタートぉぉぉぉぉっ!!>


 始まった!! と思った瞬間、私の右斜め10m先くらいにいたシマ大佐は既に、その燃えるような真っ赤なプロテクターの残像だけをその場に置きざって、前方への突進を開始している。速いっ、そして低いっ!! 地を這うっていうのはこういうことか、と思わせるほどの、顎……地面に擦るんじゃね? くらいの体勢を保って前へ滑るように移動していく。そして、


「……『トリプル』!!」


 軽く前方に掲げた左腕に右手を当てると、幼げではあるが凛とした声が響かせる。はじめてまともに腹から出した島大佐の声は、やはり見た目相応の少女っぽさを持っていた。あの重々しい喋り方と押し殺したような低い声は作ってるものだったんだろう。その正面、


「『トリプル』ぅぅぅぅぁっ!!」


 対するのは、「造反元老」のトップと思わしき塗魚トザカナだった。こちらも初っ端からアクセル全開で一声吠えると、一気に大佐との間合いを詰めていってる。おお、いきなりの頂上対決。駆け引きとか、あまり考えてる場合じゃあなさそうね。


 それより、ああやってBETすんのかよ。私は改めて自分の左腕の「ホルダー」をつぶさに見るのだけれど。「BET100」と下に白い文字が書かれた赤い四角のボタン。その左横には、青い「ダブル200」、緑の「トリプル300」とのボタンが並んでいる。


 一回それを押せば、「格闘」か「DEP」のどちらかが「10秒」解放されると。うん、そんな説明は一ミリも無かったな。


 試合開始が為されてから、妙に体のぎこちなさを感じていたけど、BETしない限り、この「プロテクター」は私らの身体を拘束し続けるようだ。身体全体がすっぽりセメントに埋められたかのように、その場から完全に動けなくなっていた。いやいやいや、どういう機構でそんなことが……


 や、完全にでは無かった。砂袋を全身に巻き付けているような状態だ。のろのろと、力を込めれば動くは動くけど、これじゃあやばいって。


 私は苛立つほどの鈍重感にやきもきしながら、ようやく右手指を左腕のところまで持ってくることが出来た。つうか最初から拘束しちゃったら、BETすることさえままならないじゃあないのよ。


 と思ったところではっとした。だからこそのあの「スピードスケート」の開始姿勢だったのかよ。すぐにBETボタンを押せる体勢! ぐうう……元老め。私だけに伏せていやがったなぁぁぁぁぁ。


 口を閉じた般若、くらいの形相にはなっているのだろう。私の狂気迫る顔貌に、右方向から攻撃を仕掛けようとしていた「造反元老」のひとりイブクロが、目が合った瞬間、少しのけぞっていくのが見て取れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ