#079:貫徹かっ(あるいは、去来/傀儡/It’s alright?)
結局、
第3ピリオドは、里無の棄権というかたちで幕を閉じた。
「保留」に「供託」やら、しっちゃかめっちゃかやった挙句のこの決着は、果たして受け入れられるんだろうかとの一抹の不安があったものの、意外にそれはすんなり行ったようだ。
それはようございました。が、が、……ね。改めて電光掲示板の表示を見やる。
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01:13600:島=ワシントン大佐
02:11500:千木良草 紆余
03: 2100:遊獅子 我飛兎
06: 0:木佐 和佳→失格
07: 0:鎌田 珠歌→失格
08: 3500:天馬屋 仙子
09: 8600:塗魚 ミカ
10: 300:黒戸 美咲
11:12300:衣袋 音子
13: 0:里無 仁実→失格
14: 7000:阿菰出 紫音
15: 7000:志木 寧奈
16: 6200:水窪 若草
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里無は棄権して失格となったのだけれど、それ以外にも上位元老が二人も失格となっていた。
現況は、「上位」4人に対して、「下位」は5名。頭数では勝っている。カネの多寡も、307,00万 VS 35,200万と、これまた「下位」有利……?
と、残りが10名となったところで、「第一戦」は唐突に終局を告げられたのだけれど。
もともと「残り何名になるまで」とかの説明は為されていなかったわけで、こいつはいつもの行き当たりばったり/成り行き任せの運営の目論見なのだろうとは薄々分かってはきている。けど、
ともかく次戦まで30分の休憩が与えられたことだけが、有り難い。
ちょっとメンタルがコントロール不能くらいのとこまで陥っているから。
私は装置の上で固まりかけていた体をぎしりと何とか下ろすと、感極まって抱きついてくる里無やら印南やらを適当にあしらいつつ、そそくさとグラウンドを横切って例の「医務室」へ急ぐのであった。そんな私を腫れ物に触るかのように、遠慮がちに声をかけてくるアオナギやら丸男だったけど、それも無視してひたすらに目的地を目指す。
もはや私ら用の控室と化したそこは、やはり精神の落ち着く場所ともなっているわけで。遠慮なく私は無人の部屋に飛び込むと、その勢いのまま固い簡易ベッドへとダイブする。
……やってもうた。
先ほどから私の大脳以下の器官を埋め尽くしているのは、その一語に尽きているわけで。
消毒薬っぽいケミカルな清浄感のあるにおいが私は好きなんだけど、医務室にたちこめるそのにおいですら、私に落ち着きをもたらすことは不可能だった。
ベッドに伏せて、シーツに顔を埋め、ひたすら足をじたじたさせる。
-『小6のある時、家でくつろいでいたお父さんに、なし崩し的に相手をさせられたことがあって……私の初めてはお父さんとだった』
あの私の放ったDEP。
-『それからは何度も、何度も……っ、いつしかそれが普通になっていって……、両親の離婚まで、それは続いた』
嘘じゃあないんだけどね。ま、嘘ついたら電流流されるから、それには細心の注意を払っていたようなんだけど。でもあれってさあ……
「……」
……あれ「将棋」のことなんだよね。
やっべーよ、それバレたらやっべーって、とシーツを前歯で噛み絞りながら、喉奥でそう呟くことくらいしか出来ない。