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(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2  作者: gaction9969
最終章:ダメ息の花だけ束ねた風景
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#057:喧伝かっ(あるいは、魅せろソウルカラー/1&オンリー)


「やや! こここいつは見覚えがあるぜぁっ!!」


 「サークリック何とか」という、放射状に奇妙な「座席」がずらり配置された装置を見て、丸男が素っ頓狂な声を上げるけど。知ってんなら何か有益な情報を寄越しなさい。


「電流を浴びて、け、ケツを浮かせちまうと、ガーッ滑って、辛子地獄へと誘われちまうという、極めて身体と精神にダメージを与えて来る対局形式なんだぜぇっ!?」


 語尾がよくわからない形式だけれど、何となくの感じは掴めた。と言うか、その辺の説明はハツマが懇切やってくれるわけで、わざわざ拙いのを聞く必要は無かった。私はさりげなくまたも贅肉の先にある首肉に的確な狙いすました手刀を打ち込んで、こるたな、みたいな末期声を発しつつ震える声帯を完全に沈黙させる。


 

 ・評価ポイントは選抜されたギャラリー10000人が各々持った「10ポイント」を投票していく。対局者のDEPごとに評価は行われる


 ・評価ポイントの差が、そのまま電流の強さとなり、座席から敗北者の臀部へと放たれる


 ・シートに着座していない場合、その時間だけ座席のレールへの固定は解除され、前方へと滑走していく


・レールの長さは「10m」=「10000mm」


 ・レール終点に達した者はそこで失格となる。手持ちの賞金は全て没収となる


 ハツマの説明をひと通りまとめるとそうなる。けど何かまだ裏ありそうだわ。この「カネ」の用途……「ベット」以外にも何かしらの「要素」がありそう。


 そしてレールの「終点」に何が待ち構えているのかも未だ不明だ。丸男曰く、前は辛子プールだったとか言うけど、そんなんにダイブしたら結構大ごとじゃあないのよ。むうう、と私は気になって「装置」の中央部分を伸びあがって凝視してみるものの、円筒形の巨大なものが見て取れるだけで、その中身、あるいは正体はまったく分からない。


 説明の間も、鈍い金属音を発しながら、場内に進み出て来た巨大装置が準備を進めているのが見える。ギシギシと「脚場」を固定させるためと思われる「脚」が四方に張り出し、土のグラウンドにその先端が突き刺さっていく。装置の周囲にはいくつか金属のタラップが設置されていて、これで対局の場へと上がるのね。


 私らも例の黒服たちに促され、それぞれがそれぞれの番号……「順位」が記されたレールの傍らへと移動を求められる。まあここまで来たら文字通り乗るしかないわけで。私含めた参加者全員が、「サークリックうんちゃら」と呼ばれていた、エアロバイクの周囲を籠のように囲われた簡素なカプセル的なものへの搭乗を余儀なくされているようだけど。


「……水窪ミズクボ、単純なアドバイスだが聞いてくれ。『最下位のお前は初戦をケンで通そうなんて考えるな』、だ」


 乗り込もうとする私の背中にそう力強い声を掛けてくれたのはやっぱりカワミナミくん。流麗な顔は私の体を心配してくれているのか、少し無理な無表情だけど。ありがとね。いっつも適確なトスを。


「……」


 返事の代わりに、にやり笑って見せる。あたぼうだっつーの。こちとら初戦からMAXベットの極限殴り合いをご所望よ。


 と、装置の向こう側から、目が合って軽く手を振られた。「15」のレーン。


「やっ! 底辺同士がんばろうっ」


 軽薄と親密の狭間に位置するようなハスキー声。人好きのするよく日焼けした顔。背中まであるソバージュを白いカチューシャで大雑把に上げている。昭和とはいかないまでも、平成元年を思わせる佇まい……いやしかし、その押し出しの利きそうな外見よりも、何か、通ずるインスピを感じた。


「……よろしく」


 レールを挟んで握手を求める私。らしくないとか、思わんでもないけど、向こうも呼応するように右手を差し出してくる。刹那、


「!!」


 掌が触れ合った瞬間、お互いがお互いの腕を捻り上げようとする強力な反発力場が発生する。余裕の表情を保ちつつも歯は全力で食いしばられているという、空恐ろしい形相を向かい合わせながら、私とそのソバージュ女は対峙する。周囲にどよめき。


 似ている……ドッペル的な何かを感じる……硬直状態からの打開を図ろうと咄嗟に左手刀を相手の右脇腹に放とうとするも、同時に向こうからもやって来やがった。


「……!!」


 掴み合っていた右手同士が電磁石が如く反発して離され、肘で互いの攻撃を紙一重でガードしている。野郎……やるじゃないの。


「……せいぜい頑張りましょう?」


 ソバ女は余裕の笑みを残して踵を返すと、自分の「カプセル」へと、さっさと向かっていく。なるほど? 決勝はやっぱ一味違いそうだわ。


 気合いを内に秘め、私もエアロバイク状の装置に跨る。ペダルこそ付いてないけど、前方にあるハンドルを握るとほどよい前傾。よしゃ、いっちょかましてやりますか。全員着座が確認されると、装置全体に四方からライトが当てられていく。


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