表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2  作者: gaction9969
第3章:愛はさ、ダメさ、ダメは死
49/176

#049:蒼穹かっ(あるいは、プラネットボイーズ/せめぎあい宇宙)


 ……若草。


 ……若草寝たのか?


 誰? 呼んでるの。起きてるけど。


 ……すまない。


 やだ謝らないで。謝らないでよ。何で、


 ……お前には悪いことをした。迷惑かけた。俺はもうお前と一緒にはいられない。


 何でそうやって離れてこうとすんのよ。何で。みんな。


 私の目の前に広がっているはずの像は、何故だか全然ピントが合ってくれない。ぶれぶれで、しかもぐわんぐわんに揺れ動いている。


 謝ってるのが、私の父親だった男なのか、私の彼氏だった男なのか、それすらもわからないくらいに。


 記憶が、フラッシュバックしてるとでも言うの? にしても何でそんな記憶ばっかり。


 楽しかった思い出が、無かったわけじゃないのに。お父さんにだって、あいつにだって。それなのに。でも。


 だったら……だったら何でよ。誰かが……操ってでもいるって言うの? 誰が? 誰のせい? 誰のせいだと?


 私の薄れゆく脳裡に、何故か、広大で漆黒な空間に光り輝いて浮かぶ、青い惑星ほしビジョンが結ばれた。瞬間、私の意識もようやくそれにピントが合う。


「……地球キサマのせいかぁぁぁぁっ!!」


<ああーっとお!! 水窪ミズクボ選手、息を吹き返したーっ!! 致命的とも思われた覇武ハブ選手の痛烈なかかと落としをっ!! 受けきった? 反撃? あるのかぁぁぁぁっ!?>


「ウオオオオンっ!! ぅぅぅぉぉ男に逃げられたぁぁぁぁぁあああああ地球タヒねぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」


<すさまじいっ!! すさまじいばかりの一点モノの憎悪の噴出がっ!! この日本の片隅の地下で沸き起こっているぅぅぅぅぅぅっ、こわいよぉぉぉぉぉぉぉっ、誰か僕らの地球タマを守ってぇぇぇぇぇ!!>


「わがああああ!! かえ、返すっぺ!! わじらに返すだっぺぇぇぇぇっ!!」


<わ、わかりませんっ!! もはや水窪選手の奥底に何人いるかがっ!! 駄々っ子のような両腕ぶんぶん回しのパンチが繰り出されますがっ!! それは流石に覇武選手、かわし捌いていますっ>


 とっくに遥か彼方に飛んでいた、実況の声が何とかまた聞こえ始めてきていたけど、目の前のユズランの姿にはまだ視点が定まらない。私は今、夢想と理想と空想のはざまで、ただただ、自分の本能のままに、わめいて暴れるしかなかった。


 世界を、自分以外を恨んで憎むことしか出来なかった。あの時と同じだ。


「……あの一撃でっ、シャットされないのはっ、褒めてさしあげますわっ、ならば今度こそ刈り取るっ!!」


 急激に頭の中が冷え込み、今の現実にかろうじて戻ってくると、ユズランがうるさそうに私の拳を払っている姿がはっきりとしてくる。正面からでは綺麗に蹴りが入らないとでも思ったのか、大きく右にステップを取ったけど。


 取った。


「!?」


 振り下ろしていた右拳を途中で急制動させ、後方への裏拳へとシフトさせる。回り込もうとしたユズランの右側頭部にそれがクリーンヒットした。


 「強化されたパンチを直に喰らうと、とんでもない衝撃が広範囲に走る」、そんなことをカリヤかダテミのどっちかが言っていたことを思い出す。さしものユズランも、撃たれたところ以外も硬直させ、顔面が苦悶の表情に覆われた。もう私の体も鋭い動きは出来そうもない。次で……決める……っ!!


ワカ「……ユズラン、あんたは強かった。だけど私の『勝ちたい』と思う、思いの強さがそれに勝った……それだけよ」


黄色<あっれぇぇぇぇ~!? 綺麗にまとめようとしちゃってるぅぅぅぅぅっ!! いや違う違う、全然違うでしょぉぉぉぉっ!?>


カワ「……見事なまでの『野性』と『獣性』の融合した姿……アレこそがダメ人間の理想像」


黄色<それ野獣っ! 曇りない野獣ってことですかぁ!? それは確かにそうなんですけど! いややっぱりええええええええええっ!?>


 実況の困惑を尻目に、棒立ちで何とか耐えていたユズランの高そうな鼻っ柱に、いい感じに力の抜けていた私の右肘を振り抜きつつ、放り込む。


 ぺきりというような小気味よい感触と共に、前を向いているはずのユズランの鼻だけが左を向いた。えぼるた、みたいな呻き声を残し、白目を剥いて両鼻穴から血をどぱと垂らし始めたユズランは、一瞬後、どうと仰向けに倒れる。


 決着……なったの?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ