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(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2  作者: gaction9969
萬國最驚天終章:ダメの海にダメの帆をかけたダメ女
174/176

#174:磊磊落落かっ(あるいは、選別、ないしは、餞別)

 三役揃い踏みみたいな感じで、決勝局を戦った三人と顔を突き合わせる。どうしたの、改まっちゃって。


 ぎしりと音が鳴りそうなほどに凝り固まった体を、何とかしゃんと立たせて、その3名様と向かい合う。私の背後にカワミナミ君が寄り添うようにして立ち、私の背を軽く支えてくれるのを感じた。その気遣いエスコート感……さすが。


「……最終局は完走者無しということで終わりました。『女流謳将おうしょう』はしばらくの間、空位となることとなります」


 そうなの。いや知らんけど。それよりも何かやけにかしこまった物言いだけど、ハツマ……大丈夫?


「それでもこの戦いのMVPは、水窪ミズクボ 若草ワカクサ様……あなたの他にいないということに、全元老が満場で推しました」


 MVP。あんなしっちゃかめっちゃかで、本当に良かったの? それに全元老って……ソバージュカチューシャ女とか、ハイテンションマハラジャ女とかもおったよね……あいつらも私のことを?


 怪訝そうな表情を隠そうともしない私に、ハツマは少し照れたように微笑む。うん、その破壊力高そうな表情、やっぱりあんたはそれじゃないと。とか漫然と思っていた瞬間だった。


「……よって特別賞としまして、『2億円』を進呈いたしますわっ」


 引き込まれる笑顔でそうさらっとのたまったハツマだけど、「2億」て。……「2億」よ? がばい金額よ?


「え? ……いや、え?」


 怪訝感は顔から抜け落ちないけど。私の背後では、丸男とアオナギの慟哭にも似た歓喜の声が沸き起こるけど。


 さらりとした感じで、私にもたらされた福音。でもそれを素直には喜べない自分がいるのに気付いている自分がいるわけで。


「……」


 固まってしまった私を、喜びの余りに、とか思ったんでしょうハツマが、大佐から受け取った目録みたいなものを手に握らせてくるけど。


 ……ちょっと待った。


「あー、ウェイトウェイト。これは無いわ。これは受け取れない」


 私がそう口を開いた瞬間、物凄い勢いの腐ったブーイングが背後で巻き起こるけど。それはノールックの後ろ回し蹴りにて沈黙させる。


「どうしてですの? ……若草お姉さまに、感謝と祝福をお伝えしたくて、ですのに……」


 ハツマは今にも泣きだしそうで、滅裂な言葉を紡ぎ出してくるけれど、その涙も破壊力高そうだ。それよりお姉さまはやめなはい。


「何つーか、これ貰ったら、私の人生がすこんと終わってしまうような気がしてきたの。やっすい、ちっぽけな人生が」


 「人生」という気恥ずかしい言葉を口にした瞬間、図らずも微かな赤面を感じるけれど、でも言葉は止まらない。


「『人生を買い直す、買い戻す』とか言われて、私もそんな気でこのダメを戦い抜いてきたわけなんだけど……でもね、そんなやっすい、ちっぽけな人生でもね……2億ぽっちじゃ買えやしないんだわ。それに気が付いた」


 そう。私の人生は私だけのもの。いくらカネがあってもダメ。私の中心に、私がいなくっちゃあ、ね。


「……それより打ち上げにでも行きましょーよ。ぐんわぐんわになるまで今夜は飲みたい気分」


 両腕を天に向けて思い切り伸ばしながら、私はそう周りの面々に持ちかける。ここ2週間、禁欲的健康的生活をしていたから、その反動たるや、えらいことになりそうだけれど。


 立ち直ったアオナギと丸男の小汚い歓声と、うつむいて涙をこぼしながらも微笑むハツマと、抱きついてくるかざみと、相変わらず感情/表情の乏しい大佐とカワミナミ君と。


 いろいろなものを知覚しながら、私はいまもこの世界に立っている。


 それが何より得がたいことなんだってことを、今回の諸々で教えられた、そんな感じ。


 ああーいや、それは言い過ぎか!! 綺麗にまとめようとするクセがまたも出てしまったけど。でも、いいじゃない、それは。


 続いていく、これからも。何度も細かく綺麗に、思い出をパッケージしながら、私は私の道をのんべんだらりと歩いていくことに、いま決めた。


 決めたのだから。


「……あれ?」


 そんな思いと共に、まずは着替えて夜の街に繰り出そうと踏み出そうとした、その一歩目だったのだけれど、それが足裏から膝くらいまで、床にずぶりと呑み込まれていくように感じた。


「え?」


 身体のバランスがうまく取れない。視界だけはやけにクリアだけれど、その角度はどんどん傾きを増してきていた。自分の呼吸が、吸うのも吐くのも冷たく感じる。脈動が、心臓が鼓膜に接近してんじゃないのくらいに、はっきりと聴こえる。


 このタイミングで、来たか。「選別」。でもこんなヤバかったっけ。私の異変を感じ取ったカワミナミ君の顔が迫るけど、何か喋ってるんだろうけど、それは聞こえない。


 冷たい床に自分の右頬が付いたのを最後に、私の意識はそこで途絶



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