#157:偏執狂かっ(あるいは、回想の体の/狡猾なる尺稼ぎ)
レフェリーも不在の中、リングの中には私と島大佐の二人、ただ二人だけが無言で対峙している。辺りは静けさが覆っている。
星々が瞬いたり、流れたりしている宇宙が、頭上には広がっている。この非現実感の中で、遂に最終決戦(仮)は始まろうとしているのだけれど。
最後がこれっていうのも、まあ何かいいかもね。既視感ありまくりのこの「対局」の場。思えば今日いちにちで色々あった。
予選……
第1ピリオド:
VS 崎本カリヤ……私のこのダメ界への第一歩は、洗礼の先制のくそDEPで速攻やられたっけ。
第2ピリオド:
VS 尾藤谷 仙子……これまた立ち合いの激突っ張り喰らって開幕のされたのよね……
第3ピリオド:
VS 車名井 堕天美……初見の「オフェンスアドバンテージ」でいいようにやられたっけ。って、
……あれ? いい感じに回想に浸って、集中した状態で最終戦に臨もうかと思ったのに、何か負けの屈辱ばっかり思い出して、呼吸が荒く定まんなくなってきちゃった。まずいまずい。気を取り直して。そう言えばいいことあったあった。
……ここであの「少年くん」に出会ったのよね……最高の差し入れで、ここから正に流れが変わったとしか言いようがない。本当にあの……何ていったか忘れたけど、あの少年的な少年には感謝しきりだわ。
第4ピリオド:
VS土師潟 静琉……完全復活した私が、身体で覚えた「オフェンスアドバンテージ」にて完勝。うんうん、ようやく静かなる気合いに満ちてきたぁ。
第5ピリオド:
VS覇武 柚子蘭……死闘だった。シャットアウト寸前の私が、何とか意識を取り戻せたのは、何でだったんだろう。他の「世代人格」が請け負ってくれたとでもいうのかしら。
決定戦:
VS カリヤ&ダテミ……まあこれは敢えて語るべきところも無かったよね……順当。正にの最終奥義炸裂での順当勝ち。
……まあ何やかんやの掟破り感満載の反則級のゴリ押しで、私は何とか決勝に上がれたわけだけど。
決勝第一戦……
第一ピリオド:
VS知鍬 環奈……「世代人格召喚技」こと「リボルビック=チャネラー」初出の対局。何とかうまくいって良かったと、今でこそそう思う。
第二ピリオド:
VS印南 楓……あいつ一等よく分かんないやつだったよね……敗戦後は驚き屋みたいなポジションに居座るかと思いきや、速攻でかき消えていった……今頃何してるんだろう。いや、まったく興味は無いんだけれど。
第三ピリオド:
VS里無 仁実……メンヘラ一騎打ちは、「12歳」の私の荒唐無稽かつ、反則ギリギリのDEPで何とか勝ちを拾えた。よくよく考えると、かなり危険な橋だったって、今更ながらにそう思う。
……するすると紡がれていく過去の記憶たちは、思いがけない鮮烈さをもって私に迫ってくるようで。いやほんとに色々なことあったな!
私は静かに沸き起こる気合いを押し留める体で、まだまだ浸れそうな余地のある回想へと身を委ねる。