#154:半狂乱かっ(あるいは、星の高輪/D列車で移行!)
1秒で28万円がとこ文字通り飛んでいくという、あっるぇ~、人生へと貸し付けていたものを返済させる前に、こっちがパンクしちゃうわのよぉ~といったような、前言を撤回せしめられてしまうような状況に陥りつつも。
肚ぁもう決めてんだ! とばかりに、カッ飛びまくりもまくりまくっている。
周りを流れる星々は既に数多の線のように、私の周囲を籠のように覆っている感じ。速度感は次第に慣れてきているようで、割と平常心で私はこの現実離れした空間世界で飛翔を続けている。空気抵抗もGも感じないから非常に安定している。よし。鼻から大きく息を吸い込みつつ、前方へと視界をロックする。
前を行く島大佐はせいぜい200km/時ってとこみたいだ。時速330kmの速度を出している私との距離は、30秒もしない内に詰まって来ていた。ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、振り返った大佐の目と目が合う。
驚愕・恐怖、そんなリアクションを予期していたのだけれど、あにはからんや、その軍帽金髪美少女の小作りな顔に浮かんでいたのは、待ち構えていたような余裕の微笑なのであった。
嫌な予感はしてる。まあ今回の諸々において、それがしなかった時は皆無だったんだけど、おそらくこの最後の戦いは、今まで以上の、最大のブッ込みが為されるんじゃあないかといった、漠然ながらも必然と思わせるような、そんな悪寒めいたものを脊髄辺りで感知はしている。
だが、行く。決めたのよぉ、もう私は。決断。軽やかに鮮やかに。私の人生は、私が捌いていく。大佐はまた前方へと向き直ると、加速を始めたようだ。あと少しで並びかけようとしていた私との距離が、縮まらなくなっている。
これまで相対してみても、その正体は全く分からなかった。塗魚もそうだったけれど、姿かたちってあれほど変われるもんなのかよ。それにこちとらは過去を封印したいっていう無意識の働きもあるもんだから、尚更「思い出す」っていうことは不可能に近い状態だった。
でも今回はそれに揺さぶられるわけにはいかない。さっきのかざみから受けた衝撃の反動で、いろいろな過去がぽこぽこ泡立つ入浴剤のように、私の意識の水面に浮かび上がってきてたけど。
もはや過去に埋めて来た人物たちは、すべて私が「敵」……敵と見なした人間たちしかいないような気がしていた。まあ際限なく周りに敵を作っていくのが私の度し難いスタイルではあったのだけれど。
……これまでの傾向から鑑みるに、この大佐も……おそらくは私の過去の関係者であることは薄々読めて来てる。ただ、それがどいつなのかはまだはっきりとしていないわけで。
……やっぱり、父親関連だろうか。それか、前の男関連か。直接の繋がりは無いけれど、それだけに深いもんがあるとか、そんな感じかも知れない。
オッケーオッケー、親父の情婦だろうが、あいつの本命だろうが、全部受け止めてやんよぉ。その上で、その上でだ。
……裁くのは、私のDEPだぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁあ!!