#152:熱暴走かっ(あるいは、テイクミー/すーぱーそにっく/子々孫々)
<お、おおうっ!! 戻ってきたッ!! ようやく現世に舞い戻れた感じがするぜぇぁッ!! どうしてたんだオレは? オレの実況を聞いてくれぇぇぇぇぇぇっ!!>
ほんとに今の今まで何やってたの? との疑問感がとこしえ気味になっていた電飾実況、ダイバルの、気を失っててまた戻ってきたみたいな、あればあったで気に障るどでかい声が響き渡る。
まあ実況すら感知できないほどに、私らの世界に入り込んでいたから、あってもなくても大して変わりは無かっただろうけど。そういうことにしておこう。
<みんなも忘れがちだった、現況の把握だッ!! 一位:島、1億とんで200万!! 二位:水窪は2億2300万だっ!! 『第二チェックポイント』を通過して、島が23km地点を突破、追う水窪との差は約1km弱はあるぞ!! これはまだ詰まる距離か? 最終のデッドヒートに、否応目が離せないぜッ!!>
『第二CP』を一位通過すると7000万のプラス。これが島大佐に加算されたわけだけど、やっぱでかいよね……カネ多寡はまだ1億2000万がとこの大差あるけど、ある程度あれば不利になることは無さそうに思われる。
「飛ぶ」……体を推進させるために必要な「燃料」は、「時速60kmで¥10,000/秒」の設定。「時速を10km上乗せするごとにプラス¥10,000」とも言っていたから、例えば「時速100km」でカッ飛ぶとなったら「¥50,000/秒」。
改めてとんでもねー額だけど、残り20kmと仮定した場合、時速100kmで飛ぶと所要時間は12分。金額に直すと3600万。私および島大佐、共に今の手持ちで支払える額だ。
つまりは互角。というか距離差をつけられている私が不利かもだ。「時速100km以上」をかましていくしかないが……相手にもそれをやられると、いつまで経っても追いつき追い抜くことは出来ない。どうすりゃいいのよ。
先ほどまでの幻想心象深層世界みたいな場からは一転、再びの「闘いの場」的なところへと戻って来ていた。と同時にまたもや浮遊する感じを全身に覚える。「低重力」から「無重力」へ。おそらくはそういう事だろう。身体がもう重力の感じみたいなのを認知している。あくまでバーチャルでの、ってことだけど。
私は肚を決めて、限界までアクセルを押し込むことに決めた。周りの風景は「宇宙空間」を模したものへと再度、変貌を遂げている。暗黒の中に点在する星々はかなりの勢いでこちらに迫ってきては背後に流れ飛んでいくけれど、大佐の姿はまだ視認できない。
だけど。だけどよ。追いつけなくてあっさり負けてしまうかもだけれど、最善を尽くすことに、私はもう躊躇なんかしないことに決めているのよ。
選択だ。全ては選択。自分で選び取ることに意義が……人生の意味があるってもんよ。
それにここは仮想現実。どんな「現実離れ」が起きるか、起こせるか、は、やってみなくちゃあ、判らないじゃない? ここ、空気抵抗は演算されていないみたいだし。
だったら超高速の先の先まで……音速(=時速1224km)の境界まで、加速してやるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!