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(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2  作者: gaction9969
萬國最驚天終章:ダメの海にダメの帆をかけたダメ女
145/176

#145:地動説かっ(あるいは、花は散れども/結実バンクシー)


 重力が少しでもあると、また、「空間」の認識みたいなものが変わってくるわ。眼下に自分の見慣れた建造物とかが立ち並んでいたりすると、なおさら。


 割とそんな余裕かましたメンタルで、私の身体は回転しつつ上昇している。近づく塗魚トザカナの姿。こいつとの決着は……


「!!」


 「格闘」でつけることとした。相手の下方、膝下くらいの位置に達した瞬間、私は時計回りの勢いを足して、左拳を上空目掛けて突き出していく。


 その挨拶代わりの左のボディブローを軽く上体を曲げて交わすと、その銀髪蚊取りボブ少女は、了解、みたいな笑みを深くして、こちらも牽制気味の右トーを私の顔面向けて放ってきた。


「……」


 空中で前転するように体を縮こませつつ、くるくると回って塗魚と少し距離を取る私。低重力バトルは、通常の縦横もそうだけど、「高さ軸」も重要なファクターだ。


 と、そんな「格闘」サイドへと私の思考はシフトしていきつつあるわけだけど、塗魚の後方……ゴールへと続くコースの先の方には、もうひとりの対局者、島大佐の赤いプロテクターを付けた背中があって、それが緩やかな上下動を繰り返しながら、どんどん小さくなっていっているのが見えるわけで、塗魚コイツとのサシだけに注力しているわけにもいかない状況だ。


 大佐を追いつつ、塗魚も沈める。


 はっきり難度は高いのは承知の上。でも先ほどまでは動かすのも億劫だった体も、奇妙な熱を持って、無駄な力は抜けて痛みも無く動いてくれている。


 やれるところまでやるし、やれなくなったとしても、そこはそこでやり抜く。そう決めた。


 前宙を決めた私の眼下には、10階建てくらいのシックな黒と黄土色を基調としたマンション。どこなんだろうここは。どこを模しているのだろう? いや、現存する所では、きっと無いんだろう。


 ありそうで多分ないだろ、みたいな、小学生が無茶苦茶やって作ったジオラマのような街の風景。でもそれは何故だか説明不能の生命力みたいなパワーに満ち満ちているように感じられて。


 きっとこれはハツマが描いた夢の街。海へと注ぐ結構な幅の河沿いには、ケーキ屋とか、ブティックっぽい店や、本屋、おもちゃ屋、魚屋、八百屋……様々な「○○屋さん」が立ち並んでいるのが見える。街の大部分を占める巨大な公園は、テーマパークのように観覧車やジェットコースターもあって、人が、あるいはネコやパンダの着ぐるみみたいな「住人」たちが沢山楽しげにしている。


 見ていて飽きなかったけど、ハツマの原風景を楽しむのはそれくらいにしといた。マンションの壁に両足をきっちり付けて膝を折り曲げると、大佐の向かっている先……「進行方向」へと、勢いをつけて蹴り飛んでいく。背泳ぎのスタートのように。


「……」


 相対する塗魚も、私の意思を見越したのか、同じく建物の屋上を蹴って、そちらの方向へ向けて、でかい跳躍をかましている。


 現実感がうっすら無い、「飛ぶ夢」を見ている時のような感覚。でも、


 現実からちょっと剥離したようなこの世界で、私は自然に笑顔になってしまっていくのを、抑え切れずにいる。これも、……魂の浄化なのだろうか。わかんないし、わかんなくてもいいのだろうけど。


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