#138:金輪際かっ(あるいは、蠕動せよ…っ!母なる大地)
宇宙空間らしきところを結構な速度で飛翔する私たちだけど、ルートのようなコースのようなものはあるようだ。
装着しているゴーグル? バイザー? に映る情報が、目指すべき進行方向と、チューブ状のトンネルのような「道」が存在していることを示してきている。薄い蛍光イエローにうっすら明滅する「道」……直径10mくらいだろうか。4人並んだとしても余裕はある。でもここ外れたらどうなるんだろう……
詮無い思考は、<ハツマ:相殺着手>との表示に遮られた。自分のDEP撃ち放っちゃってたから気が抜けてたけど、初っ端の「着手」はまだ終わったわけじゃあ無かった。
前方を注視しながら、その「相殺」を待っていた私だったが、ふ、と気配を感じて下を向くと、そこには美麗な微笑を湛えたハツマが、向かい合わせになるようなかたちで、両腕を広げていたわけで。こええよ。無気配で至近距離まで寄ってくんのやめぇぇぇっ!!
「『……わたしは、ダメ人間が好き』」
そして私の両肩に手をかけて、そんな邪気の無い笑顔でのたまってくるけど。え、どうしちゃったの?
「『……ダメをダメとして認めて、ダメを愛する人が好き』」
歌うような言葉は、誰に向けて放たれているのだろう。でもその奥底から紡ぎ出されたような音の連なりが、鼓膜を通して私の中の何かに響いたことは確かだった。
「……!!」
そのまま、私の首元に抱きついてくるハツマ。甘い、花のような芳香が鼻腔に入り込んでくる。引き寄せられてしまいそうだ、身体も、意識も。
ふっと遠ざかる意識。走馬燈じゃないけど、いろいろなことが頭ん中をぐるりと巡り始めていく。
……今日いちにちで、私は、色々な私に向き合ってきた。6歳、12歳、18歳、24歳……過去の「世代人格」たち。でもそれは自分が切り捨てて片隅に追いやっていた、過去の記憶たちに他ならなかった。
6年ごとにリセット。そしてリスタート。そんな風に私は私の人生を乗り切ってきた。いや乗り継いできたのかも知れない。
そして「終着」。風すさぶあの屋上の突端で、私は何を考えていたんだっけ。
……疲れ果てていた。それは確かだけれど、それで投げ出してしまうのは間違っているかもね。ダメをダメとして認めて、ダメを愛す……それは自分を自分として認めて、自分を愛することと、同義なのかもしれない。
戻ってくる意識。戻ってきても周りは星々が廻る異空間ではあるけど。そして眼前には泣きそうな笑顔のハツマがいるのだけれど。
何か、分かってきた。何かが、漲ってきていた。この暗闇を突っ切った先に、何かしらの答えがあるのなら。
<ハツマ選手の評点『88,781pt』……よって『8,948ボルティック』が水窪選手へっ!!>
しかして唐突に為された判決と、それに伴う結構な電撃にハギィィィッとなりつつ、そして身体が接しているハツマにもその衝撃は伝導しているようで、多分同じような顔を突き合わせての、しばしの悶絶状態。いや、何やってんだか。