#133:大袈裟かっ(あるいは、サターニック/エンデュミ/某君)
<ま、簡単に説明すると、左右の手に持ったコントローラで操縦すると。自分の、身体を>
随分ざっくりになった実況の説明だが、その間にも中空にうつぶせ状態で吊られたままの私ら4人には、新たな「装備」が付け加えられていく。
まずは実況が言った通りの「コントローラ」。操縦桿の、先っぽのグリップ部分だけ、みたいな形状で、親指が乗る部分に赤い色のボタンがあって、握りの部分にも4つ黄色い、指の形状に合わせたようなボタンが見て取れた。それを両手に握らされると、バンドのようなもので手の甲に固定される。握らなくても手から落ちないようにだろう。何だろう、何かレトロ感があるね、でも嫌いじゃないのよ?
と、その感触を色々と確かめていたら、いきなり視界が暗くなった。何? と一瞬のけぞり驚いてしまうけれど、ゴーグル的な奴だ。それを前触れもなく黒服の野郎が被せてきやがった。VRとか何とか言ってたもんね……でもこの装着感といい遮光感といい、ウィンタースポーツをする際に身に着ける物に相当似ているんだけど……これは無いわ……
とんだレトロフューチャー感に戸惑いを隠せない私の耳にも、これまた聴覚検査をする時のような、無骨でごついヘッドホンが装着されていった。同じ格好をさせられている他の真顔の対局者面々を見渡すものの、何だろう、DJ KOOが一瞬くらいやっていた恰好に酷似しているか、それとも全くの思い違いか、それはどうとも私の中では判別できなかった。ただひとつ言えることは、これから始まる最終戦が、8bitレベルの質感で展開されないことを祈る、それだけだ。
と傍からはどうでもいいような、いや当事者としてもまあ、どうでもはよくないが、どうしようもないからどうとでもなれやい、みたいな事を考えていたら、いきなり宇宙空間に放り出されていた。
え?
周りの諸々がふ、と消えて、奥行きのある黒い空間が、「眼下」だけでなく、首を回して確認すると紛れもなく全方位に展開しているわけで。
おそろしく透明度の高い水底を、光の届かないくらいに深い所から見渡しているような感覚……無重力の体験の無い私には、そんな表現がやっとのことだけれど。
装置のひと昔前感とは裏腹に、視覚を完全に乗っ取らんばかりの静かなる迫力で来られている……
星々が瞬いていたり、身体を包むかのように耳鳴りのような音がかすかに響いていたりするのは演出としても、逆にそれらが、私のイメージしていた宇宙的なものを却って際立たせていたり。
要するにどっぷりとこの「世界」にと取り込まれたような感じだ。いったいいくらかかっているのかは謎だけど、こりゃ凄い。いつの間にか横並びに整列していた他の対局者と共に、私は早くも没入しかけている。




