#119:紫檀かっ(あるいは、紡爆/鮮度/アクチュレーター)
ぴぽん、と「DEP成立」のチャイムが鳴り、私のアガリが確定されるやいなや、
「『三連一色』……『2000』は『2300』」
キメっぽくそんなアガリ役を呟き気味に言い放った私だけど、まあ安手は安手。でも大事な大事な「過程」ではあるわけで。
ちなみに「本場」は親でも親以外でも、アガればアガるほど場に積まれていく仕様だそうで、「300」も塵積で、後半になればなるほどバカに出来なくなっていくことが分かる。いや事前に説明はするべきだろうとは思うが。
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東三局:二本場
西:シマ :赤:20200
北:トザカナ :黒:16000
東:ミズクボ :緑: 4400
南:シギ :紫: 9700 >
兎にも角にも、シギを自分と同じ4桁代に引きずり下ろし、そして一撃死からは少し遠のいた私だが、それは些末事。過程に過ぎない。
「……」
親番を引き寄せもしたけど、それは他家ツモアガリ時のリスクも増すということだ。でも気は抜けないけど、立ち止まるわけにもいかない。
割とフラットな精神状態に落ち着いた私は、ツモ山に手を伸ばすと、引き絞るように、ぐいと牌を持ってくる。
【キャバリアキングチャールズスパニエル】(赤:2)
「キャバリア」でも通ずるとは思うけどの、正式名称だ。そして胸焼けを催すほどに、そして逆に清々しいほどに、「犬種牌」……しかも私は結構この鼻ぺちゃは犬の中では好きな部類……部類……部類……
そんな滅裂思考が大脳を満たしていくけど、今の私は脊髄メインの直感シフトだ。目は「赤:2」の方へと向けられている。
絶好のヒキだ。おそらく運営は私がこれら「犬牌」を使いこなせないと見ての送り込みなのだろうが、そいつぁ甘々よ。
どこで私がアガるかまでは予測できないと思うから、ピンポイントでの積み込みは不可能と思われる。ならば……「犬種牌」は、今ツモられている塗魚の山にパンパンに詰め込まれていると見て、間違いない。
私のアガリの制限、および手牌を腐らせる、運営側のイカサマじみた仕込みだとは思うけど、それって自分らの首も絞めてるよね。明らかに長丁場になりつつあるもの。そしてそっちがイカサマ上等で来るっていうんなら。
……こっちも、しこたまサマるまでだっつうの。
「正統」「造反」も今は休戦状態なのか? 先ほどまでの対局・対戦ではえらいやり合ってた両陣営だけど、今は両巨頭―大佐アンド塗魚は、点数のやり取りも無く、ただただ場を回すためだけに座っているかのように思われる。
「優勝」が今この卓に座る「4人」に絞られている状況だ。そろそろやばいと感じて来ている。私がこれ以上勝ち進むことを。賞金……2億がとこの大金が、「部外者」の手に渡ってしまう可能性が高まってきたから。
だからここで私を敗退させるつもりと見た。邪魔者がいなくなった時点で、「正統」「造反」のケリをつけようと、そんな事でも考えているのだろう。利害はとりあえずは一致しているってわけだ。
甘いな。だからズルズルと場が流れていっている。紛れなく一撃で私をトバそうとか考えているのだろうけど。
……はっきりそれは傲慢なる油断ってことを、思い知らせてやるよ。
私は相変わらず「犬牌」を打ち出すだけで、全く仕掛けてこない他3名を見やって、そう決意を固める。「6分の1」のギャンブル、その渡り方を見せてやる。