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(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2  作者: gaction9969
最終章:ダメ息の花だけ束ねた風景
102/176

#102:恍惚かっ(あるいは、ブディズム/パワオブ/コロンブス)


 静寂が覆っている。最初は、私らの周りだけ、集中してて音入ってないのかな、みたいに思っていたけど、錯覚ではなく、確かに会場中が静まりかえっていた。


 私とセンコ以外の3名の対局者たちも、お互いに距離を取りながらだけれど、私らの方に注目して、素立ちの状態だ。結構余裕あんのね。ていうかシギ、あんたも意識を取り戻しているとか。仕留めそこなった感ハンパないけど。


 いやいや、目の前に集中だ。


 残り1300万の残金のうち、900万をはたいて、「トリプル」30秒を購入した私は、2mには満たないくらいの距離で相対しているセンコと同じように、腰を割って、片手を足場につけた姿勢を取る。


 正に相撲の立ち会い。向こうは幕内級の恵まれた体躯でサマになってることこの上ない反面、こちとらはまあ素人感ただならないわけだけれど。


 センコの境遇をDEPを通して聞いたからには、そして最後の相手としてご指名されたのならば、やっぱりちゃんと向き合わなきゃ駄目だよね……


 だけど私も、追い込まれているからこそのマキシマムをブッ込むことの軌道修正はまったくもって無いわけで。


 立ち合い……立ち合いで八割が決まるとか、相撲では言うよね……頭から突っ込むのは論外だし、かと言って下手に変化でもしようものなら、可動域の広い張り手が来ると思って間違いない。予選の時にも食らったから分かるけど、顎より上に当たったら、一撃で意識をシャットしてくる代物だ。その時点で決着となってしまう。


 ならば真っ向から胸を合わせに踏み出すか。センコの懐に入ったら入ったで、あっさり投げ飛ばされてしまいそうだけれど。でも握力に難があるのなら、そして自分だけまわしを締めているというわけの分からないハンデを負った状態なら。


 ……攻め込む隙はあるのかも知れない。


 しかしその「懐に入る」ということ自体が既にE難度と思われる。当然張り手は来るだろうし、向こうだって変化してくるだろう。でも。


 たぶんセンコは真っすぐにぶちかましに来るような気がしていた。「正々堂々」、何度もセンコの口から出たその潔い言葉を、頭から信じているわけではない。それでも、センコなら、ここ一番で自分の信念に反するようなことはしてこないだろうという確信も湧いてきている。


 どのみち、私の方もそんな余裕があるわけじゃあない。


 真正面からいってやろうじゃないの。それで立ち合い負けならばそれまで。私も潔く負けを認めるだけだ。


 大きく深呼吸をしてみる。スポットライトが空中の埃に当たって光を反射しているってことは分かっていたけど、それでも、その澄んで重力から解放されたような光の煌きの動きに、しばし目を奪われている私がいる。


 世界は美しい。ゴミとクソとダメとに彩られてさえ、その美しさは揺るぎないものであることを、私はことこの場に至って、初めて認識したりしている。



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