#101:再編かっ(あるいは、べらぼうなほど、マジェスティック)
場は煮詰まり始めてきていた。ふい、と目に入ってきた電光掲示板の表示は、対局者が既に5名にまで絞られていることを告げている。
え、そんなに急展開があったってわけ。よくよく見たら、足場のいくつかも既に「落下」してたわけでええーと、いま私がいる所って確か「六」……五芒星の外側から落ちていくことになるんだから、次「落下」すんのここだわ。
「……」
慌てて安全地帯である右横の「一」の領域に、にじり寄っていく。
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一:シマ :赤:21000
八:センコ :橙: 7300
四:トザカナ :黒:16300
六:シギ :紫: 4300
七:ミズクボ :緑: 1300
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「正統元老」が、島大佐といま正に対峙しているセンコの二人。「造反元老」が塗魚と元年ソバ女:シギのこちらも二人と。もったいぶって登場してきた割には、結局残るのはこの面子かよ。いや、そんな詮無いつっこみをかましている場合じゃない。
残り1300万の私は、軽く追い込まれている状態だ。「トリプル」使ったら動けるのはあと「30秒」ってことになる。先ほどからじっと立ち合い姿勢のまま、私の眼前で構えているセンコとの決着は、それでつけるしかないわけなのだけれど。
その30秒でセンコを沈めることが出来なければ、私の負けだ。何も得られず、さらに300万の供託金を失って、この場を去るしかない。でも。
勝つか負けるか、その二択しかないようにも思われるんだけど、その後は……その後のことは分からないけど、何となく、私は私のこれからの人生に真っ当に対峙しようか、なんて柄にも無いことを思い浮かべている。
自分の全てに折り合いがついた、そんな感じ。またも臨戦状態の相手から目線を切ってしまう私だけど、コンクリートに覆われた天蓋を、スポットライトの眩しさに耐えながら見上げる。
―存分に。若草。無理やり「わたくし」のメンタルになってよく分かったでしょう?
見上げた先には、やはり黄金色に輝く、姐やんのビジョンが。
過去の私が、夢見て憧れた「私」。今の私が、到底たどり着けないと思った「私」。でも。
―わたくしはエセ。そしてあなたは真の若草ですのよ。言いたいことはそれだけですわぁ。
どこか、優しく笑っているかのような物言いに、借り物のようだったこの身体に、空気のような息吹のような何かが満ちていくのを感じている。
人の心とか人格とかは、所詮、電気信号か、化学物質の反応の産物なのかも知れない。でもそれが私というものなら。私が感知する私なのだとしたら。
私が思うままにぶん回してやろうじゃあないの。分子の塊に過ぎない、この身体を。
体全体で、外界を感知して、内面全体で思考している、そんな感覚。
捕らわれないし、囚われない。
私はそうするのが当然のように、ただただ体勢を低く持っていく。