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(Nooooo!!)ダメ×人×間×コン×テス×ト×V★2  作者: gaction9969
最終章:ダメ息の花だけ束ねた風景
100/176

#100:百事かっ(あるいは、のによるのための大祭典)


 DEPアンド打撃。


 センコとのタイマンは、図らずもそんな形式に収束し始めていったわけで。


 評価とかは、どうでもよかった。ただ、私らはただ、自分の内に溜まった、煤のような、粘液のような、澱のような、出どころを求めて体内をさまよっているだけだったそれらを、逐一吐き出していくだけだった。


 ―6歳の時に初めて倒れたのが給食の時間で、白目を剥きながら、お代わりまでしていた牛乳を滝のように戻したことから、退院後のあだ名が「エクトプラズム子」略して「エプ子」になったこと。


 ―14年間打ち込んだ柔道だったが、原因不明の両手の神経症によって握力が低下し、選手権大会前に選手としての道を断念せざるを得なかったこと。


「!!」


 センコの突っ張り……出が速いし、上体をボクサーのように揺らしてるから軌道が初発から読めない。さらに腰を深く割り落としてもいるから、私の、上は顔面から、下は膝までくらい射程が届く勢いだ。ローキックじゃないんだから。


 ―12歳で中学入試の前日に高熱が出た時は、両親にも隠して会場までは行ったものの、一教科目で盛大な下痢をぶっ放してしまい、教室を阿鼻叫喚の地獄絵図に陥れた。その時の親友もその場にいて、ふたりとも志望校に落ちて同じ中学に通うことになったが、3年間ひとことも口を聞いてくれなかったこと。


 ―活路を見出そうとしたボクシングでも、やはり握力がネックとなって、一年もたたずに両拳・両手首を痛めてしまい、早々に引退を余儀なくされたこと。


「……!!」


 組み合いに持ち込まれたらはっきり負けだとは思っていたが、センコの放つDEPを聞いていくと、掴み技は無いような気がしてきた。思い切って、間合いを詰めてみる。正面には立たず、相手の左側面へとステップを踏む。


 ―暗黒の中高時代を抜けて、18歳での「選別」も乗り越えた反動から、突拍子もない、生まれ変わった自分になってやろうと、「大学外人デビュー」を仕掛けたが、完全に外したのち、インディアカ部に打ち込む、蜜の乏しい学生生活で締めくくったこと。


 ―一縷の望みをかけた女子相撲だったが、頼りの突っ張りは禁止事項であって、組み技に制限のある自分では、体重別の競技でまともに取り組みを為すことさえ、到底出来なかったこと。


「!!……」


 絶妙のタイミングと位置から放った右ローだったが、私の脚より太いんじゃね? と思わせるほどの隆々とした左腕できっちりいなされてしまう。防御範囲も広いし隙が無い。


 ―24からはせめて仕事をバリバリこなせる女になろうと決意し、でも何故か来た最盛のモテ期に振り回され、挙句、籍を入れようとしていた男には別の女がいることが判明して別れる羽目となり、プロジェクトでも下手こいて、のっぴきならない事態に今もいること。


 ―結局、アンダーグラウンドで行われる見せ物のような「女相撲」に身をやつし、賭けの対象となることでしか、自分の望む「舞台」には上がれないこと。それを甘んじて受け入れている自分に、何とも言い難いものをいつも抱えていること。


 DEPでの優劣は、相殺されているのか、大した差はついていないようだ。時折、脇腹とか鳩尾あたりに低周波マッサージ機みたいな収縮感があるけど。それより、


「……やはり、おんしは」


 センコは、のっぴきならない駆け引きの中でも、何故か吹っ切れたような笑顔のままだった。いや、おそらくは私も同じような表情を呈していそうだけど。


「……わっしの最後の相手にふさわしい、でごわす」


 そう高らかな声で言い放つと、股を割り、両拳を地につける巨体。完全な立ち合い蹲踞に移行。多分、最後の攻防になるだろう。そんな緊迫感の中、


 妙に清々しい気分となっている自分を感じている。「魂の浄化の祭典」。アオナギがいつか言っていたことを、ここにきて急に思い出してみたりしている。



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