パワーレベリング週間。2
「ゼェゼェ…。疲れた…。」
なんとか5分を耐え凌ぎ、無敵時間が解除後に普通に戦って撃破することが出来た。
スタート時が鬼畜なだけで、後はたいして強くもなかったのが救いだ。
「では、次に参りましょう。」
「うぅ…。もっとマシなとこ無いの?」
「まぁまぁ。愚痴言いたくなるのはわかりますが、最終的には報酬とかが城よりいいですよ?」
「くそぅ、手数料ガッポリ頂いてやるからな!」
「それ以上、どこを改良するんですか…。」
「どれだけ強くても、損にはならないからな。
それに、私じゃなく後輩のために使うからな。」
一彦君と会話しつつ、気を取り直して階段を再び上っていく。
最上段を踏みしめた瞬間、私の全身に縄が掛けられて十字架に磔の形にされた。
「ぜってー、イジメだこれ…。」
続いて現れたのは、大天使イェグディエル。
彼?は最初に踏み入れたプレイヤーを捕らえて、自分のダメージをリンクさせるのだそうだ。
食らったダメージの数%が私に反映されてしまう。
ダメージは、捕らえられた人物の防御力等によって引き下げることが可能だが…。
とはいえ、相手の方がHPは圧倒的に多いから常に回復していかないといけない。
まぁ、最初のバラキエルのようにアクティブではないのがまだ救いだな…。
「準備完了しました!騎龍さん、行きますよ!」
「いつでも来いや!ドラグーン・オブ・インビンシブル!」
スキルを発動した瞬間、皆が一斉攻撃を始める。
最大火力をこの5秒に集中しているため、イェグディエルのHPがみるみる減っていく。
しかし、やはり5秒では落としきれない。
「3!2!1!アルティメット・ディフェンス!」
さらに防御力が爆大に上がるスキルを発動する。
これによって、リンクで私が受けるダメージは最低にまで落とすことができる。
アルティメット・ディフェンスの効果時間をヒールして貰いつつ耐えきる。
「よし、次のスキルいくからヒールは待機してて!」
ジリジリと減っていく自分のHPを見つめながら、死ぬギリギリで次のスキルを発動する。
「要塞!」
HPの最大値が上がり、最大まで回復する。
プラス、防御力も増大するスキルだ。
これらのスキルは、移動不可のために使用する場面が限られている。
こういう場合でもない限り、あまり使うことがないスキルだ。
「まだまだ!プロテクター・オブ・フェイス!」
フォートレスの効果が切れるのに合わせて、パーティー全員の防御上昇する代わりに、パーティーメンバーが受けるダメージを肩代わりするスキルを発動する。
肩代わりするとはいえパーティーメンバーがダメージを受けなければ、ただの防御上昇のスキルとして使える。
そうして様々なスキルを駆使して、数分耐えているが…。
まだまだ倒すまでには至らない。
「流石にスキルが尽きるな…。誰かヘルプお願い!」
強力なスキルほど、再使用時間は長く設定されている。
流石に長時間発動しっぱなしではいられない…。
「では、拙者が続いて発動するでござる。」
全身黒ずくめの、私は忍者です!と自己主張の激しい者が名乗りを上げてくれた。
「オッケー、カウントダウンいくよ。3・2・1!」
「身代わりの術!」
目の前に丸太が出現し、すぐさま太刀筋が1本刻まれ、ポトンと地面へと転がった。
「えっと…。なに?今のスキル…。」
聞いている間にも、私のHPばガリガリと削られていく。
「この術はなんと!1撃のみどんなダメージでも丸太が身代わりになってくれるというスキルでござる!」
「意味ねーじゃん!バカスカ攻撃食らってるのに、1撃だけとか無意味だわ!」
「む…。まことかたじけない…。拙者が使えるのは後は空蝉の術くらいしか…。」
「どうせ、それも1撃なんだろうが!」
「流石は殿!見事なご慧眼でござるな!」
「あほか!チェンジだ!」
「では、自分がスキル使いますね。」
「回復スピードは余裕で間に合ってるけど、大変そうだから早くお願い!」
「スキル透過!」
私の全身が薄くなっていく。
その間、ダメージを受けることがないようだ。
「おー、いいね。こういうのが…。あら?」
すぐさま私の姿が露になり、再びダメージを受け始める。
「…。効果時間何秒?」
「2秒です!」
「お前ら、私で遊んでるだろ!!」
「いやいや、真面目にやってますよ!」
「こういうのは、真面目とは言わねー!」
「はいはい、バカやってないで真面目にしましょうか。
私達もフェイス発動しますよ。」
「やっぱ、私で遊んでたんじゃねーか!」
私が参加しているのは盾パーティーのため、他にも盾役が3人居る。
皆、フェイスでダメージの肩代わりをしたりするスキルを持っているのだ。
他のメンバーはヒーラーやバッファー、MPを管理するリチャージ役が居るのだ。
「ってか、何度も攻略してるんだから、攻略法が確立されてんだろ?」
磔にされて何もできないので、回りの皆に話をふってみる。
「いやぁ、なんか騎龍さんが余裕そうなんで。いっかなーって思って。
なんか、痛くなさそうだし。」
「そりゃスキルのお陰で、たいして痛くないけどさぁ…。」
装備やスキルのお陰でたいしてダメージは無いし。
苦痛耐性のお陰で、痛みはほぼ無いから余裕そうに見えるのだろう。
誰かが磔にされるせいか特殊な攻撃等もなく、ほどなくイェグディエルも討伐完了する。
「あー、やっと解放された…。後5匹もこんなことしないといけないのか…。」
「かわりに、たいして強くないから良いじゃないですか。」
「生徒会にヘルプに出たことを後悔してるよ…。」
私は龍騎士であって、純粋な盾職ではないんだけどなぁ…。
本日も誠にありがとうございます。