第二回、都市防衛戦 決着
相手の猛攻に晒されながら、回復しつつジリジリと進軍している皆と合流するるために、オーリと共に駆け出していく。
視線の先では、接近できた仲間達が武器の破壊を行っているのが見える。
幾つかは破壊できたのか、煙を上げているのが目にはいる。
少しでも攻撃が緩んでくれたら、皆で攻めることができるからな。
頑張ってもらいたい。
「よし、ここから一気に取りつくぞ!
スキルの上書きをして、10秒後に行くからな!
用意!」
最前線へと合流した私は、すぐさま指示の声を上げる。
「了解、素早く上書き!」
私の声に龍桜が躊躇わずに従う。
すぐさま皆も行動を始める。
地道な訓練が実を結んでいるなぁ…。
すぐさま、次の指示を出す。
「オーリ!最前列の皆の前に移動!
5秒限定の無敵を発動するよ!」
「了承した。この程度、我の鱗を突き抜けるまでに至らぬわ!」
オーリと融合したら静かだが、巨体で制限がかかる…。
装備になったら喧しい…。
どうにかならないものだろうか…。
どっちがいいだろう…。究極の選択だ…。
「そんな便利なのがあるんですか?」
悩んでいる私の隣に龍桜が近づき、私の発言に疑問を投げ掛けてくる。
「多分、龍騎士限定だがな。行くよ!ドラグーン・オブ・インビンシブル!」
発動した瞬間、私は半径2mほどの虹色に輝く球体に包まれる。
小さくなったオーリ達が私の手の届かないところをサポートしてくれる。
小さくなった方が便利かもしれない…。
「最高速度で移動!くれぐれも私達を抜かないように!」
指示を出し、意識を切り替えて一気に駆け抜けていく。
駆け抜けつつ、加速状態だと意思疏通ができないために、ギルドチャットで指示を流しておく。
『取りつき次第装甲破壊からの内部侵入&破壊。不可能なら装備を破壊!』
入力が済む頃には、目の前に壁のように巨大な足が立ち塞がっている。
私はそのまま勢いを殺さずに、全身で突撃を敢行するのだった。
「おるぁ!ノックバック・ピアッシング!」
一点集中型に鍛えたノックバックで少しでもダメージを与えつつ、全身での最高速での突貫!
マジ痛い…。
火力の低い私の攻撃では分厚い装甲に阻まれて、1ドットも削れることなく弾き飛ばされるのだった。
物理的に壁にぶち当たって、弾かれたぜ…。
いや、足だったわ。
それはともかく…。
どうにかこうにか、スキルによって皆で取りつくことが出来た。
そのまま、機銃や砲門を皆で順に1つずつ潰して回る。
そうしていると、手や足の各部から赤色のライトが明滅し始めた。
『第2フェーズに移行したと思われます。
皆さん注意してください。』
龍桜からの連絡がチャットに流れる。
さてさて、気を引き締めていかなければ…。
そうして注意をしつつ攻撃を続けていると、不意にメッセージが流れた。
[損傷が50%越えました。
ジェノサイドモードへと移行します。]
瞬間、機械音と共に変形が始まった…。
ガチャガチャと音をたてながら、2本の足ががキャタピラでの移動へと変化する。
そのまま戦車のような形に姿を変えながら、凶悪な武装が様々な箇所から生えてきた。
剣・槍・斧・槌・鋏・回転鋸…。あの光っているのはビームサーベルかな?
赤熱している武器や振動しているのも見受けられる…。
進行方向の前面には、トゲがびっしりと生えて回転する円柱が生成される。
巻き込まれたら、ミンチ確定だなぁ…。
拷問器具かよ…。
そうして変形してる最中も、皆は攻撃を緩めずに続けていた。
例えば、とある場所ではローズマリーが赤熱した拳で武装を溶解させて破壊していっている。
さすがは火を突き詰めた魔術師だな…。
拳で戦うのが魔術師なのか、甚だ疑問だが…。
『変形が完了したら、走り出すと思われます。
進行方向には注意してください!』
龍桜からの指示が飛んでくるが、既に皆予測済みなのか進行方向にはぽっかりと穴が開いている。
相手の攻撃の予測と回避行動はゲーマーの必須スキルだと思う。
ここが強者への分かれ道だろう…。
そんな予測が早速裏切られた。
キャタピラが土を削り、凄い勢いで定置旋回を始めた。
遠心力によって、吹き飛ばされる仲間達。
当然私も吹き飛ばされるが、どうにかこうにか体制を立て直して、両足で着地することが出来た。
始めたばかりなら受け身もとれずに、地面へと叩きつけられてただろう。
今では上げたステータスのお陰で、なんとか着地できる身体能力を手に入れている。
自分格好いい!アニメの主人公みたいだぞ!
テンションが上がる!
それはおいておき、1秒にも満たない回転のあと停止する巨大戦車。
私の方向を向いた状態で停止しやがった。
あ、私のLUCは0だったの思い出した…。
相変わらず運がないな!
私は急いで体勢を整えようとするが、相手の走り出す方が早い。
プレイヤーの反応が上がるのに合わせて、相手の行動も素早くなっていっている。
「総員退避!」
皆に退避の指示を出す。
加速が同じ人にはまともに聞こえるだろうが、私より早い人には間延びして聞こえるだろう。
「そーいーんーたーいーひー。」という感じかな…。
猫型ロボットのアイテムを出すときみたいだな。
バカなことを考えつつ覚悟を決めて、無駄な足掻きで盾を前面に押し出し目を閉じた。
しかし、一向に衝撃が来る感覚がない。
「んあ?」
恐る恐る目を開けてみたが、ロボットの姿も跡形もなく消え去っていた。
視界の端には、見慣れたメールのアイコンが明滅している。
「あちゃー、失敗ってことかな…。」
手早く操作してメールを確認してみたら、やっぱり都市防衛失敗のメールが運営より送られていた。
今回は時間切れだったらしい。
大量に攻めてくるモブの処理に時間をとられ過ぎたな…。
「あー、くそっ。後続の連中に嫌みを言われそうだわ…。
まぁ、仕方ないか…。精一杯頑張ったしなぁ…。」
早急に後続組のレベルを上げて、合流しないといけないなぁ…。
来週は、きっと勝とう!
本日も誠にありがとうございます。