交渉2。
「協力体制の確立という話だが、今更そんなことを言い出すなんて都合が良すぎじゃないか?」
初っぱなから爆弾を投下してきたのは2番目に巨大なギルド『STORM』を率いるマスターであるWhiteWindだ。
今回の会議は人数が多いため、頭上に全員の名前とギルドの表示が義務付けられている。
特に、私が人の名前を覚えられないからな!
WhiteWindの発言を龍桜は軽くかわす。
「今更かもしれませんが、あなた達も近々第3へと進出するでしょう?
常時仲良くとは言いませんが、防衛時のみでいいので協力はしていただきたいのですよ。」
龍桜もここ数ヵ月で大人の返しができるようになったなぁ…。
おじちゃんは嬉しいよ…。
フンッと鼻をならし、沈黙するWhiteWind。
場を沈黙が流れる。
「とりあえず、何が欲しいのか知らないけど…。
私の引き出しはもう無いよ?」
あえてオチャラケて言ってみる。
WhiteWindが睨み付けてきた。
おー、こわいこわい。
「そんな風にふざけてるやつが、一番腹の中で何を考えてるかわからないから、信用できない。」
「おー、確かにその通りだ。私もそう思うよ。」
「素直に出すとは思えないが、全部話せ。」
「意外に思うかもしれないが、私の情報は君ほど多くないよ。
例えば、その君の装備とかね。」
もの凄い勢いで睨まれた。
「何を知ってるか知らないが、俺には隠してることなんて無い。」
「腹芸もなかなか上手いね。いやぁ、誰かさんに見習わせたいわ。」
知ってるかのように言ってるがハッタリだ。
ただ、こういう相手は隠している可能性が高いと予想しただけだ。
だからこそ、『君の装備』などと曖昧な表現で話をしている。
そんな私をWhiteWindは切れ長の瞳で睨み付けてくる。
イタッ!何かが頬に当たる感触がした。
何かのスキルかな?
「ん?何かした?」
「お…お前のステータスやスキルはどうなっている…。
傷すら付かないなんて…。」
やはり、何かのスキルで攻撃したようだ。
殺気や視線で切り裂くスキルかな?
「あぁ、やっぱり何かしたのね。
一応盾に特化させてるからなー。」
忘れてるかもしれないが、私は盾職である。
転職が終わってない相手の攻撃じゃ、まともな傷すら付かない。
本気なわけでもないから、最低保証で10のダメージとかかな?
うん、HPの0.2%くらい減ってるな。
それじゃ1ドットすら動かんわ。
「はいはい、喧嘩するなら後にしてください。
お互いの隠し事を話すのも後回しです。」
龍桜が止めてきた。
うっかり忘れてた。
この話し合いは都市防衛戦の協力の為の話だったな。
「僕達は全面的にWorldさんに協力します!」
ギルド『生徒会』の一彦君がそう言ってくれた。
城の運営を手伝ってよかったと思う。
ちなみに名前は初めて知った。
「自分も今こそ恩を返すときだと思ってるっす!」
闘技場で出会った『有限会社 社畜』の雷音も声を上げてくれる。
私は基本的にギルドに引きこもってばかりで、友好関係にいる人が少ないからとてもありがたい。
集まったうちの大半は、都市防衛戦で協力を約束してくれた。
ここに参加してるだけで多数の情報は集まる。
いつ第3まで来るかはそれぞれだが、第3の情報も入るしな。
それだけでも十分に価値はある。
とはいえ、素直に協力してくれないところもある。
STORMは筆頭だ。
いきなり攻撃してくるくらいだから、よっぽどじゃなければ協力してくれなさそうだ…。
今日の会議は上位10組中、5組が参加している。5組は不参加だ。
その中のWorld(1位)と社畜(6位)と生徒会(10位)が協力推進派だ。
STORM(2位)と猫の肉球(3位)が表面的には否定的だ。
情報の開示次第で協力はしてくれるんだろうなぁ…。
「では、少し話を詰めていきましょうか。
協力するに当たって、何をして欲しいのか。」
ここからが正念場だなぁ…。
本日も誠にありがとうございます。