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親父と家族のVRMMO日記  作者: 只野御夜市
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3次転職しよう。4

頂上が霞んで見えないほど高く、左右は見通そうとしても視線が届かない。

そのような壁がマップの端に存在する。

まるで全てを拒絶するかのようで畏怖を感じる。

その壁面には黄金に輝く扉が刻まれており、その先に進もうとする者達に輝かしい未来を予感させる荘厳さがあった。


その扉の前に佇むのは、数多の頭と腕を持つ巨人。

希望の扉を阻む絶望の壁である。

私達の姿を視認した後、巨人の姿が複数に増え始めた。

そして手には巨大な岩を握り臨戦態勢へと入り、聴く者に恐怖を抱かせる雄叫びが周囲に轟いた。


さてっと、転職も佳境に入ってきた。

多分、こちらの人数に合わせたのだろう。

1500対1500。面白くなりそうだ。

相手は多分ヘカトンケイルだろう。

本当に100の腕と50の頭があるのか数えてないから、ヘカトンケイル(仮)だな。


「では、各々気を付けて。仲間を助けながら、皆でクリアしましょう。」

そう言いつつ、龍桜の姿が変化していく。

燃えるような煌めくルビーのような鎧を纏い、焔のような波打つ剣を手にもつ偉丈夫の姿へとなる。

回りの皆も、次々とその姿を変化させて駆けていった。

私も負けてられないな。


「さてオーリ、やろうかね。」

「ふ、我と主の力を見せつけてやろう。」

私は果実を食べることで知った、力の使い方を発現した。


オーリの魔力と私の魔力を同調させ、その身に纏う。

むしろ、オーリが私の中に入ってくる。

私の職の正しいスキルの使用は、自分だけで行うわけではなかった。

よくある合体物のように、オーリと力を合わせて一つとなることが正しい使用方法であった。

そりゃ、試練で絆が大事にされるわな…。

私のような、ひねくれたオッサンには青臭くて仕方ない。

しかし、運営の定めたシステムである以上、従わないといけない。


私の髪が白く長く伸び、身体もグンと巨大に成長する。

背から翼が生え額から角が伸び、牙も長くなり口からはみ出していく。

爪や尻尾も伸び、見た目は人と龍を足して2で割ったような姿へと変わる。

悪く言うなら、翼と角と髪が生えたリザードマンだな。


自分で思って凹んだ…。


ミニ達は赤い三角錘型の鉱石へと変貌を遂げ、私の背後へと日輪のように装着される。

羽ばたくのに邪魔そうだ。


変貌を終了し、私も相手へと向かい駆けていく。

「ふははは、すべて我に任せよ!(さてっと、頑張りましょうかね。)」


…。

あれ?

「我は驚愕している!(なんじゃこりゃ!)」


よし、とりあえず喋るのを止めよう。

42歳にして厨二満載な発言なんて痛すぎる。

「き…騎龍ちゃん…。」

私のすぐ後ろで嫁が絶句しているが、今はなにも話したくはない。

哀れんだ視線を向けてこないでくれ。

うぅ、泣きたい…。


気を取り直して、戦闘を再開しよう。

すでに皆で連携を取りながら、相手を倒していっている。

1対1だと押されてる者もいるようだが、目端が利くものがサポートに入ったりしているので、戦線はこちらが押し気味だ。

3分の1位は生産職なのに、なかなか奮闘している。


ちなみに、戦闘可能な生産職もいる。

筆頭は戦斧だ。

全身がロボットというかパワードスーツへと変貌し、その背からはマフラーが伸びて排煙排熱の煙を吹き上げている。

その手には鍛冶師の名残とも言える巨大なハンマーと火炎放射機が握られ、腰には様々な工具がぶら下げられている。

彼の愛用していた銃器類はその扱うパワーに合わせて巨大化し、大砲とも呼ぶべき代物へと変貌していた。

他にも似たようなのが数人いたが、世界観ぶっ壊しまくりだな。


とりあえず、そんな特殊な奴等は置いておいて戦闘に集中しよう。

戦線を構築するヘカトンケイル(仮)の後方から、巨大な岩が乱れ飛んでくる。

それを迎撃するのは、天音やスレイン達の魔法職の人達だ。

凄まじい精度で魔法が放たれ、岩が小石どころか砂となって辺りに降り注ぐ。

それによって生じた土煙は、風の魔法によって吹き散らされて視界は良好である。

流石は人の殻を破った者達だ。


その合間を縫うように、前線のサポートも忘れない。

前線にて背後に回られそうな仲間に援護射撃が飛び、攻撃する腕をコンマ数秒遅らせて避ける時間を稼いだりして助けている。

むしろ、可能なら攻撃を集中させて倒したりしている。

やっべ、私が活躍する場がない…。


どちらかと言えば、背中のミニ達を使った遠距離が得意なのだが仕方ない。

私はミニ達を爪に沿うように装着して前線へと駆けていき、そのまま近くに居るヘカトンケイル(仮)の頭へと爪を振るった。

私の爪で撫で切られながら、ミニの熱線によって体を6つに分かたれて倒れ伏すヘカトンケイル(仮)を眺めながら心で思う。

(あー!喋りたい!!)


ネタに走って散魂鉄○とかバーニング○ィンガーとか、ネタは幾らでもあるのに喋ったら厨二にしかならないから喋れない。


試しに少しだけ喋ってみるか…。

ボソッ…「我が指先は紅く燃え、全てを葬る(バーニング○ィンガー)。」


…。

うん、周囲に聞こえなくて良かった…。

声の大きさによって、私の出す言葉の音量も変わるようだ。

とはいえ小い声でも、恥ずかしいことこの上ない!

くそぅ、厨二病のオーリめ!!


ん?あれ?

元から厨二発言したらどうなるんだろう?

試しに呟いてみよう。

「皆、大丈夫か?(同胞よ、健勝か?)」


…。

逆になるんかい!


言葉を慎重に選ぶ必要はあるが、どうにか会話は可能だと思う。

よし、それならなんとかなる!

「皆、もう少しで勝てる。頑張ろう!(同胞よ、勝利は見えた。突き進め!)」

「はい!騎龍さんも気を付けて!」


私の心に大ダメージ。死亡直前である。

私にしか解らないとはいえ、羞恥心で死にたい…。

本日も誠にありがとうございます。

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