帰ってきたが…。
陣をくぐり抜け、大地に下り立った。
周囲は見慣れたクラウドの港。
どうやって帰ってきたのかわからないが、私たちが乗ったフリングホルニも帰ってきているようだ。
んー、覚えにくい名前だよな…。ル○マリア号が良かったなぁ…。
「では、長いことお疲れさまでした。
今日はこれで解散にします。皆さんゆっくりおやすみください。」
初期からのメンバーも流石に疲れたり、心労が積み重なったのだろう。
フラフラとしながらログアウトの為の宿へと向かっていった。
しかし勘の良い数人は、そのまま残っていた。
まず話しかけてきたのはアスタールと天音の兄弟だ。
「父さん、修羅場はこれからだよね?」
「2週間もいなかったんだもん。絶対何かあるよね?」
この兄弟は流石だと思う。
「騎龍!誰をぶった斬ればいい?」
「騎龍さん、首を掻き斬れば終わりますかね?」
続けて隼人とキリングドールが続けて声をかけてくる。
勘が良いのはいいが、色々と飛ばしすぎである。
「グッド!!」
「自分の豪腕が唸りますよ!!」
筋肉ムキムキの二人が何か言ってくるが、無視する。
「そこまでです。
私達はすでに次の段階を考えてます。
ギルドメンバーで話し合いをして、何か不手際を起こした人は抜けてもらいます。
ほっといて構いません。」
龍桜が息巻く数人に話かける。
「騎龍さんもそう考えてますよね?」
そこで私に聞くなよ、マスター。
質問されたからには、答えないわけにはいかないな。
「あぁ、今回のインスタントダンジョンとかで色々わかったからな。
いまの街がどうなってようと、私はすでに興味がないよ。」
きょとんとした顔で残った大半の人間がこちらを向いてくる。
そんな皆を代表して、アスタールが声をかけてきた。
「え?俺も色々予測できるけど、さすがにその返事は予想外だよ。
父さん、何を考えてるの?」
「ギルドメンバーに話をして、第3マップへと移動する。」
「それは予想してたけど、街はどうするの?」
「捨てるに決まってるだろ。100以下のココで燻るつもりはない。
なんせ、私達の目指す先は攻略だからな。」
私の発言を聞き、皆色々と考えているようだ。
そんな中、アスタールが口火を切る。
「父さん、街を捨てるのもいいけど…。
龍桜さんや父さんが悪名を買うんじゃない?」
「私達のギルドが移行したら無人の街が残るだけだろ?
そんなとこ、誰が使ってもどうでもいいな。
数日ほど休憩と相談で時間を空けた後、全体へ連絡を入れてWorldは移動を目指す!」
皆、愕然とした顔をしている。
それもそうだろう、あれだけ苦労した街を捨てるなんて決断はなかなかできない。
私だって簡単に言ってるが、下準備しないとダメだと思ってる。
「とりあえず休むこと。あと、この2週間で何があったか調べることだね。」
そう言って、この場は解散することを促す。
複雑そうな顔をしながらも、残った数人もログアウトしていった。
そんな皆を見送りながら、私は天音に頼んだ。
「天音、ハウスまで転移頼むよ。」
「休むとか言って、やっぱり親父は動くんだね。」
「大したことはするつもりはないが、状況次第だな。
私だけでいいから、皆もゆっくりログアウトして休めば良いよ。」
「騎龍ちゃんも、無理はしないでね。」
「あいあい。」
言動が酷いときが多いが、基本的に嫁は優しいのだ。
門をくぐり抜けると、空からオーリの声が聞こえてきた。
「あーるーじー!!!」
クラウドの街にさっきまで居たから、そっちに向かってたところを引き返してきたのだろう。
子供の頃と変わらんな。スピードを落とすとか、少しは状況を考えてほしい。
私は盾を構えて、迎え撃つ。
「ステップ!ノックバック!」
瞬時に下へと潜り込み、後方へとオーリを受け流す。
使役してるのに潰されて死亡とか笑えない。
建物に突っ込み噴煙を起こした張本人が、何事もなかったかのように無傷で這い出して、私に飛びかかってくる。
「主よ!何十日もどこに行っていたのだ!
繋がりが完全に消えて、心配してたのだぞ!」
喜びのあまり、私の顔を舐め回すのは止めてほしい。
「すまんすまん、予期せぬ事態に巻き込まれてたからな。
まぁ、説明は後でゆっくりするから休ませてくれ。」
「ならぬ!今日は我と一緒にいてくれ!」
「やかましい、少しは休ませろ!ボロボロの装備が見えんのか!」
「良いではないか!寂しかったんだぞ!」
「お前はほんとに進化したのか?子供じゃないんだから我慢しなさい!」
まったく、可愛いけど疲れるわ。
オーリと漫才をしながら、ふと周辺を見渡すと違和感を覚えた。
「オーリ、なんか閑散としてないか?」
「ん?そのような些末なことは気にしたこと無いな。」
少しは気にしろよ…。
「まぁいい、私は調べものがあるから良い子にしてるんだぞ!」
「また消えてしまわぬか!?」
「その時は連れてくから大人しくしなさい!」
無理矢理オーリを納得させ、まずは冒険者ギルドにてメンバーの数の確認をしに向かった。
道中、すれ違うメンバー達が驚きの顔をし、ハウスの方へと駆け出していっていた。
報告にでも向かったのだろう。
そういや、ギルドチャットで無事の報告をしてなかった。
まぁいいや。
確認してみると、予想通り2000人近く減っている。
主要メンバーが70人も2週間消えていたのだ。
完全に連絡もとれない状態で、様々な憶測や噂が流れたのだろう。
辞めてしまったとかの噂とかが有力かな?
そのような状態でも、城の維持は出来ていたようだ。
皆の頑張りに心から感謝する。
そのまま、ハウスへと向かうと人だかりができていた。
先頭にはドラッグスターが立ち、その横にはパーティーメンバーが並び、後ろにはギルドメンバーが並んでいる。
皆、怒りの表情を私に向けてきていた。
まぁ、そうなるだろう。
今回、巻き込まれた皆を帰してて良かったと思う。
ドラッグスターがこちらへと一歩踏み出して、口火を切ってきた。
「騎龍さん、辞めたんじゃなかったんですね。」
「私が辞めるときは、最低引き継ぎ位するさ。」
「言いたいことは沢山ありますが、まずは謝罪を要求します。」
「謝罪はしない。」
私の一言に、全員の怒りが臨界に達したようだ。
「ふざけんな!」「苦労も知らないで!」等々の暴言が漏れ聞こえてくる。武器に手を伸ばす者もいる。
そんな彼らを無視して、私は皆に告げた。
「3次転職と第3マップの情報を手にいれてきた!
私達70人は、無意味な時間を過ごしたわけではない!」
本日も誠にありがとうございます。
楽しみにしてる方もいらっしゃると思いますが(リアル友人とか)、第3マップをどんな風にするのか考え中です。
更新は2日に1話で、少し話を詰めていきたいと思います。
裏話
私はこれまで、全て頭で考えて文面に書き起こしています。
設定を考えたノート?
そんなのありません!
そんな感じなので、読み返した文章の未熟さに赤面しっぱなしです。
今後も、酔いとノリと勢いと羞恥心に悶えながら、楽しんでいきたいと思います。