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親父と家族のVRMMO日記  作者: 只野御夜市
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会話でどうにかなった。

草木も生えない溶岩が冷え固まった地面。

そこに佇むは1頭の巨大な赤龍。

その金色の瞳は射抜くかのように鋭く、牙は全てを引き裂くかのように鋭利で、口から洩れる炎の欠片は全てを焼き尽くさんとする意思が込められている。

その姿を見ただけで、多くの者の心は折れるだろう。

絶対的強者がそこにあった。



「あー、ほんともうどうすんべ!」

勝てるビジョンが全く見えない。

周囲の地形を使って勝つとかのヒントらしきものも全く無い。

溶岩に落とすとか、飛んでる相手にはできないし…。

この火口塞がってるからそれも無理だしな…。


「父さん、とりあえず二人を確保しよう。」

「まずはそれからだよな…。よし、行こうか。」

立ち向かっていく勇気を振り絞り、アスタールと一緒に駆け抜ける。

「ステップ!ダブルステップ!カバームーブ!」

高速移動系を連発し二人に近づき、いつ攻撃が来てもいいように意識を加速状態にしておく。

そうしている私の頭に、轟音が響いた。


【そこのちっこいの、聞こえるかの?】

その瞬間、脳震盪のように気持ち悪くなり平衡感覚を失って頭から地面に突っ込んでしまう。

「父さん、なにしてんの!早く!」

そう言うアスタールの声は聞こえるが、今の私の頭は掻き回されてしまっているから返事もままならない。

もがきつつ震える手足を動かしながら、嘔吐感をこらえるので精一杯だ。


【おぉ!すまんかったのう、思念が強すぎたかの?】

さっきよりマシになった音量で思念が響く。

おかげで、少しだけ余裕が産まれる、

「うっ…。ア…アスタール。大丈夫そうだ。警戒を解け…。」

「は?何言ってんの?」

「あの龍は、話次第でなんとかなりそうだ…。う…。うぇっ…。」

「ん?あぁ、そういうパターンね。父さんしか話せないんでしょ?

とりあえず吐かないでよね、汚いから。」

勘がよくて話が済むのはいいが、父親の扱いが酷すぎませんかね?


吐き気をどうにか押さえ込み、フラフラと巨王龍の側へと向かう。

「言葉は通じるんですか?」

【なんじゃ?頭で思い描いてくれんか?思考は読めるがお主らの言葉はわからん。】


そういうことね…。

ここに居る人間は原始人だから言語がない。

というか、龍には理解できないのだろう。

ウッホウッホだとかギャウギャウ言ってるのは、言語として成り立ってないもんな。

そんな言語は学びようがない。


第2に私しか話が通じないのは、私が龍騎士のせいもあるのだろう。

今まで大して役に立たなかった職業だったが、ようやく日の目を見た気がする。

こんな勝てるわけのない大物相手に会話で終わらせられそうなのだから…。


なんか泣けてきた…。龍に乗って飛べる格好いい職業のくせに今まで良いことがほとんど無かったもんな…。

オーリなんて、繭から出てきたら喋るようになっていたし…。

スキルなんて、自力で頑張れって言われたようなもんだ…。

ある意味不遇職だぞこれ…。

唯一良かった点は、オーリ達が無駄に強い位だ。


オーリは攻撃主体なのかミニ達込みで考えると、笑えるような火力を出せる。

守る点ではからっきしだけどな。

こないだの戦争で出会った龍は防御主体なのか全身が宝石に覆われて、攻撃を無効化してきた。

一部だけ攻撃が通る場所があり、そこを重点的に攻めたら勝てたが…。


閑話休題


【思い描くって、こんな感じですかね?】

【おうおう、上手いもんじゃな。同族以外で話が出来るやつは初めてじゃ。

お前さんと似たようなちっこいのは、何言ってるかわからんしの。

蜥蜴モドキなんぞは会話なんぞせんからのぅ。】

お爺ちゃん、話が長い…。


【それで、何の用なんでしょうか?】

【おぉ、そうじゃそうじゃ。

そのちっこいのは連れて帰ってくれんかの?

最近噛む力が弱くなってきたから、固い雄はいらんし、雌は脂で胃もたれするし、小骨が多くて喉に刺さって食べずらい。

じゃから、いらん。】


いま、貴方は全女性を敵に回しました。


とりあえず、突っ込んだりはしないでおこう。

【ありがたい申し出です。私の仲間なので、そう言っていただけて助かります。】

【おぉ、礼儀正しい良い子じゃの。

替わりと言ってはなんじゃが、下に居るでっかい蜥蜴モドキの肉をくれんかの?】

【そんなので良ければ幾らでも。】

【あのバチバチいってるのが良いのぅ。肉はシットリとしてジューシーで程良く脂身がない。あれが良い。】

TーREXだろうか?

また自爆特攻をしないといけないのかな…。


こないだ狩ったのは、ギルドメンバーで美味しくいただきました。


【では、狩ったらまた来ます。】

【おうおう、頼んだぞ。】

「ふう、なんとか会話で穏便に済ますことができた…。」

「んで、なんて?」

「替わりにTーREXの肉を持ってこいってさ。」

「うわぁ…。こないだ狩ったの食べるんじゃなかった…。」

「とりあえず、届けたら帰れるだろう…。

やっと帰れるのか…。ギルドはどうなってるだろう…。」


そうしてアスタールと会話していると、声が聞こえた。

「騎龍さん大丈夫ですか!!」

龍桜がようやく追い付いてきたようだ。

「うわっ、でっかい龍!あれを倒せば良いんですか?

ほら、何してるんですか。そんなとこに立ってないで攻撃を!」

剣を抜きながら龍桜が走って向かってくる。


素早く足をだし、龍桜の足を引っ掻けて転ばせた。

結構ひどい勢いで地面に龍桜が突っ込んでいくが、纏まった話を邪魔されたくない。

「慌てるのもわからないでもないが、ちょいと落ち着け。

すでに話がついている。」

「いつつ…騎龍さん、止めるにしてもひどいじゃないですか…。」

顔面を中心に多数の血を流しながら、龍桜が反論を言ってくる。

「よし、早急に動いて帰ろう!

説明は歩きながらするから、行こうか。」


山を下りTーREXを狩り、再び山を上った。

自爆特攻で、再び倒す日が来るとは思わなかった。

巨王龍はTーREXの肉に満足したのか、ご機嫌で飛び去っていった。

彼の姿が見えなくなるほど遠くへと飛び去っていったら、火口の祭壇に帰還用の魔方陣が浮かび上がった。

やっと帰れる…。

2週間に渡って拘束されてたからな。


「んじゃ、忘れものは無いね?

しばらくはこんなとこに来るつもりはないからね。」

皆に厳重に確認をするように言っておく。

もしも頼まれたとしても、取りに来たくない…。


数人は泣いてたりする。

こんな不便な場所に2週間も閉じ込められたら、精神が疲弊するのも仕方ないだろう。

「じゃあ、行こうかね。」

長いようで短かったタイムスリップがようやく終る。

魔方陣をくぐり抜け、視界が光に覆われる。

暫くは狩りも何もせずにゆったりと過ごそう。

そう思いながら歩いていくのだった。

本日も誠にありがとうございます。

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