絶海の孤島
目を覚ますとそこは、砂浜だった。
周囲には特に目を引くようなものはなく、ジャングルが生い茂っている。
おかしいな…。船ごと落ちたのに、砂浜にいるなんて…。
周囲を見渡すと、仲間たちも倒れている。
とりあえず、皆を起こして回るか…。
ソルティを揺すって起こし、手分けして起こしていく。
途中、どうしても起きないグッドマンやローズマリーは蹴飛ばして起こした。
「さて、全員起きたとこで状況確認しようか。」
乗り込んでいたメンバーは全員無事だった。
怪我もなくてよかった。
「とりあえず天音、門は出せる?」
「無理だね、発動すらしないよ。」
「んー、インスタントダンジョンかな?」
帰ることが出来ないのは痛いな…。
「んじゃ、各自ログアウトを一回してみよう。んで、できたらすぐにまた戻ってくるように。」
全員無事にログアウトが可能であることが確認された。
できなかったらリアルの仕事とかで大変なことになるところだ。
「とりあえず、一番最悪なケースは免れたか…。
んじゃ次は死に戻りしてみようかね。」
装備を普段着に切り替えて、素の状態になる。
「よし、全員で攻撃してきて。」
全員で目の色を変えて襲ってきやがった。
なにか恨み買ってたっけ?
ボロボロで倒れて虫の息の私にトドメとして、天音とスレインの混合魔法が来たときは思わず叫んだ。
「俺が何をした~!!!!!」
復活したら砂浜だった。死に戻りもできないらしい…。
とりあえずボロボロのままだと困るので癒してもらう。
「殺せとは言ったが、あそこまで痛め付けないでくれよ。痛いじゃないか。」
苦痛耐性のスキルのお陰で、そこまで痛くはないが…。
「素なのにかなり固いですね、本気でやってあんな感じとは…。」
一応盾職だからな。
その後メール機能やギルドチャット等のチェックを進める。
この島では、この島にいるメンバーにしか通じないようだ。
どんなシチュエーションを運営は考えての行動だろうか?
ありがちなのは、タイムスリップして大昔に飛んだとかかな?
「よっし、わからん。予測は立つけど、どうしたら良いのかわからないから、キャンプでも作ろうかね。
あとは一応GMコールしておこう。」
「騎龍さん、予測がついてるのですか?」
龍桜が聞いてくる。
「1つ目は、なんらかのインスタントダンジョンに入ってしまったこと。
2つ目はほぼありえないことなんだけど、次のマップの構築に巻き込まれた可能性がほんのちょびっとあるくらい。」
「確かに、それくらいしか理由はなさそうですね。」
「まずは生活基盤の確保が先決だね。チーム分けして、家の確保と探索で動こう。
探索のついでに、食料の確保もお願いね。
んで、私は指揮を執るために見てるだけ…。」
全員の武器が一斉に向けられた。
チームワークは抜群なようだ。
さてさて、家は戦斧達職人に任せて私たちは周囲の探索を進めていく。
ソルティの眼鏡によって、食べれるかわかるのは便利だ。
「魔法があるから大抵のことは問題ないが、帰れないのが痛いな…。」
「早く帰らないと戦争に問題が出るしね。」
アスタールが返事をしてくる。
「問題があるとしたら、指揮を誰が執るのかだよ…。といっても、ドラッグスターしか居ないんだけどな。」
「防衛は魔法の乱射でこれまで問題ないけど?」
「そうなんだけど、心配だなぁ…。」
「騎龍さん、あっちで物音がしたっすよ。」
ウッドが警戒の声をあげる。
「ふむ、向かってみるか…。」
物音のした方に向かうと、ちょっとした空間に恐竜がいた。
「えっと…。ヴェロキラプトルだね。」
ソルティが名前を教えてくれる。
十匹位以上いる彼らは現在、食事に夢中なようだ。
「親父、どうするの?」
「んー今のところ見つかってないし、離れようか…。」
こっそりと下がろうとした瞬間気付いた。
「あっ、今のフラグっぽい!厳重に注意して!」
よく足元を観察して離れたお陰で、小枝を踏んだりすることなく後にすることが出来た。
「ふう、危ない危ない…フラグは全力で回避しないとね。
ちなみにアイツは映画の知識しかないが、素早くて獰猛だったはずだよ。」
「そうなんだ。あんなちっさいのにね。」
「見た目で判断したらダメだよ。小さいけど怖いよ。
にしても、恐竜が住む島か…。更にわからなくなってきた…。
いや、もうここまでくれば1択しか無いか。」
「え?わかったんすか?」
「こんだけ時間がかかってるのに、GMから返事がない。
つまり、インスタントダンジョンだよ。」
ただし、公にしたくない不祥事の場合を除く。
皆を不安にさせないために、これは口には出さない。
「クリア条件のわからないダンジョンとか、どないしろっちゅうねん!」
とりあえず私の頭の限界を迎えそうなので、叫んでストレス発散をしておく。
「さて、気を取り直してさっさと探検しよう。」
「いまの叫びは、騎龍さんが悪いっすよね?」
「魔物が寄って来たらどうすんのさ?」
「そんときはそんとき!」
気にしてたら、なにもできんぞ。
そのまま探索を進めていく。
ラプトルだけでなく、色々な恐竜達と出会うことが出来た。
トリケラトプスだったりステゴサウルスだったり、ブラキオサウルスとかいった有名なのが現れる。
「うわぁ、こんだけ有名なのに会ってるのにアイツに会わないとか不自然極まりない…。」
私の呟きに咲夜が返事をする。
「アイツ?誰ですか?」
「ティラノサウルスだよ。」
「GYAOOOOOOO!!!」
私が告げた瞬間、轟音が周囲に轟いた。
しまった、さっきの発言もよくあるフラグじゃないか…。
「うぇ、誰かが見つかってしまって、追いかけられてるフラグだ!」
「騎龍ちゃん、どうするの?」
「あんなのに追われて助かるはずがないけど、助けるしか選択肢はない!」
返事をして、一気に駆け出す私。
ソレに合わせて駆けていくメンバー。
頼もしいな。
「この周囲のモブと戦ってないから強さがわからないが、油断しないように!」
返事を聞き流しつつ、全力で森を駆け抜けていく。
何事もないと良いのだが…。
皆様、本日もまことにありがとうございます。